第二十五話 決断(聖炎鳥の翼視点)
「【魔法剣・雷】!」
電気をまとった剣身が煌めく。
「オラッ!」
フレイの一閃によって、身長三メートルは優に超える筋骨隆々の巨人の右腕が斬り飛ばされた。
赤い巨人――オーガと呼ばれているB+ランクの魔物が、たまらず悲鳴を上げる。
「フレアランス!」
スカーレットが大人ほどのサイズがある炎の槍を魔法で作り出し、オーガめがけて放った。
「ッ!?」
とっさに腕を間に挟んで防ごうとするオーガだったが――
「させるか!」
「アンチパワー!」
ニトロのデバフで攻撃力を弱体化させ、グレンが盾でオーガの腕を弾く。
炎の槍が吸い込まれるようにオーガの心臓に迫り、そして穿った。
「ぎゃぁ……ァ……」
オーガがドシンッと大きな音を立てて地面に倒れ伏した。
「今の俺たちならB+ランク程度じゃ大したことないな」
「当たり前よ! この私がパーティーに加わったんだからね!」
ニトロがスカーレットの態度にげんなりしながらも、【アイテムボックス】から水筒を取り出してみんなに渡す。
ジョーノウチを出た赤き聖炎鳥の一行は、Sランクに推薦してもらうために異常発生した魔物狩りをしていた。
だが、
「ダメだ。こんなのじゃ」
水を飲み切ったフレイが、そう呟いた。
「ああ。この程度の魔物を倒すことは他のAランク冒険者でもできる。Bランク冒険者たちでもパーティーを組めばなんとか勝てるレベルだ。そんなのでは、Sランクの推薦には値しない」
「グレンの言う通りですね。このレベルの魔物でも一般人にとっては充分化け物。異常発生した魔物を倒すのも冒険者としての役割ですが、この程度なら他の冒険者に任せて大丈夫でしょう」
グレンとニトロも同意する。
「ハッ。当たり前でしょ」
当たりは強いが、スカーレットも同じような感じだった。
「異常発生した魔物の目撃情報は、今倒したオーガで最後だ。ギルドに戻って、俺たちにふさわしい案件がないか調べてもらうぞ」
フレイたちが現在拠点にしているのは、ジョーノウチから北東に進んだところにある街だ。
その街のギルドに戻って来たフレイたちは、すぐにギルマスの部屋に通された。
「目撃情報のあったオーガ、帯電大角ウサギ、ムカデドラゴンは討伐してきた」
「それはよかった」
フレイの報告を聞いて安堵する、典型的な中年男性なギルマス。
「ギルマスに聞きたいことがある」
「ええ。なんでもお聞きください」
「Sランクの推薦をもらえるような案件はないか? 魔物の討伐など戦闘系の内容であればなお良い」
「ええ。ちょうどいいのがありますとも」
手もみしながらそう答えたギルマス。
フレイたちは「本当か!?」と座っていたソファから身を乗り出した。
「今朝入って来たばかりの情報なんですがね。ここから南に進んだところにアルクスという街があるじゃないですか」
「ああ。フローラシティの東にあるところだったな」
フレイが少しだけ考えこむ。
ギルマスの話とは別のことについて考えているようだ。
「ギルマス、ちょっと聞きたいことがある。フローラシティに現れたというクラーケンはどうなった?」
「ん? ああ。その件については一昨日連絡が入りましたね。フローラシティを訪れた冒険者たちによって討伐されたそうです」
「……そうか」
フレイだけじゃなく、他のメンバーたちも黙り込んだ。
「話を戻しましょう。アルクスの近くの村に突然ダンジョンが発生したそうなんです」
「村にだと!?」
フレイたちが驚愕する。
既存のとは別の新しいダンジョンが発生するのは稀だ。
そして、それは必ず人の往来がない深い森の中など、人の干渉が少ない場所に限られてくる。
「その難易度は最初からSランクなんです……」
「なっ!?」
フレイたちは、ギルマスのその一言によって絶句した。
誕生したばかりのダンジョンは、せいぜいゴブリン程度の弱い魔物しか生み出すことができない。
だから人の干渉が少ない場所で息をひそめ、着実に成長していくのだ。
それがいきなり村に発生した挙句、難易度が高すぎるとかそういう次元じゃない。
フレイたちが驚くのも無理はなかった。
「全容はわからず、一階層からAランクの魔物が出てくる。どうでしょうか……?」
危険度は今までとは比べ物にならない。
だが、Sランクになるためには――
故にフレイたちは決断した。
「そこへ向かう」
後日、フローラシティのギルマスから話を聞いたシズたちもそこへ向かうとは知らず。
いや、シズたちが向かうことを聞いても判断は変わらなかっただろう。
Sランクの依頼にふさわしい案件などそうそうないのだから、Sランクに昇級するために動くフレイたちなら、どの道アルクスの街に向かう。
二つのパーティーが接触するのは必然だった。




