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七つの迷宮  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
序章 殺人鬼の弟と殺人鬼の娘
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プロローグ 殺人鬼の弟

 俺の兄貴は殺人鬼だ。


 兄貴が殺人鬼だと知ったのは12歳の時だ。

 休みの日。友達の家から自宅に帰ると、自宅が燃えていた。父さんと母さんの叫び声が聞こえた。俺は危険だとわかっていながら、家に飛び込んだ。


 結果、両親は助けられず、俺は首元に火傷(やけど)()った。


 誰が家に火をつけたのだろうか? 見当たらないが、兄は無事なのだろうか?

 2つの疑問は歳のいったFBIの人間が解決してくれた。


「君の家に火をつけたのは、君の兄だ。現在我々が追跡している」


 兄貴は穏やかで、暴力1つ振るったことがなさそうな人だった。両親との仲も良かった。なのにどうして――

 この疑問が解決されぬまま、さらなる衝撃な事実が知らされる。


 この国、アメリカ各地で(おこな)われていた無差別放火魔事件というものがある。被害者の数が5000に及ぶ全米に恐怖を与えた信じられないこの事件の犯人が、兄貴だったことが判明した。燃えた俺の家から大量の証拠品が出てきたのだ。


 それから、俺は地獄の日々を味わうこととなった。


 殺人鬼の弟という称号を背負った俺はアメリカ中の人間から否定された。


 俺はなにもしていない。なのにカメラは俺に向けられた。

 俺はなにもしていない。なのに親戚は誰も目を合わせない。

 俺はなにもしていない。なのに友達はいなくなった。

 俺はなにもしていない。なのに殺されかけたこともある。


 俺が向かう場所には必ず記者が張り付いており、心休まる場所はなかった。

 両親の葬式は罵声と陰口で溢れた。

 俺の兄貴が殺人鬼だとわかった瞬間、親友は俺をいじめだした。

 兄貴に身内を殺された人間が、兄貴への復讐心を俺に向けてきた。

 このままでは俺の人生に光はないと思った。


 だから俺はFBIを目指すことにした。


 自己防衛のためだ。

 FBIを(こころざ)す俺を見た人間は(みな)同じことを思う。


『殺人鬼の兄を捕まえるためにFBIを目指しているのか』と。


 周囲の印象がガラリと変わった。

 『悪魔の弟』から『悪魔を打ち倒す悲劇のヒーロー』に称号が変わった。


 皆さんには悪いが、俺は兄貴を捕まえようとは思っていない。

 兄貴を見つけたら殺してやりたいとは思うが、躍起(やっき)になって見つけようと思うほどの熱はなかった。FBIでも捕まえられない相手、そんな相手を追い求める人生なんてつまらないだろ。てか、これ以上俺の人生を兄貴のために使うのなんかごめんだった。俺は余生を楽しく過ごしたいだけだ。


 俺は23歳でFBIになった。その頃にはもう、世間は俺に関心を抱いていなかった。

 なんだかFBIになった意味ないなぁ……1年ぐらいでやめるか。とも思ったのだが、俺の配属されたチームのボスがいい女だったから4年間(つと)めた。


 現在、この俺ブレイヴ=オストリッチは27歳。

 女とゲームが好きな健全な男の子になった。


 そうそう、現在兄貴の事件がどうなったかと言うと、どうにもならなかった。

 兄貴は、まるで()()()()使()()()()()()()足跡を消し、完全にFBIの手から(のが)れた。捜査は打ち切り、迷宮入りというやつだ。


 ちなみにFBIでは解決できなかった連続殺人事件を『迷宮』と呼んでいる。

 これまでFBIが解決できなかった連続殺人事件は6つ、これに兄貴の件を合わせて、迷宮は7つ。



 これを総称して、『(なな)つの迷宮(めいきゅう)』と呼ぶ。



 俺にとって『七つの迷宮』なんざどうだってよかった。けど、ある少女に会ってしまったせいでそういうわけにもいかなくなる。

 そんなわけで、この物語は俺とアイツとの出会いから始まる。殺人鬼の兄を持つ俺と、殺人鬼の父を持つ彼女との出会いから――

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