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第三十話 教会攻略

 私たちは教会の中に足を踏み入れた。


「うわー、教会なのにアンデッドいるんだ……」


「神聖さのかけらもないね」


 ステンドグラスを通して差し込む月光が、部屋にひしめく亡者たちを(あや)しく照らしていた。


 ボロボロの服を着たゾンビのようなやつから、動く骨、人とそっくりだけど肌が青白くて生気がないやつまで様々だ。

 年齢も子供から老人まで様々。


「……服装がみんな似てるけど、このダンジョンが出現すると同時に忽然と姿を消した村人たちだったりはしないよね? このアンデッドたちが……」


「ないでしょって言いたいけど、否定はできないね。このダンジョン自体がイレギュラーなんだから、予期しない出来事が起こってもおかしくはないよ」


 このアンデッドたちが消えた村人たちだったとしても、私たちにできるのはもう一度倒すことだけ。

 死んでからも無理やり動かされる苦しみから解き放ってあげることしかできない。


「原因はダンジョンを踏破してから調べるしかないか……ん?」


 そこまで考えた時、私はアンデッドたちの様子がおかしいことに気づいた。


 教会に踏み込んだ私たちに襲いかかってこないのだ。

 普通なら敵と認識して襲いかかってくるはず……。

 それにブツブツと何か呟いている。


「許さねぇぞ……ヴァイス……」「あの化け物共が……」「外道が……」「呪ウ……! 殺ス……!」「ヴァイスめ……わざわざ生かしてやっていたというのに……」「恩ヲ忘レルナド……許スマジ……」

