第二十七話 瞬殺
滝の前に、ラフコーラチームはいた。
ランディ達は茂みからラフコーラチームを覗く。俺とテオとエイトはランディ達より距離を取った木影から覗き見していた。
「えっとぉ、つまり、ラフコーラちゃんにランディ君達を倒してもらうってこと?」
「そういうこと」
「ふん。ラフコーラにそこまでの力があるとは思えんがな」
テオは俺の案に不服そうだ。
「まぁ見てろって」
空はもう晴れている。
ラフコーラチームは食事をしている。ハイネとピースクリフは同じ場所で食べているが、ラフコーラだけ2人から距離を取って食べている。
ランディ達はラフコーラのいる方につま先を向けた。
「……孤立しているラフコーラを狙う気だな」
ランディが右手を上げ……下ろす。同時に、9人の集団が木影から飛び出す。
「「「リヴルド!!」」」
ランディ達が姿を現したのを見て、ラフコーラは口元をハンカチで拭きながら立ち上がる。
「リヴルド」
ラフコーラは護法魔導書を出す。
「風錬成……!」
「水錬成!」
「……土錬成」
「炎錬成ッ!!」
ランディ達から放たれる旋風、水塵、岩石、火炎。
(馬鹿だな、アイツら)
9人共、距離をあまり離さずに、固まって出て行った。
あれじゃ、一撃で終わるだろう。
ラフコーラはゆっくりと、唇を動かす。
「雷錬成」
ゴォン!!! と轟音が鳴り、雷光が走る。
――一蹴。
ラフコーラが放った雷はランディ達の魔法を押し返し、そして、奴らを全員残らず気絶させるだけのダメージを与えた。
「なななっ!?」
「あわわわ……!」
テオはあまりの雷の威力に腰を抜かす。エイトは開いた口が塞がらない。
(すげぇ威力。やっぱあいつ、新入生の中で頭2つぐらい抜けてやがる)
俺は木影から出て、ラフコーラの前に姿を出す。
「よう、ラフコーラ」
「下僕……」
ラフコーラは俺の方を向く。……護法魔導書を構えたまま。
「あの、ラフコーラさん? 護法魔導書を消してくれませんか?」
「いま、わたしとあなたは敵同士のはずです」
「そりゃないぜ。ピザとコーラの恩を忘れたのか?」
「……」
ラフコーラは護法魔導書を消してくれた。
「お前に話が――」
「あーっ!!!」
鼓膜を叩く声。
ツインテ女子、ハイネが俺を指さしている。
「アンタ、アンタアンタアンタ!!」
ハイネは俺に詰め寄り、人差し指を胸に当ててくる。
「なにしに来たのよ! 今さらあの時のことを謝ったって許さないんだから!」
「誰が謝るか。お前に用はねぇよ」
「はぁ? じゃあ誰に用があるのよ!?」
「ラフコーラだ」
「ラフコーラ……? なんでこんなやつと……駄目よ、ラフコーラと話すことは許可しないわ!」
「なんで、ラフコーラと話すのにテメェの許可がいるんだよ! クソガキ!」
「く、クソガキ!? 私はこのチームのリーダーよ! 私の許しなしにチームメンバーと会話することは許さないわ!」
「む? ハイネではないか」
俺とハイネの会話に割って入ってきたのはテオだ。
「て、テオドール様!?」
「ダンスパーティー以来だな」
「なんだよ、お前ら知り合いか?」
「ああ。私の父親の弟子が彼女の父親なのだ」
へぇ、妙なつながりがあるもんだな。
「ねぇ」
さらに割って入ってきたのはラフコーラチームの3人目、ピースクリフ。
長い水色の髪をしている中性的な容姿の男子。女子の制服を着ていたら女子だと間違えてしまいそうだ。
「水を差すようで悪いけど、長話なら試験が終わった後にしてくれるかな? 僕らはこれから倒した連中のカードを回収しないといけないし、カードを回収したらすぐに先へ進みたい。そこまで暇じゃないんだ」
にっこり笑顔を崩さずピースクリフは言う。
「わたしも同意見です」とラフコーラ。
「……レイヴンさん。あなたが聞きたいこともわかっています。でも今は試験に集中するべきです」
「そう、だな……」
焦る話でもないか。
「じゃあなラフコーラ。試験、頑張れよ」
「心配ご無用。あなたに言われなくても頑張りますから!」
相変わらず可愛げのないやつ。エイトを見習ってほしいものだ。
俺達はラフコーラチームと別れ、学園へ向かって歩き出す。




