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第三十六話 ラストバトル

「「俺(僕)たちは一心同体だ。連携奥儀――兄弟合体!!」



 この日、この時。最強の兄弟が誕生した。



 ゴシュウウゥゥゥッ!


 煙が晴れる。

 中から一人の男が出てきた。


 ベースはヴァイスだが、体に鱗が生えて右腕は禍々しくなっている。

 ヴァイスの頭からは金髪が生え、瞳の数が三つになっていた。



「これが俺たちの連携奥儀、兄弟合体だ!」


 ヴァイスが叫ぶ。


『僕と兄ちゃんの絆の力で、さっきまでよりも強くなったよ』


 ヴァイスの中から、ウィルの声が響いた。

 体の主導権がヴァイスで、ウィルは特定のスキルの使用を担当する。

 それがこの形態だ。



「ふぅー」


 ヴァイスが大きく息を吐いた。


「いくぜ。第二ラウンドだ」


 ヴァイスが地を蹴る!


 弾丸のごとくシズたちに迫るヴァイス。

 これまでとは比べ物にならない速さだ。


『【黒炎】!』


 ヴァイスの腕を黒い炎が包み込む。

 攻撃力の底上げが目的のウィルの魔法だ。


「せい! ハッ! オラ!」


 肉薄したヴァイスが炎の凶爪を振るう。


 何度も何度も。


「よっ!」


「とっ!」


「まだまだまだまだまだ!!!」


 ギリギリのところで躱すシズとイリス。


 躱されるたびに再び距離を詰めるヴァイス。


 その凶爪が何度も振るわれる!


「オラッ!」


 縦に振るわれた凶爪が、地面を穿つ。


「「連携奥儀――」」


 大振りで振るわれた一撃。

 攻撃後のほんのわずかな隙をつく、シズとイリスの連携奥儀。


 二人が拳を構えた瞬間――


時間(とき)の魔眼!』


 ヴァイスの後隙を補うように、ウィルが魔眼を使った。


 その瞳がシズたちに向けられ、二人がほんのわずかに硬直する。


「最高だぜ、ウィル!」


 ヴァイスが叩きつけた凶爪を引き戻す。

 爪の先がイリスを捉えた。


『【次元(ディメンション)(スラッシュ)】!』


 ヴァイスが腕を振るのに合わせて、ウィルの空間魔法が発動!


 凶爪の動きに合わせて、空間が歪み、断たれる。


 発動速度や射程、攻撃範囲がぶっ壊れな分、攻撃力が低めという弱点がある【次元(ディメンション)(スラッシュ)】。

 だが、兄弟合体によってその弱点も克服されたようで。


 ガギィィィンッ!


 甲高い金属音が響き渡った。


『今ならゴーレムのお姉さんにも攻撃を通せるよ。一発じゃ致命傷とまではいかないけど』


 ガードしたイリスの腕の表面が、抉りとられていた。



「水流撃!」


 衝撃で後方に飛ばされたイリス。

 その横を駆け抜けたシズが、水をまとった拳でヴァイスに迫る。



(あと少し。ほんの少しで届く! 今ならダメージを与えられる!)



 シズの左手の薬指がキラリと輝く。

 そこには銀色のきれいな指輪がはめられていた。



(【身体強化】がない私のためにイリスちゃんが作ってくれたこの一品。この指輪に魔力を流せば……私でも【身体強化】が使える! まだ試作品段階だから拳から腕までしか強化できないけど、今はそれで充分! ヴァイスにダメージさえ通せればそれでいい!)


 このダンジョンに入る直前に、もしもの時のためにとイリスから渡された指輪。

 シズがそれに魔力を込める!


