弔い
街に着いた翌日、雪とアレスはギルマスと供にオークの溜まりに向かって行った。
雪は自分だけでいいと言ったのだが、アレスが自分も最後まで関わりたいといいパーティーと供にオークの溜まりに向かっていった。
そしてなぜか毛玉もアレスに飛び付き、ついていった。
「でん・・・アレス。感謝する。昨日預かった遺品だけでも集めるのは大変だったろうに・・・今日も供にきてくれて」
一瞬殿下といいかけたギルマスがアレスの一瞬の目配せでアレスと言い直す。
今朝、他のメンバーと集まる前にアレスから身分はかたらないと言われていたのだ。
「いや、自分の拘りなだけだ。ちゃんとケジメておきたかった」
その一言に雪が微かに目線をやり、優しい目をした。
街から山に入り暫く歩いていき昨日のオークの溜まりに着いた。
冒険者だけのパーティーなので、かなりの時短での到着となった。
「こんなに近くにあったのに・・・」
ギルマスが歯を食い縛りながら呻くように呟いた。
「こんなに、自分の不甲斐なさを感じた事はありません。ですが私だからこそ出来る事をやらせて頂きます」
ギルマスはそう言い、雪に向かい深く頭を下げた。
「ではシールドを解くぞ」
雪がそう言いオークの溜まりにかけられたシールドが解かれた。
その瞬間にギルマスとパーティーメンバーから血の気が引いた。
溜まりを討伐したとは聞いていても、雪がいたとはいえ、他がアレスとラクストだけであった事からオークキングがいたとはいっても100程の溜まりをイメージしていたのだ。
だがそこにあったのは想像をゆうに越えるオークの死体と倒壊した建物の大量の残骸。
「これ程とは・・・」
「イヤイヤ、よくこれだけのオークを討伐できたな」
「ヤバすぎるだろう」
一緒にきたメンバーからも驚きの言葉がでて、あまりのオークの死体の数に皆、ドン引きしている。
そして徐に雪とアレスに向かい皆で頭を下げた。
「心から感謝する。これだけのオークの溜まりであれば我らだけでの討伐だったら犠牲者も出ていただろう。」
「ありがとう」
皆の心からの感謝の言葉だった。
「さぁ、それじぁあ始めようか」
ギルマスのその言葉で皆が動き出した。
何組かにメンバーを分けて、オークの死体を集めるもの、オークの死体を解体していく者、倒壊した建物を動かし遺品につながる物がないかを探す者とに分かれて動いていく。
アレスはオークの溜まりの隅の方や少し外れた場所を歩いていた。
ちょっとの見落としもしたくないかのように。
その横には毛玉が付いて来ていた。
アレスの手伝いをするかのように木の上に昇ったり、藪のなかに入っていったり。
そして藪の中からネックレスを咥えて出てきり、指輪を見つけてきたりとしながら、そっとアレスに渡していた。
「毛玉、ありがとうな。これだけでも家族の元に帰れる。そして家族の慰めになるといいな」
そっと毛玉をなでながら大事に胸元の袋に入れた。
オークの溜まりを片付けるのにほぼ1日かかった。
オーク肉は綺麗に解体され、ギルマスの持ってきたマジックバックに全て入れられ、それ以外の建物や不要な武器は中央に集められて雪と毛玉により火をつけて、燃やされた。そしてもう1ヶ所、別に木を集めて溜まりのそこかしろから集められた骨の上に重ねて山が作られた。
「皆、ご苦労だった。いくつかではあるが遺品も見つける事ができた。感謝する。最後にこの地に散ってしまった者達の遺骨を焼いて浄化しよう」
「「「はい」」」
「それでは最後は我の炎によっておくろう」
雪は本来の姿であるフェンリルとしての姿になり皆の前に進み出た。
その姿は神獸としての力強さ、神聖さに満ちている。
パーティーメンバーは一様に驚いたように表情をしたが、その後は感謝するように一様に頭を下げて胸に
手をあてて祈りを捧げた。
雪は力を集めるように空に顔を向けて目を閉じた。
その身体は力を帯び、青白く発光しだした。
その雪の横にまるで雪に習うかのように毛玉が並び、同じように空に顔を向け力を溜める毛玉がいる。
そして、青い空気が白くなったところで、雪と毛玉から青い炎が飛び山に火が着いた。
そして空気をビリビリと震わすような咆哮が雪の口から放たれた。
それは雪の神力を纏った浄化の咆哮であった。
その横ではその咆哮を気持ち良さそうに聞いている毛玉がいた。
その様子をアレスはじっと見ていたが雪の咆哮の瞬間に片膝をつき、雪に頭を下げ小さく呟いた。
「雪様、感謝します。ありがとうございます。
この地で散ってしまった者達の救いとなりました」
そして雪の咆哮が終わると立ち上がり燃え上がる火に向かい、王家の短剣を出し、祈りの言葉を紡いだ。
そして最後に、ここに散りし魂が家族の元に無事に帰れますようにと願った。
ここ数日の出来事、そしてこの日の光景はアレスにとって、この旅の目的、そして己れの転機を強く己れに刻み付けた出来事として一生を終える最後まで大事に大事に胸に留めて己れの指針とした。