「人間のなり損ない風情が……」「ヴァイスは俺が殺す……」「アノバケモノモダ」


 全員が口々に何かを喋っている。

 声が小さいし誰が何を言ってるのか全然わからなかったけど、恨み言であることだけはわかった。

 あと、「ヴァイス」という人名っぽいのが聞こえた。

 何度も。


「シズちゃん、よくわからないけどお願い」


「うん」


 私は闇魔法を発動する。



 アンデッドというのは、特定の属性の攻撃以外は効きづらい。

 高位のアンデッドにもなれば、弱点属性以外は無効化するやつまでいる。


 目の前のアンデッドたちは、いずれもBランク以上の高位アンデッドだ。

 本来は聖属性や光属性が弱点だが、唯一例外がある。

 それは闇属性だ。


 アンデッドたちは闇属性の魔物である。

 恨みや怨念、未練などといった負の感情のこもった瘴気がアンデッドの動力源だ。

 闇属性の上級魔法にもなれば、アンデッドの魂に直接干渉してそれらを祓うことができる。

 つまり浄化できるのだ。


「安らかに眠れ」


 私の足元からあふれ出た闇が、アンデッドたちを包み込んでいく。

 アンデッドたちが苦しげに呻いた後、次々と倒れていった。


 光の粒子となっていくアンデッドの体から、高濃度の瘴気があふれ出る。

 が、瘴気はすぐに霧散して消えていった。


「浄化完了」


「お疲れ様。先に進むよ」


 アンデッドがひしめいていた大ホールの奥から、大きな通路が伸びていた。

 あの先に進んでいけば奥へ行けるのだろう。


「右に小部屋があるけど、どうする?」


「ちょっとだけ覗いてみようよ。トラップ部屋っぽかったら入りたくないけど」


 小さな扉を開くと、その先は休憩室みたいな感じだった。

 テーブルや机がきれいに並べられている。


「結界が張ってあるってことは、ここはセーフポイントか」


「いったん休憩にして昼ごはんにしようよ。バフはまだ大丈夫だけど、お腹は空いたしこの先にセーフポイントがあるかはわからないからね」


 というわけで、目についた席に座る。


「向こうのテーブルのほうに乱雑に座った跡があるけど、レイナさんが言ってた私たちよりも先に攻略を始めた冒険者たちかな?」


「だろうね。ここまで来たってことは、それなりの実力者だと思うよ」


「なら心配はいらなそうだね」


「うん。早くご飯食べたい。早く早く」


「急かさないの。ほら、とっておきを出してあげるから」


 私は【収納】の中から、土鍋を取り出した。


「これは?」


 イリスちゃんがワクワクした様子で聞いてくる。


「なんだと思う?」


「焦らすなぁ~、もう。焦らしプレイはよくないよ」


「正解はプルコギでした。ダンジョン内は結構涼しいからね。意外と鍋なんかいいんじゃないかなってことで作ったよ」


 プルコギの作り方は簡単。

 梨とにんにくのすりおろし、醤油、みりん、ごま、ごま油、粉唐辛子、黒コショウ、水を合わせたものに牛バラスライスを三十分ほど浸ける。


 土鍋にくし切りにした玉ねぎを敷いて、その上に肉、ニンジンやエノキなど好きな具材をカットしたものを乗せる。

 肉をつけていたタレを鍋に全部投入して、後は火が通るまで煮るだけ。


 具材に火が通ったら、これで完成だよ。



「わ~、いい匂い」


 土鍋のふたを開けると、食欲をそそるおいしそうな匂いが辺りに広がった。


 皿に具材と汁を注いだら、すぐにがっつく。

 まずは汁を一口ゴクリ。


 甘辛いタレと肉や野菜の旨みが合わさって、濃厚な味わいになっている。

 だけど、味が濃すぎることもなく飲みやすい。

 これならいくらでもいけそうだよ。


「ん~、おいしい! 味もそうだけど、肌寒い夜のダンジョン内ではちょうどいい温かさだね」


「うん。体の芯からポカポカ温まるね」


 ダンジョン攻略で朝から動きっぱなしで、すでに昼過ぎ。

 それもあって、ただでさえおいしいプルコギがよりいっそうおいしく感じるよ。


「ネギおいしいよ、シズちゃん。汁を吸って甘辛い味になっていて、後からピリッと来るのがたまらないよ」


「ネギって鍋に最高に合うよね」


「超わかる」


 本命の肉をパクリ。

 タレに付け込んだのと煮込んだので、味がしっかりと染み込んでいる。

 噛むと柔らかく千切れて、口の中に旨みがあふれ出す。


「肉単品でも充分おいしいけど、キノコと一緒に食べるともっとおいしいよ」


「どれどれ」


 イリスちゃんが肉とシイタケを口に放り込んだ。


「ん~、最高! キノコの旨みが活きてる!」


「お気に召してもらえたようで何よりだよ」



 昼休憩を終えた私たちは教会の奥へ進む。


 大ホールにはアンデッドがひしめいていたけど、昼休憩の後はアンデッドどころか普通の魔物にすらほとんど遭遇しなかった。

 おかげで攻略がはかどるはかどる。


 いったい何キロあるんだよ、とツッコミたくなるほど長い通路を進む。

 ようやくたどり着いた広い部屋の中央には、聖獣のごとき雰囲気をまとう白銀の虎が鎮座していた。


「白虎。S-ランク100Lvだよ」


 行き止まりの部屋で、奥にある魔法陣の前に立ちふさがる配置。

 つまり中ボスか。



「ガァァァァアアアアアアァァアアア!!!」


 私たちを敵と認識した白虎が、力強い咆哮を上げる。

 大気がビリビリ振動するのが分かる。

 圧倒的な強者の風格。


 だけど――


「全然怖くないね」


「それだけ私たちが強くなったってことでしょ」



 決着はすぐについた。

 白虎の懐に飛び込んだ私がお腹を蹴り上げ、宙に浮いた白虎をイリスちゃんの放った弾幕が撃ち抜く。

 これだけで白虎を倒しきるのには充分だった。


「最近どんどん強くなってるね、私たち」


「Sランク台の魔物を数回倒したからね。そりゃレベルの上りも早いよ。しかも高レベルになるほどレベルが上がった時のステータスの上昇率は高い。それにバフが加わるからね」


「強くなっていくほど、強くなる速度が上がるってことか」


「その分レベルは上がりにくくなるけど、今は強い魔物が多いから苦労はしてないね。まあ、強い魔物が少ないに越したことはないけど」


「ね。Sランクにはなりたいけど、強い魔物は少ないほうがいいよね。私たちの活躍が増えるよりは、魔物被害にあう人が減るほうがいいもん」


 白虎のドロップアイテムを回収してから、部屋の奥にある転移の魔法陣を起動。

 私たちはダンジョンの奥部へと飛ばされる。


 光が晴れた先に見えたのは、通路の先にある大きな扉だった。


「雰囲気からして、ダンジョンボスの可能性が高そうだね」


 中ボスがS-ランクだったんだ。

 ダンジョンボスは少なくとも、Sランク以上だろう。


「心していくよ」


「うん」



 美しい花々の模様が精巧に刻まれた大きな扉。

 私は覚悟を決めて扉を開く。



 その先で見たのは――



「新たな客人が来たみたいだな」



 亡者の群れに囲まれた、血まみれのフレイたちだった。



「パーティーが盛り上がって来たぜ」



 ステンドグラスを通して差し込む幻想的な夜の光に照らされたスキンヘッド筋肉男が、そう言った。

いよいよ佳境ですね。

続きが超気になるという方は、ブクマと☆5評価よろしくお願いします!

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タイトル「実家を追放されてから早三年。気がついたら私は最強の吸血鬼になっていた。あと、気がついたら百合ハーレムができてた」

青文字をクリックすると作品に飛べるので、ぜひ読んでみてください! 面白いですよ!
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