魔法は面白い
翌日から僕の魔力制御の練習が始まった。
まずは自分の体内で魔力を巡らせて自在に動かせたり、
なるべく小さく小さくして身体の内側に納めるようにしてみたり、それの繰り返し。
それができるようになると、今度は属性魔法の練習を始めました。
僕は雪から注がれた魔力のおかげて、全ての属性魔法が使える事がわかった。
火、水、土、風、光、闇など
多少の得意、不得意は出てくるらしいが使えない事はないらしい。
毛玉は光と風、それから火と戦いに特化したような属性になっている。
あれから数日がたち、僕は魔法には適正があって全部は出来ないかも知れないと言われたが、混合魔法まで使えるようになった。
まだ全て初級だけれど。
毛玉は風の魔法の適正が一番強くて、最初に発動した時、僕はコロコロとホールの中を転がって、雪が慌ててタシッって犬のお手のように僕を捕まえたというか、地面に押さえたんだよ。
僕は「キャー」って叫びながらコロコロ転がるのが楽しくて、その後何度もコロコロと転がしてもらった。
最後は目が周り過ぎて座っていられないぐらいになってしまったけどね。
雪は最初は慌てていたけど最後はため息をついて二人を見てた。
私の一番の適正は光らしい。
らしいっていうのは、他の魔法も初めてにしては良く使えているからみたい。
一番の失敗は水かな、最初はうまくいっていたのに雪に沢山の水を出してみろって言われて、タブレットでみた事のある噴水を思いだしたら、ホールの至る所から水が出て水浸しになってしまって、毛玉が濡れたって怒ってたくさん謝った。
面白いのは土の魔法、最初は小さな石を手の上に出現させた。
石や土が自由に出現させる事ができるようになると面白くなり、土をイメージした形で出せないかと思い最初はハートをイメージ。
まず丸にもならない、だんだん丸になっていき、そこから一ヶ所を摘まんで引っ張るように。
「うーん、難しいねー」
声に出して唸っていると
「何をしている?」
雪がウンウン唸ってる僕の手元を覗き込み首を傾げるように問いかける。
「あのねハートを作りたいの」
「ハート?」
「そうハート。イメージではここを摘まむように伸ばすとハートになるはずなんだけど、うまく摘まむようにイメージが伝わらないの」
雪を見上げながら説明するが、雪は何を言ってるんだみたいな顔をして僕を見下ろす。
「土の魔法は大地を割いたり、魔獸に岩をぶつけ倒したり、壁を作り魔獸の侵入を阻害する為の魔法だろうに」
「そうかも知れないけど、イメージすればもっとイロイロできると思うんだよね。いろんな形を作ったり、いろんな素材の石を出したり。それこそいろんな素材のいろのな形の物を作ったり。」
「僕、前にママがガラスでできた動物の置物を買ってきてくれた事があって、キラキラしていて透明で可愛くて凄く嬉しくて、それからタブレットで調べて、そんな置物を見るのが大好きだったんだ。そして、ママがビーズを買ってきてくれてからは沢山たくさん、アクセサリーを作って」
「ああ、そうであったな」
「だから土魔法って事は石や大地の物を作り出す事もできると思うだ。だから今は石でできたハートから。ハートなら丸をイメージして一ヶ所ひっばればいいと思ったんだよ。それがなかなか上手くいかなくて」
「・・・そうか。まぁ魔力の細かい調整の良い練習になるであろう、頑張るがよい。」
雪はため息まじりにそう言うと外へ出掛けていった。
むー出来ないと思ってるなー絶対やってやるんだから
僕はそう気合いを入れると、もう一度引っ張るように左手の上に載せた石を右手で引っ張る仕草をしながらハートを目指した。
ハート作りというか、形作りはなかなか難しくて、それから何日も手の上に手をかざしては悩む日々。
頭の中でイメージするだけではなくて実際に手の上に出して実際に触りはしないが指先に集中して引っ張るような仕草をする。
少しづつ歪てはあるがこの頃、手の上の石が形を変え始めた。
引っ張る右手の指先に力を集めてそうっと横に引いてみた。
「あっ、できた。できたよ雪。見て、ほら見てってば」
毛玉の練習を見ていた雪に駆け寄り手の中のハートになった石を見せる。
「ほぅ、確かにハートになっておるな。良く諦めづに頑張ったな」
そう誉めてくれた雪。
「では次はいろんな形を作れるようになるのであろう?
