マーキング
ではディアンは何処へ行ったのかというと、ナイフ達の隙間をぬいディリックの元へと迫っていた。
「カラクリに気が付いたか」
振り下ろされた鎌をナイフで受け止めディリックは笑う。
「あぁ、キサマの能力はマーキングした対象に自動追尾させる能力だ」
「半分正解だ。オレの能力は対象に自身の血を付着させマーキングする事で、同じくマーキングしたモノを追尾させる能力だ」
そう、ディアンは見落としていたがディリックのナイフには全てマーキングが施されていた。
勢いが殺されない限り永久に対象を追い続ける。
それがディリックの能力だった。
「しかしよく気付いたな」
「刺さったナイフは全て上部に来ていた。その時は偶然だと思っていたが、見慣れない紋様があったからな。疑うには充分すぎる材料だ」
「なるほどな。だが分かった所で手遅れだ」
そう言うとディリックは地面の廃材を蹴り飛ばす。
密着状態では直撃は避けられない。
ディアンは当たる前に、その場から距離をとる。
しかし蹴り上げられた廃材達は地に落ちる事なく、ディアンを食らわんと群れで襲って来た。
「何だと!?」
マーキングされた上着は捨てた。
それにも関わらず物理法則を無視して廃材が迫ってくる理由。
それは一つしか考えられない。
「他にもマーキングがあったか」
見える範囲にマーキングはない。
ディアンは血の壁を生成し廃材を防ぐと叫ぶ。
「アリス!オレの体に何か紋様は付いてないか!?」
ディアンの後方にいたアリスはディアンの体を隅々まで見る。
ディアンとディリックの会話が聞こえていなかったアリスにとっては何の事だか分からない。
ただディアンが緊迫した様子故に重要な事だとは理解出来ていた。
「あった!首の後ろ側!花みたいな紋様!」
「でかした!」
マーキングの箇所は分かった。
しかし、先程とは違い体にマーキングされているという事は取り除く事が出来ないという事。
自動追尾の攻撃をさばきながら戦うしかない。
「状況は最悪か……」
ディアンが呟くと空から廃材が降ってくる。
いつのタイミングか分からないがディリックが上空に投げていたのだろう。
ディアンが間一髪の所で避けると廃材は地面に刺さり動かなくなる。
「惜しかったな。当たると思ったんだが」
自動追尾といっても一生追いかけてくる訳ではない。
今の攻撃にしてもそれまでの攻撃にしても、何かしらの障害物に当たれば追尾は止まった。
つまり、移動のエネルギーを止めてしまえば追尾はなくなるという事なのだろう。
だがそうだとしても、先の発言と今の攻撃からディリックの武器は尽きる事はないと分かる。
つまりここはディリックのテリトリー。
最初からこちらは罠に掛かった獲物だったのだ。
だが、易々と狩られる訳にはいかない。
ディアンは静かに鎌を構えるのだった。




