薬師ギルドでも
冒険者ギルドを後にした僕達。
『さて、では次に薬師ギルドに向かうとしよう』
「薬師ギルド?」
ラクストか僕を肩に乗せながら雪の方へ視線をむける。
「先日のクサノオウの件か?」
『いや、あれはヒオが偶々に薬草と知っていて薬師ギルドに届けたまで、まだほんの入り口程の事しかわかっておらぬだろう』
そこまで話した所でもう着いてしまった。
冒険者ギルドと他のギルドは街のなかでも近くにあるんだね。僕、ラクストの肩じゃなくても、歩いても良かったかも・・・
「こんにちはー」
「これは青い雲の皆様」
ちょうどカウンターにいたギルドマスターが僕達に気が付いて声をかけてくれる。
「すみません、まだ、先日お預かりした野草のクサノオウは検証が始まったばかりで」
『あぁ、かまわぬ。それについては我らも急いてはおらん。』
「ありがとうございます。効能がある事はわかりました。後はどれ程の傷や疾患、毒に対応できるかの検証をしていく事になります」
「効能がある事がわかったの?」
僕は嬉しくなってギルドマスターに話しかけた。
「はい。あっでも虫刺されは思った程には効いていないようなんです。塗り薬にしてみたようなのですが、虫に噛まれた時に体内に入る毒に対しては反応が弱いようですね」
「草のどこを使ったのかな?虫刺されにはお花を刻んでアルコールに浸けて使うんだよ」
あっ、しまった。クサノオウの事は雪が鑑定で気付いた事にしてんだった。
おもわず自分の手で口をふさいだ。
そーっとギルマスやラクスト、アレスの顔をみる。
ラクストは笑いながら僕の頭をポンポンとなでた後で、
「そうらしいです」
と軽く言い
「おお、そうなのですね。早速担当者に話しておきましょう」
とギルマスも軽く受け流してくれた。
そして話しを変えるように雪に向き直り
「先日の薬草の事でないとなれば、本日はどのようなご用件でございますか?」
『うむ。我が先日向かった先で、ちょうど見かけたのでな』
そう言って雪は空間魔法から一輪の花が咲いた植物のような物を2つ出した。
植物のようなと言ったのは、その花がクリスタルのように硬質にみえるから。
「「「クリスタルスノー」」」
それを見た瞬間にギルマス、ラクスト、アレスが大きな声を出してかたまった。
「クリスタルスノー?」
『そうだ、これはクリスタルスノーという植物でとても珍しい』
「いやいや、珍しいどころか・・・とりあえず場所を変えましょう」
ギルマスがそう言い、先にたって個室に向かった
部屋に入り、ギルマス自らお茶を入れてくれる。
ラクストとアレスには紅茶を、僕と毛玉にはミルクを雪には雪の希望で魔素水の含まれた水が出された。
「さて、フェンリル様、先程のクリスタルスノーですが」
『うむ。先程も言ったが我が向かった先で偶然見かけたのでな採取してきた』
「雪様、そんな簡単に採取してきたとか・・・」
アレスが苦笑いしながら言うと
『簡単にであろうが難しくだろうが、あったから取ってきたのだ』
雪がフンって感じで言う。
「このお花は凄いお花なの?」
「はい。このお花は人が踏み入れるには大変厳しい雪が一年中降り続く山の山頂あたりでしか採取できず、採取する為に大きなパーティーを組んで採取に向かいます。登頂するのも大変厳しいのですが、そこに至るまでに魔獣との遭遇もありますので」
「そんな思いまでしても必要なの?」
「はい。このクリスタルスノーは最高級ポーションといわれるエリクサーに必要な素材なのです」
「エリクサー?」
この世界での知識がまだ足りない僕にはエリクサーがどれ程のポーションなのかがわからない。
「ヒオ、エリクサーはね、もう普通の薬では治らない病気や腕や足が取れてしまったり、毒が全身にまわってしまって瀕死の状態でも治してしまえる程のポーションなんだよ」
「すごい」
「そう、凄いでしょう。このエリクサーにはね、このクリスタルスノーがないと完成しないんだよ」
アレスが僕にもわかるようにゆっくりと説明してくれた。
そんなに凄いお花なんだね。それにとっても綺麗だね
「雪、凄いお花持って帰ってきてくれたんだね。ありがとう」
『綺麗な花ゆえな、ヒオに見せてやろうと思ったのだ。それに人には必要な物であろう?人の身では、難儀する場所にある花ゆえにな』
その言葉にギルマスが深々と頭を下げた。
「こころより感謝を申し上げます。これでどれ程の人命が助かります事か」
『うむ。ただ我が望むは人を選ぶ事なく、人に幸いがある事を望む』
「はい。しかと承りました」
やっぱり雪は凄いなーかっこいい。大好き。
僕はソファーから降りて雪にパフンと抱きついた。
『どうした』
「雪、かっこいい。大好き」
『そうか。我もヒオが大好きだぞ』
『毛玉も大好きなの』毛玉が負けずに僕と雪にグリグリする。
「僕も毛玉大好き」
そんな僕達のほのぼのとしたやり取りを微笑ましく見ながらラクストとアレス、ギルマスは話しを続ける。
「これ程の状態の素晴らしいクリスタルスノーは今までにもありません。採取するだけでも困難ですし、持ち帰るにも日数がかかりますから。それでもあれ程の効能が発揮されるのですから、こんなに完璧な状態でそれも2つもあれば、エリクサーとしても素晴らしい物ができるでしょう」
「確かに俺も本物で完璧なクリスタルスノーを身近に見たのは始めてだよ」
「僕は始めて見ました。本で見た事はありますが、これ程に美しい物なのですね」
「確かに美しいですね。私も数年に一度は目にしますが、これ程に美しい物は始めて目にします」
