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七つの迷宮  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第一章 寮振り分け試験〈シャッフルポーカー〉

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第二十五話 4日目

「降参だ。オイらの負けだよ」


 ランスはあっさりと負けを認める。


「じゃ、トランプを渡してもらおうか」

「そいつはできねぇな」

「あぁん?」

「オイらは負けたが、他はこっちの勝ちだ」


 ランスは目線を横に向ける。ランスの目線を追っていくと……、


「げっ」


 エイトはソードに、テオはアックスに取り押さえられていた。

 しまった……こいつとの戦いに集中していて、仲間のことを忘れていた。


「今回は引き分け(ドロー)にしようぜ」

「……しゃあねぇな」


 俺はランスを放す。するとエイトとテオも解放された。

 エイトとテオはこっちに帰ってくる。ランスも仲間たちの方へ帰った。


「ご、ごめん……レイヴン君」

「気にするな。俺も、お前らのことをすっかり忘れちまってたからな。俺のミスもある」

「まったくだ! 貴様がもっと連携を意識していれば、こんな醜態は晒さなかった!」


 テオ君よ……今のところ、お前まったく良い所ないぞ。

 初動でテオが魔法を外したせいでソードがフリーになり、距離を詰められた。あれはやっちゃいけないミスだ。


 しかし指摘すればへそを曲げられるだけ。言うだけ無駄どころかマイナスだ。


「いや~、楽しい戦いだった。またやろうぜ、レイヴン」


 そう言ってランスは去ろうとするが、


「待てよ」


 俺はランスを呼び止める。


「お前の名前、聞かせてくれよ」


 ランスは照れくさそうな顔をした。


「……ンス、……ト」

「は? 聞こえないぞ」

「ランスロットだ! ランスロット=ディアブロード!!」


 ランスロット、と言えば、


「あの円卓の騎士と同じ名前なのか?」


 ランスロット。

 ヨーロッパに伝わる『アーサー王物語』に出てくる円卓の騎士の1人。湖の騎士と呼ばれている、伝説の騎士の名前だ。


「あーっ! 恥ずかしい! 騎士ってガラでもないのに、こんな名前つけられて本当迷惑だぜ! オイらのこと、間違ってもランスロットって言うなよ! ランスでいいからな!」


 ランスロット=ディアブロード。

 12歳にしてはすげぇ槍さばきだったなぁ。10年後が怖いぜ。



 ◆



 ランス達との一戦の後、3キロメートルほど歩いて、野原にテントを張った。

 まだ暗くはなっていないが、体力の限界だった。

 正直、ランスとの戦いは体力も気力もかなりすり減らす結果になった。エイトやテオではなく、俺の限界がきた。


 この日、見張りをエイトとテオに任せて、俺はテントで眠った。



 4日目、天候雨。

 道に斜度がついてきた。上り坂をゆく。

 雨だから地面がぬかるんで進みにくい。


(雨の勢いが衰えない。こんな状態で他のチームに襲われたら最悪だな)


 エイトとテオは昨夜見張りをやってもらったから眠そうだ。

 今日は、あまり無理をしない方がよさそうだな。


 『休憩しよう』、そう言おうと思った時、ズル……と足を滑らせる音がした。


「きゃっ!?」


 振り向くと、後ろを歩いていたエイトが地面に転んでいた。


「大丈夫か?」


 俺はエイトに近づき、傷がないか確認する。

 テオがエイトの膝を指さし、


「膝をすりむいているな」


 エイトの膝に赤い血が滴っている。そこまで出血量は多くないけど、痛そうだな。


「だ、大丈夫だよ。先に進もう」

「無理するな。一度休憩して、手当てしよう」


 ザッ、ザッ、ザッ。と、耳に足音が飛び込んできた。


 最悪だ……。


「リヴルド!」


 俺は護法魔導書(ピカトリクス)を出すも、魔法を唱える気が起きなかった。

 なぜなら、相手の数が多すぎた。


 1チームじゃない。

 雨具を着た6人……2チーム分の人数が、俺達を取り囲んだ。

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