6.公彦はモデルの仕事をする
カメラマンのアジ子は感動していた。
今まで会ってきたモデルイケメンらの中でも比類なき美青年が、自らの撮影するカメラのフレーム収まっているという事実に。
―――それにしても全裸にバスローブ一枚で街を歩いているなんて···いや、でもこれだけイケメンなのだからそれが意外と普通なのかも······!?
アジ子のよく分からない深読みはよそに、公彦は次々にポーズを取っていた。元々が自分のルックス大好き人間(?)なのでモデルの仕事は向いていたのかもしれない。
「この服は本当に貰っても大丈夫なのですか?」
公彦は白のタキシードの襟をつまみながらアジ子に報酬の確認した。
「モチのロンよ!! むしろタキシードが貴方に貰われ着られて本望に違いないわっ!!」
アジ子は親指を立ててグッとした笑顔を見せた。
―――ふふっ···
(何だ私のルックスはやはり地上でも完璧で通用するのではないか、葵ちゃんは···ちょっと好みが特殊だったんだろう、ふふっ···だがこのカメラマンのように、やっぱり多くの者にとっては私のこの輝きは無視できないようだな······)
「おぉっと、いかんいかん、調子に乗るとまたカエルに逆戻りなんだった!!」
「えっ?」
「い、いや、こっちの話です···」
✶✶✶
葵はキスをして公彦が人の姿に変わった時、なぜ涙が出てきて彼を追い出してしまったのか自分でも感情の整理がついていなかった。
―――恥ずかしくなっちゃったのかな···
カフェテラスの入口から人が入ってくる音がして葵は振り向くと、清涼な雰囲気をただよわせた青がこちらに向かって歩いてきた。
青は昨日の黒スーツとは違い、上下淡色グレーのシャツブルゾンとボトムで見ているこちらの目まで涼しくなりそうだった。
「よぉ、葵、いつもこんなとこにいたのか」
「あ、青君この前はありがとう」
「いや、あれは男として当然の事だ、
······ところで今度のプロム大会だが、葵はどうするつもりなんだ?」
「え? どうするっていうのは···?」
「···つまり···一緒に行く人間はいたり···するのか?」
「え、いないけど······」
―――聞かれたくなかった質問だよ···!
「そ、そうか···なら、俺と一緒にどうだ」
「え、一緒って···どういう···、
とゆうか私、ドレスとか持ってないし、一緒にいたらきっと青君に迷惑がかかるよ」
「そんな事を気に····、
ん? ちょっと待て、確か···学園にはドレス補助もあったはずだ」
「そ、そんなのあったっけ···?」
「あぁ、間違いない、ここの生徒は補助を使わないから知られていないが、俺は役員だから覚えている」
―――私は補助を使いまくりなのに覚えてなかったし···
「じゃ俺と一緒にドレスも買いに行くか?」
「え···? う、うん···」
「ちょうど明日土曜日だな、昼の十二時に百貨店の前に集合だ」
「うん···わ、わかった」
「よし」
約束を取り付けると青は爽然と去っていった。
―――青君ってすごく親切な人なのかな
葵がそう心の中でドギマギしていると顔を曇らせた令嬢の集団がツカツカと入ってきて、葵の周りを取り囲んだ。
「ちょっとあなた!!」
「え、な、何ですか···!?」
学園に来てこれだけの人に話し掛けられたのは葵にとっては今日が始めてだった。
「あなた青様によくしてもらっているみたいね」
「皆さんは一体···?」
「私達は、青様担会よ!!」
「―――何が青君よ、庶民ごときが馴れ馴れしいのよ!!」
「―――あなたのようなドレスも買えない庶民が何を勘違いしているの!!」
「―――青様担会に入会してきちんと順番待ちをしてから青様とお話するのがルールでしょ? お分かりにならないの!?」
―――ひどいな···!
「そ、それは知りませんでした、皆様申し訳ありませんでした」
「青様はあなたのような立場の弱い者を見ると、つい手を差し伸べてしまう心のお優しい方なの!! 決してあなたに興味があるなどと勘違いなさらないように!!」
「―――これは決してデートなんかでは無いの!!」
「―――青様はボランティアが好きなだけなのよ!!」
「―――そこをしっかり心に留めておきなさい!!」
「明日は青様のお心を煩わせない為にも私達があなたを一日中監視しているから覚悟なさい」
「は、はい···」