 ちなみにシズはしっかり者のように見えるけど、その実ちょっと天然だったり抜けているところがある。

 故にイリスがわざわざ指輪型にして、シズの左手の薬指に装備させた理由に気づいていない。

 作った本人は、シズが気づいていないことにかなりがっかりしてた。



「さっきまでとは攻撃力が段違いだな。だが!」


『空間魔法、【座標操作】!』


 ウィルが新しい魔法を唱える。


 直後、シズの目の前には()()()()()()



「「え!?」」


 素っ頓狂な声を上げたシズとフレイ。


(ちょ!? ヤバ――)


 【身体強化】の指輪の効果を解除する。

 とっさにパンチの威力を落としたシズだが、もう遅い。


 状況を理解できていないフレイのアホ面にシズの拳がめり込み、


「うぐほぉぁああああああ!?」


 フレイが悲鳴を上げながら吹き飛んでいき、ダンジョンの壁に激突した。


「な、なんかごめん……」


 謝るシズだったが、フレイにそれが届くことはなかった。

 気絶しちゃったから。


 ヴァイスの呪い(ギフト)によって、ソシャゲでやったら超絶クレームが来ること間違いなしの超大幅下方修正されたフレイ。

 彼にとっては、威力を落としたシズのパンチですら超強力な一撃だったようだ。



『お姉さんたちを殴り合わせたくはなかったから、入れ替わるのは赤い髪の男の人にしておいたよ』


 さっきまでフレイがいた位置に立つヴァイスから、ウィルが話しかけた。


「気遣いありがと。でも、先に言ってほしかったなって。もうちょっとで一応幼馴染の人殴り殺しちゃうところだったんだけど……」


『じゃあ、次はあらかじめ言ってからにするね。入れ替えるのはあの硬そうな人でいい?』


 ウィルは体の主導権がないから指差すことができない。

 ヴァイスが素早くグレンを指差した。


「できれば使わないでもらって」


『わかった。お姉さんがそう言うなら使わないことにする』


「ウィルのそういう優しいところが俺は大好きだぜ!」


『えへへ』


 念話越しにウィルの照れた声が聞こえてきた。



「次で最終ラウンドといこうか」


『あまりお姉さんたちは傷つけたくないからね。【次元(ディメンション)(スラッシュ)】!』


 再び空間が断たれる。


 が、腕の軌道やヴァイスの目線から攻撃を先読みしたシズたちには当たらない。


「ドラゴンブレス・カノン!」


 イリスが攻撃を躱しながら、光線を連射する。


 だが、ヴァイスは三つの瞳ですべての光線を捉え、的確な判断で躱す。


 その一進一退の攻防を動かしたのはシズだった。


「えいっ! はいっ! たっ!」


 横から回り込んだシズが、指輪に魔力を流し連撃を繰り出す!


 その体捌きに加え、無駄のない連撃。

 【身体強化】で威力が上がったそれは、今のヴァイスにも充分通用する!



(ぐ……! 一発一発が重いだけじゃねェ! 俺の【筋肉の鎧】とウィルの【竜鱗(りゅうりん)】があるっつーのに、それを貫通してくる! 拳にまとった水に秘密でもあるのか? 衝撃波系の攻撃か?)


 ヴァイスがシズの猛攻を受け止めながら、思考する。


 パワーアップしたヴァイスたちにシズがダメージを与えられる理由。

 それは【身体強化】のおかげでもあるが、一番はヴァイスの考察通りシズの拳をまとう水にある。



 フレイたちに外れスキルだと罵られた【水生成】。

 飲み水の確保などに使われるスキルは、拳にまとったところでほとんど意味はない。

 攻撃時に拳に入るダメージがほんの少し軽減するくらいだ。

 あとは見た目が派手だったり、水〇呼吸の真似ができる(一度に出せる水量の制限のせいでショボい)くらいか。



 この熾烈を極める命をかけた戦いで、シズはとうとう【水生成】を昇華することに成功した。

 それは外れスキルと言われた悔しさか。

 どうにか攻撃に使えないかと、無理だとわかってなおあきらめずに使い続けたシズの【水生成】。


 その努力が実を結んだ瞬間、一つの派生スキルが生まれた。



 この世でシズしか使えない、女神の贈り物(ギフト)でもない、彼女の固有(オリジナル)スキル。

 努力の末に掴み取った、世界でたった一つしかない彼女だけのスキルを!



