帰宅
護送車に長い時間揺られ、ディアンとアリスは自宅へと戻って来た。
「とりあえず一段落か」
「そうだね」
怒涛の一日だった。アリスにとってはドラマやアニメでしか見た事のない出来事ばかりだった。
だがそんな日も、終わりを告げた。
漸く帰って来た我が家の扉をアリスが開ける。
すると―――
「うわぁ!?」
父母がミサイルのごとき勢いでアリスに飛びかかって来た。
「お帰りなさいアリス心配かけてごめんね」
「大丈夫だったか?怪我してないか?」
「わわわ、大丈夫だって!」
アリスは抱き付かれ、撫で回される様に体をチェックされる。
だが何も悪い気分ではない。
かつてはお節介で心配性で楽観的な親が鬱陶しかった。
けれど今は、この瞬間は、そんな父と母の愛情が心地いい。
「ただいま」
アリスも力一杯に抱き返すのだった。
そして暫し抱擁の時が流れた後、アリスの父はディアンへと体を向ける。
「ありがとうディアンくん。キミのお陰で私達も無事帰って来れた」
「いや、そもそもオレ様がいなければ、こんな事にはならなかった」
恨まれはすれど例を言われる筋合い等ない。
しかし、アリスの父は責めるどころか礼を言う始末だ。
そしてそれは母も同様だった。
「何言ってるの。誰のせいだとかはないのよ。ディアンちゃんが気に掛けてくれていたお陰で、私達もアリスもユウトも皆が無事でいられたの。そうやって何でも抱え込んじゃダメよ」
「……あぁ、すまない」
罵られ、追い出される事は覚悟していた。
だが、予想とは裏腹にディアンの心は暖かい。
「色々とあっただろうが、まずはお風呂だな。そんな状態じゃ、くつろげないだろう」
「行ってきなよ。一番頑張ったんだから一番の待遇受けなよ」
アリスの後押しの言葉に、ディアンは思わず「フッ」と笑いが零れる。
「訳の分からん事を」
きっとどの家庭にもある訳ではない。
アリス一家だからこそ、この心地よさは体験出来る。
「ディアンさん。おかえり」
「ユウト、よく一人でいてくれたな」
「当たり前でしょ。僕だって男だからね」
「そうだな」
えっへんと胸を張るユウトの頭を軽く撫で、ディアンは風呂場へと向かっていく。
今日の出来事はディアンにとってもアリスにとっても、転換期となった。
この一件でディアンの中で、アリスだけでなくアリス一家そのものを守りたいと強く感じさせたのだった。