さらにがんばらねばな。せれに他の魔法もちゃんと練習するのだぞ」
「うん、頑張る。いろんな事かできるようになりたいんだ。今は水で洗ってるけど身体も髪もお湯で洗いたいしね。水魔法で水をためて、火魔法を使えばいいのかな?毛玉ならどうする?」
近くにきていた毛玉に聞いてみむるが、身体を洗うとか髪?毛?を洗うとか毛玉は全く興味がないらしく、
「どうでもいいにゃ。毛玉は身体は濡らさないにゃよ」
「えーそうかなー温泉?っていうの凄く気持ちいいんだってよ。僕も入った事ないから、どれくらい気持ちいいかは解らないけど、いつかは行ってみたいなって思ったんだよね。シャワーだけじゃなくてさ」
「温泉?あの大地より涌き出る水が暖かい水溜まりの事か?」
「あるの?」
「あーこの地にも火の山の近くにはあるな」
「やったー雪、いつか連れて行ってね」
「ああ」
「でもその前に自分でもシャワーやお風呂できるようになりたいから頑張る」
僕は両手を握りしめて鼻息荒く宣言した。
それからの日々は毎日、属性魔法を練習、練習。
水はお風呂に溜めるぐらいは簡単にできるようになった。お湯にするのは温度調節が難しく、ぬるくなったり熱湯になったり、なかなか適温が難しい。
火はチョロっと出したつもりがガスバーナーになったり
雪に言わせると、やはり雪の魔力があまりにも大きい為に制御が難しいらしい。
もう、難しい事だらけ、それでも楽しいからいいけどね。
そしてこの日、僕は光の魔法の練習。
火の魔法と違うのはライトが使える事、火の魔法でも夜は明るくはなるけれどテントの中とかでは使えないんだって。冒険者の人達は魔獣がいるので外で篝火をたいて夜通し見張りをするらしい。
雪に言わせるとライトは光の魔法が使えないとできないらしくて、人にはあまり光魔法を使える人がいないんだって。
でも僕は使えるもんね。
ライトは発動する時に多くの魔力は使うけど、光がともってからは殆ど使わないらしい。
まずはイメージから。
「そうだな、ヒオまずは母が帰ってきて、灯っていた電灯をヒオの為に小さくしていただろう?」
「うん」
「あの時のオレンジ色の小さなライトをイメージしてみろ」
「わかった」
優しかったママ、お仕事から帰ってくると僕が眩しくないようにライトを絞って暗くしてくれた。その時の柔らかい色を思い出して・・・
「ライト」
そうこの色、ママの優しい・・・
「まっ、待てヒオお前何をした」
「えっ、何ってライト」
「ヒオのライトにはヒールが混ざっておる」
「ヒール?」
「そうだ、ヒール癒しの力だ」
「えーそんな事言われても・・・優しいママを思っていたからかな?」
そう言うと雪は暫く考えこんでいたが、なるほどなと呟き
「ではヒオ、今から言うとおりにしてみろ。今イメージしている母の顔を小さく小さくしていってみなさい」
「うん」
小さく小さく
「よし、いいぞ。ではその母を消せるか?」
ママを消す・・・ママを・・・
いつの間にか頬を涙が流れた。
ママを消すというのが、もうママには会えないという現実に繋がってしまい、あの日に感じた悲しみが溢れる。
「雪、でき、ない。ママを消す、の、は、出来ないよ」
その様子に気が付いた雪が慌てたように寄ってくる。
「ヒオ、悪かった。そうだな母は消せぬな。悪かった。」
まるで抱き締めるように体の中に巻き込むように僕を包んで雪が丸くなる。
毛玉も寄ってきて頬を舐め、一緒に雪の内側に丸くなった。
何故か涙は一切止まらずヒックヒックとしゃくりあげ、泣いて泣いて、そのまま泣きつかれて寝てしまった。