(ぐぅ……! 威力だけじゃねェ! 攻撃の速度も上がってる! この状況でなお、成長し続けている! ……やっぱ凄ェよ、お前は)

(だね、兄ちゃん。……それでも僕たちは負けられない。勝たなくちゃいけない)

(だな)



 シズの超連撃が容赦なくヴァイスを襲う!


『【凶化】! 【黒炎】!』


 ヴァイスの右腕が肥大化する。

 禍々しいオーラと黒き炎が、ヴァイスの右腕を包む!



「ウィルと!」


『兄ちゃんの!』


「『スキルを発動した本気の一撃だ!!』」



 ヴァイスがその右腕で、神速のパンチを繰り出す。

 これまでのどの攻撃よりも強い一撃。


 シズでは絶対に対抗できない。

 だが、それはほんの数刻前までの話だ。

 固有(オリジナル)スキルを得るまでに至った今のシズなら――



「これが私の、私にしかできない武術だ!」



 空中に大きな水球が発生。

 蒼く美しい水がシズの右腕に寄り添い、神々しい龍の姿を模す。

 宝石のように美しい神秘的なスキルだった。

 



「【龍蒼拳(りゅうそうけん)】。これが私の編み出した、私だけのスキルだよ。覚悟してね」




 竜が(アギト)を開き、ヴァイスの拳に牙を()く!



 ヴァイスの拳とシズの拳が激突!


 衝撃で爆風が巻き起こる。

 ダンジョン内の空気が震える。

 衝撃の余波で、煌めいていたステンドグラスが一つ残らず砕け散った。



『兄ちゃん、頑張って!』


「ぐうぅぅゥゥォォオオオオオオオ!!!」


 ウィルに鼓舞されたヴァイスが、咆哮を上げながら拳に力を込める!

 シズも負けじと声を張り上げながら拳を突き出す。


 蒼き龍がヴァイスの腕に喰らいつき、【黒炎】を消し去る!


