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幻想奇譚

その喫茶、幻想怪奇につき

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

そーいや此奴、甘党だったなー。

飴ちゃん、いっつも持ち歩いていたなー。

此奴が主人公の小説も書いたなー。


『甘党なのには訳がある。だって此奴は――』


というのを思い出し、読み直しました。

骨董品店の主と知り合いだと良いと思います。

あの純喫茶を発見致しましたのは、本当に偶然。別のメルヘンな喫茶店を探して居た時に、暖簾が目に入ったのです。○○○○……と。故に私は夢見るメルヘンな純喫茶の事を、ころりと忘れ、誘われる様に足を運びました。

タイル状の階段をゆっくり、ゆっくり降りますと、二枚重ねの硝子扉が。ほんのりと漂う灰色の空気が、別世界を醸しておいでです。それは勿論、内装から。

今まで幾つか純喫茶を訪れて参りましたが、その中でも最も歴史を感じさせる内装。昭和文学を連想させる様な空気。

「お煙草は吸われますか?」

「いいえ」

そう申し上げると、禁煙の小部屋へと案内して下さいました。灰の空気には慣れて帯びますので、是非喫煙の小部屋で。という我儘を飲み込みます。すると先客がお一人。

真っ白な長髪を背に垂らし、前髪もそれに倣って目元を覆っていらっしゃいます。蒼と緑の中間の様な書生服姿で考え事をなさっている姿に、見覚えが御座います。

「水族館の……タチウオの書生様」

「おや、一年前のお嬢さんじゃないか。良ければ此方へおいで」

あの水族館でお会いした時の姿を忘れません。いいえ、忘れる事を許さない様な余りにも特徴のある御姿なのです。忘れた。などと申し上げたら、それこそ失礼と言うもの。

目の前の椅子にちょこんと腰掛けると、大分文字で埋まった原稿用紙が。どうやらお仕事の最中だった様です。

「あの……お邪魔では御座いませんか?」

「良いんだよ。話していた方が進むしね」

そう仰ると、私にメニューをお渡しになって下さいました。お飲み物系統は文字でこってりと、洋菓子系統は手書きで柔らかく描かれております。どれにしようか迷ってしまいます。

そう、一人でソワソワとしておりますと、書生様から一言。

「僕のオススメはねー、店名ブレンドとチーズケーキ。ブレンドは苦味の中に果実の様な甘さがある。凄くフルーティー。チーズケーキは酸味強めで後味スッキリ。どうだい?」

そう、初めてお会いした時の様に、お口を三日月に吊り上げて勧めて下さいます。ですので勿論、私は店名ブレンドとチーズケーキを戴く事に致しました。

注文を済ませた後、書生様は何か思い付かれたのか、サラサラと万年筆を動かし始めます。紙とペンが擦れる音、インキの匂い、そうして換気扇のブゥゥゥンとした唸り声。

するりと内装を眺めると、仄暗く汚れた土壁。疎らに並んだ骨董品が、私達の様子を観察する様に也を潜めております。何か一つ動いても、私は驚きは致しません。

大変失礼ながら、何処か幻想怪奇的……なのです。江戸川乱歩先生や、夢野久作先生が描いた世界観に迷い込んだかの如く。

「お嬢さん、僕ぁこの喫茶店が一番好きさ。なんせドグラ・マグラの一説を浮かべるからね」

「あぁ、あの『ブゥゥゥ……ン』から始まる三大奇書の。私も同じ事を連想したばかりで御座います」

「おや、読了済みかい?」

「いいえ。まだ……」

ネット上に上げられた、短編小説を幾つか目を通したばかりで御座います。

「良ければ読んで欲しい。そうしてまた此処で語り合おう。そうして一緒に、振り子時計の設置を願おうでは無いか」

書生様は揶揄う様に口角をお上げになると、物静かに佇む店員さんが。今のお話を聞いてご不快に思われてはいないでしょうか? そう、私の不安を遮る様に、丁寧に珈琲とチーズケーキをテーブル上に乗せて下さいます。

「どうかな?」

一口含むと先ずは珈琲特有の苦味。けれども幾度か口で転がすと、果実のような甘さが口に広がります。謳い文句の通り、苦さの中に甘みがある。そんな珈琲で御座います。

扇形の先にフォークを差し込んで、チーズケーキを口に運びます。レアチーズ特有の柔らかさから、キレのある酸味が。下に引かれクッキー生地。荒く砕かれた故に、ほろり口に転がります。

「珈琲を甘いと感じたのは此処が初めてで御座います。チーズケーキの生地……ほろほろですね。初めて戴いた筈なのに、何処か懐かしく感じます」

「ふふふ。そうだろう。僕はあんまり珈琲が得意じゃなくてね。なんせ甘党だから。でも友達に勧められて、頼んだらハマってしまってね。果実のような甘さが癖になる。まるで蜜のように」

そう仰ってすっと此方に身を乗り出しました。ちろりと舌なめずりをした際に見えた犬歯が、人より長いと感じたのは気の所為で御座いましょう。


オマケ

「来るのが遅いのではないかな? 君が来るまでの間、二人の可愛いお嬢さんに相手をして貰ったよ」

「そう急かすなよ。蚤の市は大変なんだ。何せ暇を持て余した古美術達が総じて騒ぎ立てるモンだから。ん……。お前は甘党ではなかったのかい?」

「此処の珈琲は例外なのさ。……というか、君が勧めたのだろう? 果実のような味がする。と」

あの喫茶店をどう表現するか。と聞かれれば、どう頑張っても幻想怪奇という言葉に集約されると。


江戸川乱歩氏、夢野久作氏が此処で物を書いていたと言っても、信じる空気感なので。


褒めてなさそうに感じるかと思いますが、褒めてます。

今どきそんな空気、何処へ行っても吸えないので。

貴重なので、末永く。せめて私が亡くなるまでの愛だ……何卒……!!


━少し脱線を、この書生の話。

えーっと、私が一番最初に此奴と会った時の反応。

『お前は誰だ』

かなり威嚇混じりの低音で言ってます。

いや、余りにも目立った格好なので、自分らしくない。という意味を込めて。


※初登場は幻想奇譚のタチウオの話。


属性は盛り丼です。外見だけでなく中身も。

ヒントになるかは分かりませんが、

目を隠すところ。

地下を好むところ。

※日光当たらないら場所では、前髪上げたい。

犬歯が長いところ。

です。


また会わせたくなったんです。此奴と渡を。

如何せん、親和性が高かったもので。


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