ギルマスはそう言いながらガラスのような器でできた魔道具のなかにクリスタルスノーを入れた。
魔道具に入れて管理する程に貴重なのだ。
そして一度、席を外し、1人スタッフを連れてきた。
「鑑定を担当しているドイスです」
「ドイスです。ギルマス緊急の鑑定というのは?」
「これです」
そこからの鑑定士さんの反応は凄かった。というか怖かった。僕は雪にギュッと抱きつき、毛玉は尻尾が倍ぐらいに膨れる程に。
「ギ、ギ、ギルマス、ギルマス」
「落ち着いて下さい。ドイスくん」
「ギルマス・・・ギルマス」
「ドイスくん落ち着いて」
こ、こわい。毛玉はアレスの腕の中にいき、腕と身体の間に頭を突っ込んでる。
あまりの興奮具合についにギルマスさんがドイスさんの頭を後ろから突っ込むようにパーンとはたいた。
「ドイスくん落ち着きなさい。ヒオくんと毛玉くんが怖がっているではありませんか。」
後ろから突っ込まれたドイスさんは暫く項垂れたまま深呼吸を繰り返した。
それも怖いです。
「失礼しました。改めましてドイスです。これは素晴らしいクリスタルスノーですね」
そう言うと、1つのクリスタルスノーの魔道具を開き手にした。
「花を全く損傷していませんし、茎も葉も傷すらありません。そして最高なのは根も完璧に揃っている事です。1つだけ根が切り取ってありますね・・・」
『それはクリスタルスノーが根を伸ばして繁殖していく為に隣の花までを痛めぬ為に我が切り取ったのだ』
「なっ・・・」
「クリスタルスノーは根を伸ばして増えていくのですか?」
また怖いです。今度はギルマスも怖いです。
『落ち着け。ヒオが怖がっているではないか』
「すみません」
二人はもう一度深呼吸してソファーに座った
「私達は今までクリスタルスノーの根をここまで綺麗にみる事がありませんでした。それは地面までも凍りついている為に綺麗に掘り起こす事が出来なかったからです」
「雪様、本当にありがとうございます。私共は今まで知り得なかったクリスタルスノーの生態を知る事ができました。これは・・・採取の際には根を傷つけぬように気を付ける必要が・・・」
『その必要はない』
「えっ、しかし」
『今回は我だからこそ、そこまで根を出す事ができたが、先程、言っていたように、普通は掘り起こせぬ。ゆえに隣の花の根を傷つける程にはならぬよ』
「そうですか。わかりました。ありがとうございます」
「それでは、改めて鑑定を致します」
「このクリスタルスノーは花びら1枚が金貨500枚になります。その花びらが完璧な状態で5枚揃っています。そして茎が金貨300枚、葉が1枚300枚です。根はこんなに揃っている事が今までありませんでしたので、そうですね・・・根は全てで金貨800枚でいかがでしょうか?そして鑑定額ですが、今お伝えした金貨は根以外は通常の依頼で取ってきて貰ったクリスタルスノーの金額です。今回は今までの物よりも素晴らしい状態での納品になりますので・・・そうですね、花びらは1枚700枚、茎は500枚、葉は1枚500枚で3枚分でいかがでしょうか?」
金額が凄すぎて、わけがわからない。
ラクストとアレスも無言。
えーと、で合計は・・・金貨6300枚
これが2本分と思っていたら、もう1本の方が大きかったのでさらに金額があがり
合計は金貨13100枚だって
えっと、えっと、それって・・・1億3千万って事?
「凄い・・・」
「本当にな、でもこれで死にそうな人や体の欠損が治ると思えば、安いもんかもな」
そうか、前の世界ではあり得ない事だけれど、エリクサーで病気や毒、体の欠損まで治せる、そんな薬が作れる花なんだ。
『人とは弱い生き物だ。だが知恵がある。我はこの花が回復の作用を持っている事を知ってはいたが、人はいかようにしてか、この花に効能がある事を知り、調べ、研究しエリクサーを作った』
雪は伸びをしながらそう言った。
「はい。ありがとうございます。今回もこの花で救える命がある事を嬉しく思います。フェンリル様に心からの感謝を」
ギルマスはドイスに雪がフェンリルである事を伝えた上で他言無用といい、改めて2人して感謝を伝え深々と頭を下げた。
「ではフェンリル様、お支払はどう致しますか?」
『そうだな・・・ラクスト、アレスどうだ?』
「そうだな、そこまでの大金は必要ないしな」
「そうですね。ギルドに預けてもいいのでは?」
アレスが言った預けるとは、簡単にいうと銀行と一緒のような物で、ギルドならどこでも引き出せるらしい。
『では、それでいこう』
「かしこまりました」
僕達は金貨500枚だけを現金でもらい後は預ける事にした。
まだ暫くは、揃える物もあるだろうと、現金を手元に多めに残す事にしたのだ。
ラクストやアレスも持っているが僕も持っていた方が気兼ねなく使えるだろうと。
僕は自分のお金を持った事がないから、人のお金も本当に使っていいのか迷ってしまう。
それを、ほんの数日一緒にいただけで2人とも気が付いたみたいで僕の使えるお金として僕自身が持っているお金を作ってくれた。
そして雪もギルドに預ける名前をヒオにした
『我の名にしても必要なのはヒオと一緒だからな』
と言って。
「うん、雪と毛玉、僕達ずっと一緒だよ」
「おいおい、俺とアレスは一緒じゃないのかよ」
ラクストが悲しそうにそう言って、アレスが涙を拭くような仕草をした。
僕は慌てて
「2人もこれからもずっと一緒にいてね」
そう言うと、2人がニッコリと笑って頭を撫でてくれた。
『さて、では帰ろう』
「うん」




