第二十二話 3匹の戦士 その1
「川がカーブしてる。ってことは、樹海のちょうど真ん中あたりか」
3日目の朝でようやく中央。予想よりもペースが遅いな。
この場面で『遅い』は禁句。エイトもテオも最初の頃に比べてよく歩いてくれているからな。
俺達は深い森の中へ入っていく。
「おいで。小竜」
エイトが護法魔導書からちっこい竜を出した。
オレンジ色で、牙があって、翼があって、そして――
「かわいいな」
俺は小竜の頭を撫でる。
目がぱっちりで大きい。鱗の感触も柔らかくて気持ちいい。
「いてっ!」
頬に鋭い痛みが走った。
右肩を見ると、クロウリーがくちばしで頬を強くつついてきていた。怒っている様子だ。
「あ、クロウリー君、嫉妬かなぁ?」
なんてエイトが猫なで声で言う。
「わりぃわりぃ。お前の方がかわいいぞー、クロウリー」
クロウリーの顎の下を撫でる。
クロウリーは顔をあげてカーッと嬉しそうに鳴いた。
「どうして召喚獣を出したのだ?」
「食料調達を手伝ってもらおうと思って。小鬼」
今度は小鬼を出す。
ゲームとかで見るようなゴブリンと同じで、緑の肌で俺の膝ぐらいまでの背の高さ。耳は尖っていて、目つきも悪く、まぁ不細工だ。
「――お願い、美味しそうな果物を取ってきて」
エイトが命令すると、小竜と小鬼は森の中へ進んでいった。
「召喚獣は眠らず、腹も空かず、感情もないと聞く。言われた命令をただこなすだけのロボットのような存在。奴隷として使うならうってつけだな」
「て、テオ君……そういう言い方は、あまり、好きじゃないかな……」
「うっ!」
「お前は言葉の選び方が下手だなー、テオ」
小竜と小鬼は一度召喚すると10分間この世界に存在できる。
召喚獣を召喚している間は護符紙のクールタイムは一切進まず、召喚獣が消えてからクールタイムは進みだす。小竜と小鬼のクールタイムは約40秒。
召喚獣たちは10分に果物1個ずつぐらいは運んできてくれた。俺達も森を進みながら食べられそうな物は回収し、バッグアニマルに詰め込んだ。
そうやってやりくりしつつ進んでいき、昼過ぎのこと、俺達は木々のない花畑に出た。
「綺麗……」
「美しいな。ここに画材一式があれば絵に描きたいぐらいの風景だ」
エイトとテオは花畑の中心に進んでいく。
良い景色だし、甘い香りがする。だが同時に、見晴らしがよくて鼻の利かない場所である。
「おい、お前ら。こんな開けた場所に不用意に出るな」
でもあそこまで進んだなら、もう突っ切るしかない。
俺は2人の背中を追い、花畑に出た。
その時、
「試験中に、呑気な奴らだなぁ!」
この素晴らしい空間に、ズカズカと入ってくる輩がいた。
「「「リヴルド」」」
俺達3人はすぐさま護法魔導書を出す。
敵の数は3人。全員男だ。すでに護法魔導書を持っている。しかも、全員俺と同じリヴルドネックレス、“鬼鉄の鎖環”をつけている。
「アイツら……」
「どうしたの、レイヴン君」
奴らの護法魔導書、3冊とも……護符紙が2枚しか挟まっていない。
「「「全身強化ッ!!」」」
奴らは全員、全身強化の強化をかけた。
――まずい……!
「脚力強化!」
俺は脚力を強化した後、エイトとテオを腕に抱える。
「ぬおっ!」
「きゃっ――」
その場から全力で離れる。
同時に、俺達がさっきまで立っていた場所に、奴らは拳を打ち付けていた。
俺は2人を下ろし、白鉄槍のページを開く。
「白鉄槍」
護法魔導書を槍へと変化させる。
(アイツらの護法魔導書のページ数は見た感じ100ページ前後。その内75ページを全身強化に使うとはな。3人共護符紙は2枚ずつ。ぶら下げているリヴルドネックレスが俺と同じ“鬼鉄の鎖環”だから、もう1枚の護符紙は間違いなく――武器護符紙だな)
奴らは護法魔導書をめくり、
「白鉄槍ッ!!」
「白鉄小剣……」
「白鉄斧!」
それぞれ護法魔導書を槍、短剣、斧に変化させる。それぞれランス(槍使い)、ソード(短剣使い)、アックス(斧使い)と名付けよう。
(ごりっごりの武闘派集団ってわけか!)
ランスはニヤリと笑い、
「金髪のお前、良い反応だったぞ。お前は動ける奴だ。だが……」
ランスは俺の背後の2人を交互に見る。
「足手まといを2人抱えて、オイら達に勝てるかな?」
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