第六話 奈落の攻略
【バフ盛り料理】でドーピングした私たちは、奈落の奥へ進んでいく。
光り輝く鉱石の結晶がそこかしこに生えているから、視界は良好。
結構速いペースでも、問題なく進めている。
「グシュウウウゥゥゥ」
私たちの前に現れたのは、ウナギとヒルの中間みたいな細長い化け物。
大量の牙が並んだ不気味な口からは、そいつの呼吸に合わせてヤバそうな煙が噴き出ている。
「こいつは強酸ウナギっていうA+ランクの魔物だよ。レベルは76と低めなほうだね」
「あからさまに酸がヤバそうな名前してるね」
「口から酸を吐くから気を付けてね。ピラニア濃硫酸よりもよく溶けるよ」
「それは怖いなぁ。まあ、喰らうつもりはないけど」
それはイリスちゃんも同じようで。
「フォーメーションBでいくよ」
「りょーかい!」
イリスちゃんが駆け出す。
ウナギがイリスちゃんのほうに頭を向けた。
よしよし。フォーメーションBの第一段階、「イリスちゃんがヘイトを稼ぐ」は成功だね。
今のうちに私はウナギの側面に回り込む。
「雷撃砲!」
「グギャアア!?」
ウナギの口の中に、イリスちゃんの撃った雷の砲撃が炸裂!
ウナギはたまらず悲鳴を上げる。
口から酸の涎が流れ落ち、地面が溶けた。
「今だよ!」
「任せて!」
ウナギの頭部に連撃を叩き込む。
ウナギはヤケクソになって暴れるが、私は冷静に捌いて反撃する。
「グシャ……」
連撃を浴びせたら、すぐにウナギは息絶えた。
「ドロップアイテムはウナギ肉か……。これって食べられるの?」
「野生の強酸ウナギの身は染み込んだ酸のせいで食えたもんじゃないみたいだけど、ダンジョン産なら問題ないみたいだよ。とても美味なんだって」
「じゃあ、今度かば焼きにしてあげるね」
「楽しみにしておくよ」
ウナギ肉を仕舞った私たちは、下層へ続く階段を見つけて下へ下へと進んでいく。
出会う魔物を危なげなく狩りながら、今日一日でディアブル大迷宮の八十三階層相当の深さまで進むことができた。
「この辺は魔物がいないから、今日はここで野営にしようか」
比較的魔物の少ない安全なポイントを見つけた私は、【収納】の中から今日の夜ご飯を取り出す。
それと同時に、辺りに芳醇な香りが広がった。
「じゃじゃ~ん! ボロネーゼパスタだよ! あと、ミネストローネスープ!」
「よっ! 待ってました!」
セッティングした簡易テーブルの上に、熱々のボロネーゼパスタとミネストローネスープを置く。
お好みで粉チーズとパセリの粉末をかける。
私はチーズ大好き星人だから、これでもかってくらい粉チーズを振りかけたよ。
「ひき肉が噛み応えがあっていいね」
「でしょ~」
炒める時に細かくしすぎないことによって、しっかりとした触感と噛み応えを残した牛ひき肉。
噛みしめるごとに旨みがあふれ、遅れてセロリや玉ねぎ、ニンジン、ニンニクといった香味野菜の香ばしい香りと旨みがやってくる。
「後味にピリッと来る辛さがたまらないね」
唐辛子は、切れば切るほど辛みが増す。
ちょうどよく細かく切った赤唐辛子をボロネーゼの中に混ぜたことで、後から来るピリッとした辛さがいい感じのアクセントになっている。
「イリスちゃんはどれくらいの辛さが好みなの?」
「これくらいの少しピリッと来る辛さが一番好きだよ」
「そうなんだ。私と一緒だね」
「シズちゃんもこれくらいの辛さが好きなんだね」
「うん。昔は辛いの苦手だったけど、今は少し辛いくらいが一番好き」
少し芯を残して固めに茹でたパスタと一緒にボロネーゼを食べる。
やっぱりこの組み合わせ最高!
「ミネストローネスープもおいしいよ。素材の味が前面に押し出されててさ」
スープは濃すぎず薄すぎず、ちょうどいい塩梅に収まっている。
飲んだ時に口の中に広がるトマトの風味がたまらないよ。
「優しい味だね。まるでシズちゃんの優しさがスープに溶け込んでるみたいに」
「そんなに褒められたって嬉しくねーぞ、コノヤロー」
「じゃあ褒めなーい」
「も~、イリスちゃんの意地悪。もっと褒めてよ」
ダンジョン内はかなり涼しい。夜なんかはちょっと寒いくらいだ。
出来立てのイタリア料理で体が温もった私たちは、交代で見張りをしながら夜を過ごす。
三回くらい魔物の襲撃があったけど、それ以外は特に問題なかった。
翌朝。昨夜のボロネーゼパスタとレタスをパンに挟んだボロネーゼサンドと、サラダで朝食を済ませた私たちは、今日も今日とて奈落の中を突き進む。
「キーッ!」
「焼却砲!」
「ゲバゲバァッ!」
「流水〇砕拳!」
「ピヒャアアアアアアァァァアア!」
「稲妻フィスト!」
全身目玉だらけのでっかいコウモリや、三つ首のライオン、虹色に光り輝く奇怪な鳥などの魔物を倒しながら、私たちは下層へ降りていく。
さすが奈落なだけあって、けったいな魔物がわんさかいることいること……。
さっきからひっきりなしに戦う羽目になっている。
「次は人間の顔が生えたキリンか……」
「ホントに変なのばっかだね」
キリンが首を鞭のように振るう。
私たちはそれをジャンプで躱す。
「水流撃!」
キリンの背中に着地した私は、その場でパンチを放つ。
キリンの背中がへこみ、骨の折れる音が鳴り響く。
耐えきれずに地面にへたり込む。
「グウェェェェェ!?」
人間の顔の表情を歪ませて悲鳴を上げるキリン。
「チェックメイト!」
イリスちゃんの掌がキリンの顔面に触れた瞬間、顔面爆発が起こった。
首から上が吹き飛んだキリンがその場に倒れ、すぐに消えた。
「今回はドロップアイテムはナシか……」
「運が悪かったね。次行こ、次」
私たちは次々と魔物を屠りながら突き進む。
そして、数日後。
私たちは、とうとう九十九階層に当たる階層までやってきた。
ダンジョン内が広すぎるせいで、結構な時間がかかっちゃったよ。
「変態転生者が残した手記によると、この先に中ボスがいるそうだよ」
私は目の前の地面に描かれた、巨大な魔法陣に目を向けた。
「これに乗るんだよね?」
「うん。この魔法陣で合ってるって、変態転生者の手記にも書かれてる。転移の魔法陣だって」
イリスちゃんが魔法陣の上に乗る。
私は慌ててそのあとを追いかけた。
「じゃあ、行くよ」
「う、うん!」
イリスちゃんが魔法陣に魔力を流すと、魔法が起動して私たちの視界が光に包まれる。
次に目を開くと、私たちは広い空間に立っていた。
部屋の奥にディアブル大迷宮に転移できる魔法陣があるが、私たちはその手前にいる魔物に目が釘付けになった。
なんせ、転生してから初めて見る“ドラゴン”が鎮座していたのだから――
「誰だよ、この先にいるのは中ボスって言ったやつ! どう見てもラスボスじゃんありがとうございました」
「中ボスって言ったの君だよ、イリスちゃん……」
次回は本格的なガチバトル回です。明日の朝一番から迫力がありつつスピード感もあるバトルをするのでお楽しみに。
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