アレス
ヒオのテント大改装の騒動の後、毛玉と共に外の見張りについたアレスは火の近くに丸太をおき時おり火をかき混ぜながら、これまでに思いを馳せていた。
ある日突然、上空にフェンリルがあらわれ城内が騒然となった。
父上と大神官とが出迎えに向かい話しが持たれていた。
私は突然フェンリルが表れた理由に考えを巡らせていたが、我が国で近年大きな災い等の報告もないなかでの突然の訪問に疑問しかなかった。
父上達が部屋に入られてから数刻が過ぎたころ、父上が
いきなり私の執務室にやってきた。
その父上はいつもの少し難しい顔をした表情ではなく、まるでイタズラを思い付いたような顔をされていた。
「アレス」
「はい」
「お前旅に出ろ」
「はい?」
「フェンリル様がこれから旅に出られる。お前はそれに同行しろ」
父上の突然の言葉に一瞬の間はあったものの私はすぐさまに返事をした。
「わかりました。旅に出ます」
「よし。ではついてこい」
「はい」
私は父上の後について執務室を出た。
そこに弟が私達の前に立ちはだかった
「父上どういう事ですか?なぜ兄上が旅に出るのです」
「せっかくの機会だからな。アレスには良い経験となるだろう」
「何故に兄上なのですか?兄上にもしもの事があればどうするのですか?」
「それも経験だ」
父上はさっさと歩みを進めてフェンリル様の待つ部屋に向かい歩きだした。
その後ろからついていく私。そしてさらに後ろから文句をいいながらついてくる弟、そしてさらに後ろから突然の騒動に慌てて駆けつけ、弟の話しから私がフェンリル様と旅に出ようとしている事を知り苦言を呈している宰相となかなか賑やかだ。
そして、その賑やかなままフェンリル様の待つ部屋についた私の視線の先には真っ白なフェンリル様と漆黒の猫、そして人間の5歳児程の子供・・・
子供はヒオといった。
ここまでの間に父上からの話しでフェンリル様の連れている子供の面倒をみる事が私の旅の目的の1つだ。
その子はとても可愛らしい子供だった。
私や父上達をキラキラとした瞳で見上げてきた。
その後に父上達に聞いた話しによるとヒオはフェンリル様の力が体内に宿っており、またこの世界の生まれでない事、見習い冒険者となるにしても幼すぎる事などから面倒を見る者が必要であろうとなったらしい。
そこで父上がそれならと私に共に旅に出ろと言ってきたのだ。
父上はきっと私の慎重過ぎて大人しい性格を変えようと思っていたのかもしれない。
父はもともと破天荒で知られた人だ。そして弟こそ、その破天荒を引き継いでいると私は思っている。
弟こそが王としてふさわしいのではないかと・・・
そう思ってしまう私自身を、私自身がその慎重さを変えたいと思っていた。
だからという訳ではないが、私は父上から話しを頂いた時に間髪いれずに行くと返事をした。
今こそが私自身の転換期だと思えたのだ。
その日からわずかしか日はたっていないが私の魔法への考えはことこどく覆された。
そうヒオによって。
まずウサギのリュック、いつの間にかマジックバッグになっていた。
ヒオが言うには、念じていたらマジックバッグになったと・・・
本人は何の魔法を使ったとかもなく、ただ大きくなれと願ったと、そしてウサギのリュックが誕生したのだ。
ヒオは毎日、少しずつ魔法の練習を続けている。
その中の1つとして土魔法を使って石を生成し、ハートや星という形を作っていた。
それも日々進化していっており、この前には毛玉と一緒になり石に火魔法をぶつける事により石に艶を持たせてみせた。
次には花の形を作りたいと、ウンウンと唸っていたのでもう少し、他の形で練習してみてはと薦めて、本人も納得したうえでハートや星の中心部分を抜いた形抜きを先に練習する事としたようだ。
ヒオの魔法の練習を見ていた私だが、私自身も火魔法を少しではあるが使える。生活魔法ではあるが。
ヒオとの話しの中でヒオからイメージしてないから火魔法がもっと使えるようにならないのではないかと言われ。
今まで私は火魔法は生活魔法としての利用しか考えていなかった。たが、ヒオに言われてイメージする事で私ももっと使えるようになるのではないかと思えた。
そして、ヒオにイメージの方法を教わり練習を繰り返した結果、なんと私の火魔法も進化したのだ。
今までの火魔法よりも威力があきらかにあがった。
私は今までの私の想像力のなさに落ち込んたが、それよりも、まだ私にも成長できるのだと言う現実に歓喜した。
あの日から私もヒオと同じように、毎日少しずつではあるが火を使うイメージを工夫しながら訓練を続けている。
簡単にいかないのはわかっている。
それでも、今の私は楽しみでしかないのだ。
歩きながらも手の上に火を出現させては消す。また火を出現させては消す。ひたすらその繰り返しである。
私達の旅にはA級冒険者となったラクストが共にきてくれる事となり、ヒオはよくラクストにつかまり(ヒオがあまりにも道草をしてしまい前に進まない為)肩にのせられているので、私は毛玉と共にいる事が多くなった。
毛玉は漆黒の長毛の為、座っていると本当にただの毛玉のように真ん丸になって見える。
何故毛玉なのかとヒオに聞いたところ、始めてあった時に雪の胸元にくっついていて、手足もまったく見えず、本当にただの毛玉にしか見てなかった為に毛玉とつけたのだと言った。
ヒオの手のひらにのる程の大きさしかなかったらしい。
この頃一緒にいる事の多い毛玉は火魔法が得意で、私が手のひらに火を出して練習をしていると、わざと火を飛ばしてきて、私の火を消したり、弾き飛ばしたりとしてくる。
最初は驚いていた私だが、この頃は毛玉の火魔法に負けないように小さくても力負けしないような火が灯せないかと試行錯誤し、なんとか消される事はなくなってきた。このような遊びのような事でも繰り返す事で練習となり、私の火魔法も最初に比べると随分と力を持ってきているように思う。
私はヒオと毛玉の遊びのような練習が必死にそれだけに集中して繰り返す練習よりもはるかに多種多様な魔法へと発展している事に気付き驚きを覚えた。
ヒオのいうイメージが大事、それこそが魔法の上達に必要なものだっと。
今の私は楽しくてしょうがない。
この旅に出してくれた父に心の底から感謝している。
まだまだ始まったばかりの旅。
輝く程に広かった世界。
これがこれからの私の進む世界だ。