「何!?」


 ヴァイスの攻撃力が一気に落ちた。


「いっけえええ!!!」


 濁流のような勢いで。

 それでいて凪一つない水面のように美しい龍が衝撃波となり、ヴァイスの体を突き抜けた。


「ぐほっ……」


 ヴァイスが吹き飛んでいった。



「ぜー……ぜー……」


 スキルの反動に耐えれずシズが膝をつきかえたが、イリスがその体を優しく受け止めた。


「シズちゃんの編み出したスキル美しかったよ。シズちゃんのほうがもっと美しいけどね」


「もー。イリスちゃんったら」


 シズが顔を赤くしながら、イリスちゃんの体に寄りかかった。


「ごめん……結構きついかも」


 イリスがシズの頭を優しく撫でた瞬間、これまでにないほど濃密な禍々しい魔力の塊が出現。


「「ッ!」」


 シズとイリスがそちらのほうを振り向くと、一輪の赤い薔薇(バラ)が咲いていた。


 血のように赤く、華やかで美しい、されど禍々しい力を感じる薔薇(バラ)が。



「あれは……スカーレットを殺した花……。ヴァイスの生み出した……」



 言い終わらないうちに、花の魔力が消えた。


 正確には消えたのではない。

 ()()()()のだ。



「【鮮血薔薇(ブラッディローズ)】。一日に一度しか使えない俺の切り札だ。念のために使っておいてよかったぜ」



 禍々しい魔力を放つヴァイスが、力を振り絞って起き上がった。



「人の命を糧に咲くこの薔薇(バラ)は、俺のステータスを強化する!」



 ヴァイスの目の前に、巨大な魔法陣が浮かび上がった。


「シズ、お前は天才だ。あっという間に成長していく。だが、次で決着だ。俺たち兄弟の最高の一撃を使う」


『僕と兄ちゃんの全力だよ』


「だからお前たちも全力で攻撃して来い」


 ヴァイスたちの魔力が、【鮮血薔薇(ブラッディローズ)】の禍々しい魔力が魔法陣に注ぎ込まれていく。



「イリスちゃん……」


「大丈夫だよ、シズちゃん。言ったでしょ? 相棒を頼れって」


 シズは強力すぎる【龍蒼拳】の反動でまともに動けない。

 動けるのはイリスだけ。


「シズちゃんが一人で頑張ってくれてる間に、私はボディのパーツを交換した」


 イリスの両腕は、ドラゴニックアームよりもさらに強力なものに変わっていた。

 龍を模した漆黒のフォルム。

 特級呪〇認定された魔弾砲を材料に作り出されたソレは、奈落の底で二人が出会ったあのドラゴンのような雰囲気をまとっていた。


「それに、決着をつけるのはシズちゃんも一緒だよ」


 イリスがシズの手を握った。


「シズちゃんの魔力を全部私にちょうだい」


「どうするの?」


「私の魔力とシズちゃんの魔力をすべて合わせて、私が魔法を放つ。精霊魔法と二人分の魔力を合わせた魔法なら、あの二人にも通じるよ」


「うん。わかった。私の魔力全部あげる。だから頼んだよ」


 シズが魔力を流す。

 魔力はイリスの腕を通って、コアへ送られていく。


「これで全部だよ」


 魔力切れとスキルの反動で、シズがへたり込んだ。

 イリスがそっとシズを床に座らせてから、


「私たちの力で勝つよ」


 イリスが両腕を前に突き出す。

 左腕を下顎に。

 右腕を上顎に。


 漆黒の腕が、龍の(アギト)を作り出した。


「装填開始!」


 荒れ狂う魔力が(アギト)の中で収束していく!

 制御に全神経を集中させたイリスの肩に、シズがポンっと手を乗せた。


「私も手伝うよ。相棒なんだから」


 魔力を流す技術の応用で、魔力の回路をイリスとつなげたシズ。

 イリスだけじゃ制御しきれない分の魔力をシズが制御する。


「ありがとね、シズちゃん。おかげでぶっ放せるぜ」


 (アギト)の中に集まった超密度の魔力の塊が、虹色に煌めいた。



「俺たちも準備できたぜェ……!」


『全魔力を込めた一撃だよ』


 ヴァイスの目の前には、同じく超密度の魔力の塊があった。

 こちらは禍々しいほどの暗黒色だが。



「いくぜェ! これが俺とウィルのすべてだ!」


『これまでのどの攻撃よりも強いよ!』


 魔法陣から黒い稲妻がバチバチと(ほとばし)る。

 黒い稲妻がダンジョンの床や壁を抉り取る。



「『合体魔法――崩天砲(ほうてんほう)!!』」



 魔力の塊が収束し、暗黒の光線が撃ち出された。



「兄弟愛がすごいね。でも、私たちのほうがもっと上だよ! 私はシズちゃんのことが大好きだからね」


「ん、私も。イリスちゃんへの思いなら負けないよ」


「だから正面から打ち勝ってみせる!」


 虹色の魔力の塊が、より一層煌めいた。



「「合体魔法――螺旋龍蒼砲(らせんりゅうそうほう)!!」」



 虹色の光が龍を形どり、暗黒の光線めがけて突き進む。

 蒼い光が龍の周りで螺旋を描く!



 二つの光線が激突し、ダンジョン全体が揺れる!

 視界がまばゆい光に包まれ、耳をつんざくような轟音が響く!

 二つの光線がせめぎ合う!



 お互いに押しては押されるほどの互角の戦いを見せるぶつかり合い。

 その二つの光線に込められた“思い”はシズとイリスのほうが上だった。




 螺旋龍蒼砲(らせんりゅうそうほう)が、暗黒の光線を食い破りながら突き進む!!!

 最強クラスの光線のぶつかり合いは、シズとイリスの愛の一撃が制した。

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タイトル「実家を追放されてから早三年。気がついたら私は最強の吸血鬼になっていた。あと、気がついたら百合ハーレムができてた」

青文字をクリックすると作品に飛べるので、ぜひ読んでみてください! 面白いですよ!
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