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少女の決意

 両脚を貫かれた事により、ディリックは立つ事が出来なくなり膝をつく。


「テメェ……何しやがった」

血の罠ブランデッド・ピエージュ。キサマの足元にあったオレの血を操作した」

「やっぱ舐めてやがったか……ッ!」


 ディアンの行動にディリックは怒りを露にする。

 だが脚を使用不能にされたディリックは、その場から叫ぶ事しか出来ない。


「これは殺し合いだ!今ので脳まで貫いて決めるべきだった!」

「いくらでも吠えてろ。キサマはもう戦えない。敗けだ」

「結局最初から殺る気はなかったってか」


 ディアンの発言にディリックは悲しむ様な呆れる様な声で空を見やり舌打ちをする。

 そしてこれまでずっと静観していた人間を呼びつける。


「ガキィ!来い!」


 呼びつけられたディリックの従者の少女は廃材の中をこけない様に急ぎ足で駆け付ける。

 そんな少女の姿を見て、ディアンは改めて憤りを感じる。

 ボロボロの服装はまともな衣服を与えられていない証拠だ。年端のいかない少女がしていい格好ではない。

 そんな少女が一声掛けられるとすぐさま駆け付けるこの状況。

 およそまともな扱いはされていないのは見て取れた。

 何をする気かは分からないが少女を利用する様な事はさせない。

 ディアンは駆け付ける少女の前に鎌を割り込ませる。


「やめるんだ。ここでお前が手助けすれば本当にディリックを殺す事になってしまう。そうすればお前も死ぬ事になるんだぞ」

「だから何?私は自分の意思でここにいる。操られてもいないし脅迫もされてない。全部私が望んだ事だ。勝手に哀れんで被害者にするな」


 予想だにしない返答にディアンは思わず言葉に詰まる。

 何がそこまで少女をディリックと繋ぎ合わせるのか、ぞんざいな扱いをされても尚、共にいる事を選ぶ程の何かがディリックにあるのだろうか。

 ディアンが見つからない答えに気を取られている中、少女は鎌を掴み、刃を首元へ当てる。


「殺したいなら殺せばいい。ディリックが殺されたら私も死ぬんでしょ。だったら今死んだって同じ」

「何を言っているのか分かっているのか」

「そうやって子どもだからってバカにする。大人は皆そうだ」


 苛立つ様子を見せる少女は、躊躇なく刃を首に押し込む。

 表情に一切の恐怖がない。死ぬ事に怯えていない。

 このままでは本当に自死してしまう。

 ディアンは咄嗟に鎌を少女の元から引き離した。

 すると少女の首元からたらりと垂れた鮮血が陽に当たり光る。


「飲んで」

「アイツを出し抜くなんて使えるじゃねぇか」


 ディアンの隙をついてディリックの元へ辿り着いた少女はしゃがみこみ、服を引っ張り首を差し出す。

 そして短いやり取りを交わした後、ディリックは血の垂れる首元に躊躇なく噛み付き血を吸い上げる。


「どういうつもりだ」


 ディアンは疑問を口にする。

 それもその筈だ。

 本来吸血は能力を強化する為のもの。

 その為、戦闘前に吸血するのが常識だ。

 しかし今目の前で行われている光景は、その常識から外れている。

 確かに従者の血を吸う事で治癒能力を高める事が出来るが、それは小さな傷に対してだ。今回のような重傷に関してはすぐに治癒する事はない。

 可能性として治癒能力を持っているなら、吸血により即座に治癒する事もあるかもしれない。

 しかしディリックの能力は既に割れている。

 なら、その行動の意味する所は一つしかない。


「まさか、今まで吸血をしていなかったのか!」

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