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刀剣と盾

 ツーツーと通話が切れた音がスマホから流れる。

【敵討ち】という単語が聞こえた。

 エルドラは誰かと接触したのだ。


「どうしよう!エルドラさん襲われてるかも!」

「あのバカ。何で通話切ったんだ」


 焦るアリスをよそに、ディアンは拾っていた上着を着ると、その場から移動しようとする。


「探しに行くぞ」

「行くって何処に!?」

「知るか。手当たり次第に探すしかないだろ」


 二人が出口へと歩いていくと、外から少女が姿を現した。

 長く艶やかな黒髪を束ねた少女の腰には今の時代、普通に過ごしている限り見る事はない刀が携えられている。

 故に一目見てそれが常人ではないという事くらいは想像がつく。


「下がっていろ」


 ディアンは右手をアリスの前に出し、後ろに隠れる様指示し、同時に左手の親指を歯に当てて傷を付ける。

 そしてアリスが瞬きをした一瞬、刀を抜いた少女がディアンに斬りかかっていた。

 だがディアンも血の棒を生成し、刀を受け止めていた。


「何者だキサマ」

吸血鬼(ヴァンパイア)は始末する」

「話の通じない奴だな!」


 振り下ろされた刀を受け止めたまま、ディアンは少女の腹部を蹴り込む。

 しかし、少女は蹴りが当たる前に後ろに飛び、回避する。

 ディアンは即座に棒を捨てると、対抗する為に鎌を生成する。


「もう一度聞く。何者だ」

「……うるさい」


 少女は呟くと再度斬りかかってくる。

 ディアンに逃げるという選択肢はない。

 避ければ追撃により、アリスが巻き込まれてしまう可能性があるからだ。

 ディアンは地に足を付け迎え撃つ。

 二人の刃が触れる―――そう思われたが突然二人の間に黄色い透明な壁が出現し、二人の刃は阻まれる。


「そこまでだコトネ。すまねぇな吸血鬼(ヴァンパイア)(あん)ちゃん。それに嬢ちゃんも」


 現れたのは大柄な体格の、両肘から下にかけて付いてる盾のように巨大な籠手(こて)が目を引く中年の男性だった。

 そしてその男に注意されたコトネと呼ばれる少女は、不服そうに刀を(さや)に納める。

 そんなコトネの様子に男は苦笑しながら短髪の頭を掻く。


「何者だキサマら。リーヴァントか」

「安心しろ。俺達は味方だ。見てみろよ人間だぜ?」


 男は両腕を広げアピールをする。

 しかしどう考えても二人はただの人間ではない。


「ならこれは何だ」


 ディアンは鎌で透明な壁を叩く。

 巨大な亀の甲羅を思わせる亀甲きっこう模様の黄色い透明な壁。

 人間業ではない。

 それは魔法だとか超能力と呼ばれる類いの能力だ。

 吸血鬼(ヴァンパイア)はともかく人間が扱える力ではない。


「人間にも特別な奴がいるってだけさ」


 壁が蒸発する様に消えていく。

 先程まであった障害物は跡形もなく消えると、男は歩み寄ってくる。


「俺の名は篠崎しのざきナガレ。こっちは音無おとなしコトネだ。よろしくな」


 ナガレは握手を求めて手を差し出す。

 しかし、ディアンは応じない。

 それどころか鎌をナガレの首筋に向けた。


「見ず知らずの、それもいきなり喧嘩売ってくる様な奴らと仲良く出来る筈ないだろ」

「まぁ、最もな意見だな」


 仕方がないといった様子でナガレは手を下ろす。

 すると空気が変わる。

 先程までの害のない雰囲気とは異なり、ナガレの目付きが鋭くなった。

 それはまるで容疑者を捕まえる警察官の様で。


「後藤一家殺人事件。重要参考特殊生命体ディアン。同行を願おうか」

 

 ナガレは白ジャケットの内ポケットから手帳を取り出すと中を開き見せ付けた。

 そこには【特殊生命体対策機関】と書かれている。

 それが何を意味するのか、ディアンとアリス共に分からない事はなかった。


「なるほど。専門業者がいるのか」


 詳しい事情は分からないが、政府の息がかかった組織という可能性が高い。

 ここで逃亡したりすればディアンだけでなくアリスもとい茜一家に迷惑がかかるだろう。

 ならば選択肢は一つしかない。


「オレ様の事は好きにしろ。殺す以外はな。だが小娘含め他の奴には手出しをするな。それがキサマらに着いていく条件だ」

「いいだろう。と、言いたい所だが、あかねアリス。キミにも同行願う」

「何を言っている」


 自身の要求を無視した行動にディアンは怒りをあらわにする。

 手から伝わった力が鎌にも伝わり、ナガレの首筋からうっすらと血が垂れる。

 それを見たコトネは刀を抜こうとするが、ナガレはコトネの前に手を出し制止する。


「キミ達は契約関係にあるんだろ?重要参考人と一番縁が深いんだ。聞き取りを行うに決まっている」

「オレ様一人で充分」

「行きます」


 ディアンの言葉に被せる様にアリスは返事をする。


「バカ言うな!キサマには関係のない事だ。小娘は家に帰っていろ!」

「バカはそっちでしょ!あの時も一人で抱え込んで……。もう一人で無茶しないって約束したでしょ!私にも背負わせてよ!」


 アリスは退かない。

 その決意はアリスの目に表れ、ディアンも理解していた。

 少しの間が空いた後、ディアンはため息をつき、鎌を解除する。


「分かった。ナガレとか言ったな。小娘とついていってやる。だが小娘以外接触は許さん。これが最低条件だ」

「承知した。では、少し待て」


 ナガレはスマホを取り出すと、何処かに電話をかける。

 通話相手は分からない。


「こっちは終わった。そちらの準備は?……分かった。じゃあ後程」


 聞こえた限りでは内容の分からない電話が切れるとナガレはスマホをしまう。


「それじゃあ行くか」

「何処にだ」

「合流地点にだよ」


 ナガレは返答すると出口へと歩いていく。

 続く様にコトネも歩いていく為、残された二人はお互いを見合う。


「しょうがない。行くか」

「そうだね」


 ディアンとアリスも二人の後を追い、歩いて行くのだった。

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