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七つの迷宮  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
序章 殺人鬼の弟と殺人鬼の娘
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第一話 七つの迷宮

 27歳、春。AM8時。

 俺は自分のデスクいっぱいに捜査資料を広げていた。


 捜査資料には水着の女の子の写真が載っている。


「ふむふむ。今回の事件の容疑者は実にけしからんな……ん?」


 捜査資料をめくっていると、紙同士がくっついて中が見えないページがあった。袋とじというやつだ。


「まったく、誰だ? 捜査資料にいたずらをしたのは……」


 俺がハサミで袋とじを切ろうとすると、


「あの、ブレイヴ先輩」


 後輩の女捜査官に声を掛けられた。彼女は冷ややかな瞳で俺を見下ろしている。


「堂々とオフィスでエッチな本を見るのやめてくれますか? FBIの自覚あります?」

「エッチな本じゃない。捜査資料だ」

「その言い訳は聞き飽きました。いいからしまってください」

「はいはい」


 仕方ない、帰った後の楽しみにとっておこう。


「それと、ボスがブレイヴ先輩をお呼びです」

「新しい任務かな。ボスはどこに?」

「特別会議室です」

「……マジで?」


 特別会議室は(おも)に極秘ミッションの打ち合わせに使う。

 極秘ミッションはまぁ、大抵潜入捜査で、潜入捜査ってのは至極(しごく)面倒な部類の任務なわけでして、


「ドンマイです。ブレイヴ先輩」

「勘弁してくれよ……」


 しかし、俺が潜入捜査に抜擢(ばってき)されるわけがないよな。俺は潜入捜査には不向きのはずだ。軽い有名人だからな。でもなぁ、潜入捜査じゃなくても、極秘のミッションなんてロクなモンないよなぁ。


 俺は重い足取りで特別会議室に向かった。



---



 特別会議室の前で、拳銃や金属類、電子機器を含め衣類以外の全てを外し、会議室の中に繋がっているボックスへ入れる。

 それから扉の前にある足形に自分の足を合わせる。すると赤いセンサーが俺を透視し、怪しい物を隠していないかを調べる。


「毎度毎度、面倒だなぁ……」


 問題なし。と判断されたところで、ボスが中から鍵を開けてくれた。


 特別会議室の中で話すことは全て極秘扱い。FBIの仲間にも勝手に漏らしてはいけない。

 特別会議室に盗聴器などを仕掛けられないために厳重にセキュリティを固めているわけだ。


 俺は特別会議室の中に入る。


「ブレイヴ=オストリッチ捜査官、ただいま参上しました」

「ああ、ご苦労」


 部屋に入った後、ボックスに入った自分の持ち物を回収する。


 ボスはコーヒーを飲みながら、会議室の椅子に座っている。


 いやぁ、しかし、いつ見ても美人だな。

 ボスは黒髪で、クールな美人さんだ。胸大きい、腰回り細い、尻大きい。めちゃくちゃ俺のタイプである。


 特別会議室にはボスと俺以外誰もいない。

 ボスと2人きりか。最高だね。この時間がずっと続けばいいのに。


「なにを呆けている? 近くに来い」

「はいはーい! いま行きまーす!」


 ボスの近くに行くにつれ、ふわりと甘いシャンプーの香りが漂ってきた。どこか妖艶な香りだ。ボス自身の色気も相まって理性が吹っ飛びそうだ。


 いかんいかん、気をしっかり保て。


 ボスの近くに行くと、ボスは早速話を始めた。


「……ブレイヴ。お前は『七つの迷宮』については詳しいな?」

「そりゃ、俺も『第七迷宮』には関わってますからね」


 『七つの迷宮』とはFBIが解決できず、迷宮入りした七つの連続殺人事件のこと。FBIにとって永遠の汚点である。

 『第七迷宮』は兄貴の起こした一連の事件のことだ。

 

「どれもこれもFBIの捜査力をもってして解決できなかった連続殺人事件だ。ある者は取り囲まれた場所から忽然と消え、ある者は百の顔を持ち、ある者は一瞬でビルを燃やし尽くした。『七つの迷宮』の犯人たちを魔法使いと呼ぶ者もいる」

「魔法使いなんているわけがない。少なくとも、兄貴は魔法使いじゃなかったですよ」


 嘲笑交じりに俺は言う。


「あれらはもう()()()()事件でしょう? まさかとは思いますが、今さらほじくり返す気ですか?」

「そのまさかだ。お前には第三迷宮を解決してもらう」

「第三迷宮って……中学生の少女が狙われた連続殺人事件ですよね。被害者の数は459人。内訳は12歳276人、13歳102人、14歳81人。そんで、どんな手を使ったかわからないが、被害者は全員、裸で全身の血を抜かれた姿で発見された。ド級にグロいやつじゃないですか」

「さすがの記憶力だな……」

「犯人は男って情報しか掴めてなかったはずです。もう30年前の事件だ、現場も保存できてないし、今更解決するのは無理でしょう」

「それがな、ここにきてやつの犯行が再開したのだ」

「はい?」


 いや、それはおかしい。あんな大事件が再開したのなら俺の耳に入らないはずがない――


「場所はどこですか?」

「キーハート魔法学園だ」

「そうですか。キーハートまほ……なんですと?」


 聞き間違いだろうか。

 いま、ボスが『魔法学園』と言ったように聞こえた。



「キーハート魔法学園だ」



 聞き間違いじゃなかったようだ。


「魔法学園? 魔法って、あの魔法ですか? ハリー・ポッ〇―的な?」

「そうだ。お前には魔法で子供になってもらい、学生としてキーハート魔法学園に潜入してもらう。魔法学園の生徒として魔法のことを学びつつ捜査を進め、第三迷宮の犯人『吸血魔アルヴィス』を捕えてくれ。今回のミッションはお前1人で遂行してもらうことになる。厳しいミッションになると思うが……頑張れ」


 いったい何を言ってるんだこの人は……。

 魔法? 

 学生として潜入?

 過労でぶっ壊れたか? 息抜きにデートに誘うべきだろうか……。


「まぁ、その反応は無理もない。私もはじめて上層部にこの話をされた時は同じ反応をした。だが、彼女を見て魔法がファンタジーのものじゃないと知った」


 ボスはリモコンを操作し、遠隔で会議室の扉を開く。


「入ってくれ」


 ボスが声をかけると、


「失礼します」


 部屋に入ってきたのは銀髪の女子だ。身長は140cmってところか。左目の泣きぼくろが特徴的だ。

 顔立ちは整っていて肌も綺麗だ。ジュニアモデルかなにかだろうか?


 少女は俺を見上げ、小さな口を開く。


「どうもこんにちは。キーハート魔法学園、学園長代理のラフコーラです」

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