苦しみの果てに
肉の焼ける臭いが鼻腔を突き刺す。
少女の悲痛な叫び声が耳を劈く。
どれだけもがき足掻こうとも、炎は少女の元から離れる事はない。
呼吸をする度、肺は焼け、焼け爛れていく。
「お゛前達は絶対に゛許さな゛い゛!殺してや゛る゛!殺してや゛る゛!!」
だが少女は屈しない。
焼け爛れた皮膚から覗く目は、必ずや殺してやると言わんばかりの眼力を放っている。
炎が侵食していく中でも、その目はディアンを捉え続けている。
そして呪いの言葉かの様に叫んでいる。
歴戦の猛者であっても耐えられぬ苦痛の中で少女はこの世界を呪い続ける。その命が潰えるまで。
徐々に体は炭化していく。
筋肉は収縮し、歪な形に曲がっていく。
「痛い……痛い……、ディリッ……ク、助け……て……」
少女は唯一心を許していたディリックに助けを求め動かなくなる。
最後は寄り添う事も出来ず、孤独に死んでいった。
これが救いであったのか。
未だ燃える少女の姿を見て、ディアンは自身の選択が正しかったのか分からなかった。
そして炎は徐々に小さくなり完全に消えると、そこにはかつて少女だった炭化物だけが残っていた。
「帰るぞ」
ディアンは静かに言葉を発すると、アリスが遺体を見ない様に斜線に立ち歩き出す。
ディアンによって隠されていたアリスには、少女がどうなったのかは分からない。
だが少女の悲痛な叫びと人の焼ける臭いは脳裏に焼き付いている。
見えなくとも想像は出来る。
あんな最後が人の在り方であっていい筈がない。
だからディアンは契約破棄の方法を探しているのだ。
もしも死んでいたのがディアンだったら…。
アリスは思わず、ディアンの袖を掴む。
「ごめん。ちょっとだけ……」
ディアンは何も言わず歩いていく。
雲が晴れ、差し込む陽はディリックの体を灰へと変える。
そして肌を撫でる柔らかな風は少女とディリックを空へと連れていくのだった。




