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協力者

 ディアンら一行がナガレ達の元へ戻ると、あまりに短時間での帰還にナガレは驚きの表情を見せた。

 そしてライグリッツから、シグマを取り逃がした事を知らされると、天を仰ぎはしたが、すぐに切り替え向き直る。


「いや……まぁ、捕まえ損ねた事は残念だが、ライグリッツが無事で良かった。潜入調査お疲れ様」

「お安いご用ってやつだな。俺にとっちゃ朝飯前よ」


 二人の態度と発言から、ニルコックの発言が嘘ではないという事は理解出来た。

 しかし、それでもディアン達には納得出来ない部分があった。


「ナガレ。この吸血鬼(ヴァンパイア)が潜入してたのは分かった。だが何故、オレ様達に知らせなかった?」

「せやせや!そんなん不義理もええとこや!」


 ディアン達からすれば当たり前の疑問だ。

 潜入している者がいるなら、挟み撃ちなり何なりと作戦は立てれた。

 しかし実際は単独行動の末、シグマを逃している。

 潜入と言うからには、ある程度の連絡も取れていた筈だ。

 故にライグリッツの存在を隠していた事等、不信感しかない。

 そんなディアン達の疑問にナガレは立ち上がり言葉を発する。


「信用してなかった訳じゃない。だが、キミ達が完全に味方だという確証もなかった。だから伏せさせていてもらった。勿論、作戦が終われば説明はするつもりだったさ。すまなかったな」

「ちなみに俺はお前らの事なんて知らなかったぞ。てか、今も知らねぇ。何者なにもんだお前ら」


 ここに来るまで、ライグリッツとディアン達は言葉を交えていない。

 ナガレ達の元へ戻って来ても、取り逃がした報告のみ。

 その為、お互いの事は全く知らなかった。


「ディアンだ」

「エルドラや。おっさんの隣におるんはウチらのパートナーや」

「こちらは名乗ったぞ。次はそっちだ。キサマは何者だ」


 ディアンの態度にライグリッツは若干眉をひそめるが、何事もないかの様に自己紹介へと移る。


「聞いていたと思うが、俺はライグリッツ。ライグリッツ・バーナード。お前達と同じ吸血鬼(ヴァンパイア)だ。能力はさっき見た通りって所だな。で、ナガレ、コイツらリーヴァントの標的だったろ。保護でもしたのか?」

「二人はディリックとエルコを倒した実力者だ。シグマ捕獲の手伝いをしてもらうつもりだった」

「あーそういう事な」


 ライグリッツはシグマを取り逃がした事を思い出したのか、ばつが悪そうにその場を歩き回る。

 だが、ナガレの言葉でライグリッツはピタリと足を止める。


「で、中で何があった?」

「バレてたんだよ。俺が敵だって。泳がされてたのかは分からねぇが突然吹っ掛けて来やがった。勿論俺も捕まえるつもりで応戦したが、リーヴァントには協力者がいたんだ」

「協力者だと?そんな情報なかっただろ」

「最初から泳がされてたのかもな。だがまぁ、考えてみればおかしかったんだよ。何でシグマがあんなにガーゴイルを従えられていたのか」

「まさか……」


 ナガレの脳裏に最悪のシナリオが浮かぶ。

 否定してくれ。そう願うが、期待する返答は返ってくる事はない。


「そのまさかだ。シグマはヨグドスと手を組んでいやがった」

「クソ……」


 想定外の事態にナガレは言葉を失う他なかった。

 そんな中、床に座らせられ放置されていたニルコックがライグリッツに対して口を開く。


「それなら尚更殺してでも捕まえるべきだった。何でひょこひょこと帰って来てるのさ」

「帰ってくるしかなかったんだよ。ヨグドスの中にお前と同じ様にワープ系の能力を持った奴がいた。周囲には匂い一つ残っちゃいなかったよ」

「そんな……」


 ナガレと同じく言葉を失うニルコック。

 そんな様子に、無知なアリスとリンでも尋常ではない事態だと理解出来た。

 沈黙が流れる空間。それがより事態の重さを感じさせる。

 しかし、いつまでも浸っている訳にはいかない。

 見かねたディアンは沈黙を破る。


「それでどうするんだ。このままおめおめと帰るのか?」


 ディアンの言葉に、ナガレは「そうだな」と顔を上げる。


「車を手配してある。キミ達はそれで帰るといい。リーヴァントについては俺とライグリッツでもう少し調査していく」

「何だ、帰してくれるのか?」

「あの時の言葉、本気にしてたのか?お前が人殺しをしていない事は分かっている。協力してもらう為の方便さ」

「だろうな」

「だが後日、色々と話は聞かせてもらうつもりだ。今は休息が必要だろう」


 流石本職と言った所だ。見透かされている。

 ディアン自身は大丈夫でも、アリスにとっては耐え難い経験ばかりだ。

 見た限りでは平静を保っているが、中はどうなっているか分かったものじゃあない。


「行くぞ小娘」

「うん」


 ディアン達はニルコックの後に付き、手配された護送車へと歩いて行くのだった。



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