雪が帰ってきた
今日も良いお天気です。
僕も窓を開けてお腹いっぱい空気を吸い、深呼吸をします。
ラクストは朝から剣を持ち、素振りをしています。
もう一時間程降り続けていて、身体から湯気と汗が大量に出ています。
その横ではアレスも素振りをしてます。
暫くそれぞれに剣を降ってたけど、一度ラクストが汗を拭き水を飲んで1呼吸おいて、アレスの様子をみる。
「アレス、少し剣を合わせるか?」
「はい。よろしくお願いします」
アレスが汗を拭き、水分をとるのを待ってラクストとの手合わせが始まった。
いつもヒョウヒョウとしているラクストだけど、さすが剣を持つと覇気が凄くて2人の間にピリッとした空気がとりまく。
辺りには2人の呼気と練習用の木刀の当たる音が響き渡り凄い迫力だ。
毛玉も横にきて2人のそんな様子をじっと見ている。
僕はそんな食い入るように見る毛玉の様子にも驚きながら暫くじっとしていた。
カーンという高い音と「うっ」というアレスの声が聞こえて、剣が庭の角に飛んでいった。
「ありがとうございました」
アレスは息も乱れてかなりの汗をかいていたが、最後にずうっと息を整えてラクストに頭を下げた。
「さすがに鍛えているな。いい剣だ」
「ありがとうございます」
ラクストもやっといつものラクストに戻って笑いながら汗を拭いてる。
「少し左からの打ち込みへの反応が遅れるようだ。そこに気を付けていくといい」
「はい」
凄い、そんな事もわかるんだね。やっぱりA級冒険者って凄いんだな。
「2人ともかっこいい」
僕がそう呟くとラクストがにかっと笑いながら「だろっ」ていって、僕の頭をガシガシとなでた。
「ラクスト、痛い」
そう言っても、ハハハと笑いながらシャワー室に入っていった。
アレスは剣を拾いにいって、もう一度中央に戻るとラクストに言われた事を反芻するように、素振りと型の動きのチェックをしている。
アレスも凄いね。ラクストのような力強さはまだないけれど、その分しなやかさがあるように見える。
ただの素人目だけれど。
ラクストの後にアレスもシャワーを浴びて朝の練習は終わりです。
2人がシャワーを済ませ、ちょっと一息ついた時に、
毛玉が急に起き上がり窓際まで走っていき耳を前に向けてじっと外を見てる。
するとラクストが何かに気付いたようにフット顔を上げて
「おっ、雪が帰ってきたな」
「えっ?」
「今、街の門の前まできているな。毛玉、偉かったな。よくわかったな」
毛玉を撫でてから抱き上げアレスに渡す。
「さて、ヒオ、毛玉、迎えに行こうか」
「本当!、行く!ラクスト早く!」
「慌てるな。転ぶぞ」
ラクストが笑いながら後ろからついてきてアレスに抱っこされた毛玉と一緒に部屋を出ると、ひょいと僕をいつもの肩口に乗せて歩きたしました。
街の門の前まで来ると、門の前には人だかりができていて、衛兵の人達がその一番前に立ち、盾と槍を構えて一方向を警戒している。
僕は何があったんだろうって首を傾げたがラクストが
「あっやばい、少し遅くなったか」と言って駆け出した。
ラクストが駆け出した先には、衛兵に囲まれて座っている雪がいた。
「ゆーきー」
僕がラクストの肩の上から雪に向かって手をふる。
すると、それまで遠巻きに雪を囲んでいた全ての人が僕とラクストに注目した。
「ゆーきー、お帰りなさい」
「ワフ」
雪が犬のように鳴いて返事をした。
後で雪に聞いたら、ラクスト達と話し合って、普通の人の前ではホワイトウルフって事にするんだって。
フェンリルはあまりにも伝説級過ぎるからって。
僕達が雪に向かって行くと皆がとても興味深そうに見ている。衛兵さんはまだ盾と槍を構えたままだけど、その中から少し偉そうな叔父さんが出てきた。
「青の雲のパーティー、ラクストさんですね」
「はい。お騒がせしてすみません。あのホワイトウルフは俺達の従魔です」
「そうでしたか。すみません、急に現れてあそこに座ったまま動こうとしないので、どうしたものかと」
「ですよね。気配に気付いたのですぐにきたのですが、思ったより目だってしまったみたいですね」
ラクストが頭を掻きながら、隊長さんに説明しているので、僕はラクストにボンボンと合図して肩から降ろしてもらって、雪に向かって走って行く。
そして、雪にたどり着くとそのモフモフの胸にモフンと抱きつく。
「雪、お帰り」
『ただいまヒオ。』
「雪、どこも何ともない?怪我とかしてない?」
『あぁ、どこも何ともない。ヒオこそ良い子にしていたか?』
「うん、良い子にしてたよ」
「確かに良い子にしてたな。少しやらかしただけでな」
『・・・まぁ、それは街に入ってから聞こう』
僕達は隊長さんに挨拶してから街に入りました。
『さて、まずは冒険者ギルドに向かおう』
「冒険者ギルドに?何かあるのか?」
ラクストが不思議そうに聞く
『あぁ、少し討伐してきたから買い取って貰おう。詳細はギルドで出してから話そう。アレス、すまないが最初から別室に案内して貰えるように手配してくれ』
「わかりました」
そんな打ち合わせ等をしながら歩いて、あっという間にギルドについて、僕達が入っていくと、ラクストがA級冒険者である事がここ数日で広まった事とホワイトウルフとして雪がいる事で注目を集めた。
でも、そんな視線を誰も気にせずに受付のカウンター前に行き、アレスがパーティーカードを出しながら小さな声でちょっと特殊な物の解体、買い取りをお願いしたいと伝えた。
受付嬢はチラリと雪に視線を向けると
「暫くお待ち下さい」とそれたけを言って奥に入っていった。
暫くするとお姉さんが1人の大きな大きな叔父さんを連れて戻ってきた。
凄い、あの腕なんて僕のお腹周りと変わらないっていうか、僕のお腹より大きいかも。
「おぉ、なんか持ってきたんだって?広い所がいいか?」
アレスが雪を振り返り雪の頷きを見て
「はい。広い所がいいですね」
と返事をし「ついてこい」って言う叔父さんの後をついて行った。




