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傷痕

 ディアンが脱衣場に行き、服を脱ぐと、そこにはベッタリと血が付着していた。

 赤く染まった衣服は、命を懸けた戦闘を物語る。

 しかし、その死闘を繰り広げたその肉体には一片たりとも傷はなかった。

 まるでシルクの様な透き通った肌。

 いとも容易く傷付けられそうな肌は戦いを思い起こさせない。

 それは吸血鬼(ヴァンパイア)の回復力故。

 しかし、そんな吸血鬼(ヴァンパイア)にもダメージは蓄積している。

 肉体ではない。心のダメージだ。

 同胞を殺した。それは少なからず、心に傷を残す。例えそれが宿命であったとしても。

 心を無にしてしまえば楽だろう。だがそれは死んだも同然だ。

 今ここに生きている。そして今後も生きていく為には受け入れ、乗り越えて行くしかないのだ。

 服を脱ぎ捨てたディアンは風呂場へと移動し、シャワーの湯を頭から浴びる。

 冷えた体が芯から暖まる。心なしか、少しだけ気が晴れていく様だった。

 そんな中、ディアンはディリックと共に生涯を終えた名も知らぬ少女の事を思い出していた。

 何度見たって慣れるものではない。ましてや年端もいかない子どもの死だ。


「クソッ……」


 自身の選択が間違っていたとは思わない。

 しかしそれでも、他に選択肢があったのではないかと思わずにはいられない。

 そして、あの光景はいつアリスの身に降りかかってもおかしくない。


「行くしかないか……」


 アリスを、そして一家を思うのならば自分が選ぶべき事柄は決まっている。

 ディアンは一人、決意を固めるのだった。

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