奇襲?
ディアンの鎌はディリックの体を裂いた。
出血もある。
だがディリックはダメージを負った様子を微塵も感じさせなかった。
「わざとくらったな?」
ディアンの発言にディリックは口角を上げて反応する。
ディリックは致命傷にならないように攻撃を受ける直前に後ろに飛んだのだ。
故に出血の割にダメージはない。
「テメェも殺す気もなかっただろうがよ」
「避けなければそれなりのダメージにはなった筈だが」
ディアンの発言にディリックはやれやれといった様子で頭を抱える。
「命の取り合いをしてるってのに甘ちゃんが過ぎるぜ。テメェのぬるい覚悟、今から変えてやる」
ディリックは羽織っていたコートの中からナイフを取り出すと、ディアン目掛けて投げ付ける。
それも一本や二本ではない。
器用に指の間にナイフを挟み、左右三本ずつのナイフをディアンに投げたのだ。
ナイフは一直線に速度を維持したままディアンへと向かっていく。
避ければアリスに当たる可能性もある。
ならばと、ディリックがナイフを取り出す動きをした際に距離をとっていたディアンは、その場にとどまり手に持った鎌で、全てのナイフを容易く弾き落とした。
だがそんな事はディリックも想定の内だった。
「ハハハハハ!まだまだいくぞぉ!」
高笑いしながら縦横無尽に走り始めると、どれだけ隠し持っているのかディリックはあらゆる方向からナイフを投げ始めた。
「隠れてろ!」
とっさにアリスに指示を出すと、ディアンは次々とナイフを弾いていった。
しかし、四方八方から飛んでくるナイフは尽きる事なく、懸命に弾き続けるも隙間を縫って飛んで来るナイフがディアンの体を抉っていった。
そしてナイフの雨が止んだ時、そこには何本もナイフが刺さり、痛々しい姿になったディアンが立っていた。
「ディアン!」
「来るな!」
悲惨な姿に思わずアリスは駆け付けようとする。
しかし心配するアリスに対してディアンは声を荒げ静止させる。
「大丈夫だ。そのまま隠れていろ」
ディアンは優しくアリスに指示するとナイフを抜き捨てる。
そしてディリックへと向き直る。
「やってくれたな」
「いい姿じゃねぇか。どうだ、殺る気は出たか?」
「少しはな」
致命傷になる箇所だけは守り抜いた。まだ戦える。
ディアンは腕から垂れる血をディリックへ向けて飛ばし、走り出す。
飛ばされた血は形を成し、無数の棘となってディリックを襲うが、ディリックもまた走り出し、棘を回避する。
「どっちがバテるか勝負といこうじゃねぇか!」
血とナイフの応酬が始まる。
互いに飛ばしてはかわし、飛ばしてはかわしてを繰り返す。
どちらも足も手も止める事はない。
このままいけばディリックのナイフが尽きるだろう、ディアンがそう思ったその時―――
「ガハッ…!」
突然背中にナイフが突き刺さった。




