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狂気の吸血鬼との邂逅②

 家に帰ると先にディアンと共に帰ってきていたユウトがいた。

 父と母はともかく、小学生のユウトも吸血鬼(ヴァンパイア)に襲われれば抵抗は出来ない。

 故にここ一ヶ月はユウトとアリスの送り迎えをディアンがしていた。

 二人の父母にも忠告はし、一人で行動する事は避けてもらっている。

 後は無事に二人が帰ってくるのを待つだけだったのだが―――

 ディアンのスマホが音を立てて震え始める。

 今回の件もあり、連絡用として買い与えられたスマホだ。


「何かあったのか」


 ディアンが急いで電話に出ると、電話越しに声が聞こえる。


「よぉ、テメェがディアンだな。オレの名はディリック。ガキの親は二人とも預かった」


 ディアンにとっては見知らぬ声。だがそいつが何処に属している相手なのかくらいすぐに分かった。


「シグマの仲間か…」


 ディアンの中には怒りが渦巻いていた。

 しかし、ここで荒立てれば相手の思う壺。

 ディアンは淡々と対応をする。


「用件は何だ」

「なぁにちょっと挨拶してぇだけだ。今から言う場所に来い、女のガキを連れてな。それと他に助けを求めるのは禁止だ。従わねぇってんなら二人は殺す」

「ふざけるな」


 ディアンは静かに怒りをあらわにするが電話越しのディリックに響く様子はない。


「もしも破れば…ギルティだ。場所は…」


 ディリックは場所を伝えるだけ伝えると一方的に電話を切る。

 アリスの父母が無事なのかさえ分からない。


「ねぇ今の電話って…」


 アリスは不安そうに質問をする。

 ディアンの様子からただ事ではない事くらい想像出来た。

 今までディアンのスマホに連絡が来た事もない。にもかかわらず突然電話が来た。

 だとすれば答えは自ずと見えてくる。


「パパかママに何かあったの…?」


 ディアンは淡々とした様子で「あぁ…」と返事をする。

 だがそれは二人に興味がないからという訳ではない事くらいアリスにもユウトにも分かっていた。

 今にも噴火しそうな怒りを押さえ付けているのだ。

 その証拠にディアンは血が滲む程、拳を握り締めている。


「必ず助ける」


 自分の不甲斐なさが招いた結果だ。

 大人だからと信頼しきっていた。

 見下している訳ではない。相手が人外の存在にもかかわらず対処出来ると思い込んでいた。

 法治国家でなら大胆な行動に出る事はないと油断していた。


「敵は、アリス、キサマも連れてこいと言っていた。父と母を助ける為だ。すまないが一緒に来てもらう」

「すまないって何よ。いつもの生意気さはどうしたのよ」


 こんな姿のディアンは見たくない。

 ディアンは生意気で、人を見下していて、暇あれば突っかかって来るべきだ。

 そんなディアンを取り戻せるなら、危険地帯に乗り込む事なんて苦ではない。


「ユウト、待っててね。ママとパパと帰ってくるから」

「…うん。皆で帰ってきてよ」


 当たり前だ。必ず皆で帰って来て日常を取り戻す。

 その為にはディアンにしっかりしてもらわないといけない。

 

「アンタもシャキッとしなさい!」


 気落ちしているディアンに対してアリスは蹴りを入れ活を注入する。


「頼りになるのはアンタしかいないんだからね!」

「…あぁ、任せろ」


 自分は守る側助ける側だと思っていた。

 なのに気持ちを立て直してもらう事になるなんて。

 だが悪い気分ではない。

 共に手を取り合い乗り越えていく。

 上下関係は契約上だけ、それ以外では同じ土俵なのだとディアンは思い知った。


「行くぞ小娘」

「アンタはそうじゃなくっちゃ」


 アリスは優しく微笑む。


「よし!ママとパパを助けるぞ!」


 もう誰かがいなくなるなんて経験したくない。

 アリスとディアンは指定された場所へと向かうのだった。


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