第二十四話 唐揚げと次の街
クラーケンを倒してから一週間が過ぎた。
今日は午後からギルマスと会う用事がある。
その時の手土産の分も含めた昼ご飯をこれから作るところだ。
「この前はクラーケン尽くしだったから、今日はシーサーペント尽くしだよ」
「シーサーペントの肉っておいしいみたいだから、シズちゃんの手にかかれば絶品になること確定だね」
シーサーペントの肉はさっき少しだけ焼いて試食したけど、淡白な味だった。
蛇肉は鶏肉に近い味ってよく言われるけど、海蛇であるシーサーペントの肉も鶏肉に近い感じだったよ。
鶏肉料理はたくさんあるけど、一番最初にパッと思い浮かぶのはあれかな。
みんなが大好きだけど、脂分が多いから中年になってくると摂りすぎ注意なやつ。
居酒屋とかでよく出てくるイメージある。居酒屋行ったことないけど。
「今日はシーサーペントの肉を使った唐揚げだから、楽しみに待っててね。絶品にするから」
「超おいしそうだね。期待してるよ。食べたいものランキングの上位に唐揚げ入ってるからさ」
そうと決まれば、さっそく料理開始。
まずはシーサーペントの肉をちょうどいい大きさにカットしていく。
そしたら、カットした肉をフォークでプスプス刺していく。
こうすることで調味料がしっかり肉に染み込むからね。
次は下味。
ボウルにカットした肉を移す。
日本酒(料理酒でもいいけど日本酒のほうが絶対おいしく仕上がるよ)、醤油、味の素、塩コショウ、卵を加えてしっかりと混ぜる。
混ざったら薄力粉を加えてまた混ぜる。
これで肉に味をつけて揉み込むことができたから、次は揚げていく作業。
中華鍋(フライパンでも可)に油を少量入れて加熱して鍋をならし、肉がつかるくらいまで油を入れる。
「シズちゃん、唐揚げっていったらやっぱりカリカリのを想像するけど、あれってどうやったらカリカリになるの?」
「いい質問だね。二度揚げっていう方法で揚げたらカリカリになるよ。まずは中温の油で六~八分ほど揚げて一度油から取り出して、今度は高温の油で三分ほど揚げたらカリカリな唐揚げの出来上がりだよ」
「へ~、料理って奥深いね」
「ちょっとした工夫とか食材でおいしさが段違いに変わったりするから面白いよ。料理は」
二度揚げが終わるころには、唐揚げの表面はカリッとしたものになっていた。
油の中から取り出して油を切ったら、皿に盛って完成!
レタスに水菜に紫キャベツにカットしたネギやみじん切りにしたパセリと一緒に盛りつけたから、見栄えも彩り鮮やかでいい感じだよ。
「うん。最高! 超おいしい!」
イリスちゃんが幸せそうに一口一口噛みしめる。
私も唐揚げを口に運ぶ。
「ん、おいし。やっぱりこの味最高」
カリカリの唐揚げにかぶりつくとサクッという音が鳴り、熱々の肉汁が口の中に流れ込む。
外はカリッと。中は柔らかくてジューシー。やっぱり唐揚げは二度揚げするべきだね。
普通に揚げただけじゃ、絶対にこのおいしさは再現できないよ。
シーサーペントの肉は淡白ながらも、旨みはしっかりとある。
下味によって引き立たせられたそれがギュッと詰まった唐揚げは、噛むごとに旨みがあふれて舌を刺激する。
唐揚げの上に散らされた薬味のネギが程よい辛さと風味を調和させて、いいアクセントになっていた。
「どう? 満足いく仕上がりだった?」
「もちろん! やっぱシズちゃんの手料理は最高だよ!」
「ふっふっふ。満足するのはまだ早いよ」
「というと?」
私は【収納】の中からソレを取り出した。
「じゃじゃ~ん! これは油淋鶏のタレです!」
油淋鶏っていうのは、中華料理の唐揚げのことだよ。
それが普通の唐揚げと違うのは、このタレがあるかないか。
酢、醤油、砂糖、おろし生姜、ごま油を混ぜただけのこのタレをかけるだけで、唐揚げは別物へと変わるッ!
「まあ、味変だね」
「おいしそうだからかけて! 二つね!」
イリスちゃんが差し出した皿に乗っている唐揚げに油淋鶏のタレをかけると、イリスちゃんはすぐに唐揚げの味を堪能しだした。
その様子をニコニコしながら眺めていると、
「ナニコレ!? すごい! 味が一気に変わったんだけど!」
「でしょでしょ」
私もタレをかけた唐揚げを口に運ぶ。
程よい酸味と甘みが合わさったタレの爽やかな香りが鼻孔をくすぐる。
タレが絡まった肉の味は、さっきまでとはガラリと変わっていた。
うんうん。肉の旨みに爽やかな酸味が加わったこれがいいんだよ。
一つの料理で二度味を楽しめるのはすごくいいね。
これの何がいいかって言うと、おいしいのはもちろん米がすごく進むことだよね。
私を太らせたいんかっていうほど米との相性バッチリ過ぎ。
「あ~、満足。今幸せ噛みしめてる」
「自分の作った料理で喜んでもらえるのは、作ったほうとしてはうれしい限りだよ」
「シズちゃんが悶え死ぬくらい毎日褒めてあげるからね」
「嬉しいけど私を殺そうとしないで」
昼ご飯を堪能した私たちは、フローラシティの冒険者ギルドにやって来た。
時刻が昼過ぎなだけあって、ギルド内はかなり空いている。
クラーケンなどの重大な問題が片付いたのもあるか。
私たちはすぐにギルマスの部屋に案内された。
「ほっほっほ。一週間ぶりじゃの」
「久しぶり」
「お久しぶりです。こちらは私が作った料理です。夜ご飯の時にもう一度温めてから召し上がってください」
私は持ってきていた唐揚げセットをブルーノおじいちゃんに手渡した。
ブルーノおじいちゃんは笑顔でそれを受け取る。
「ほっほっほ。そちらのお嬢ちゃんが絶賛していたの。料理がすごくおいしいのじゃと」
「そうだよ。シズちゃんの手料理は最高だよ」
「それじゃあ、じっくり味わわせてもらうとするぞい」
Sランクの推薦などでお世話になって頼みまで聞いてもらったから手土産を渡したわけだけど、ジョーノウチのギルマスには何もあげてなかったね。
今度ジョーノウチに行くことがあったら、その時に何か手渡しとこっと。
「本題に戻るが、おぬしらに頼まれた通りSランクの推薦に値するような事件について調べてきたわい。おぬしらにぴったりのがあったぞい」
「どんな内容ですか?」
「ここから東に進んだ先にアルクスという街があるじゃろ? その近くにSランクダンジョンが突然発生したそうなんじゃ。アルクスのギルドからの連絡じゃと、一階層からBランクやAランク台の魔物がホイホイ出てくるらしい。詳しいことはわからんが、まず間違いなく魔物の異常発生と関係があるじゃろうな。ダンジョンが発生することは稀にあるが、最初からSランク認定されるような難易度なんてことはまずありえんからの」
「つまり、そのダンジョンの調査・攻略で成果を上げれば推薦される可能性が高くなるということですね?」
「そういうことじゃ。もちろん行くじゃろう?」
Sランクダンジョン。
その難易度は、かつて私たちが修行の末に踏破した奈落並みだ。
下手したらそれ以上かもしれない。
だけど、“最強の冒険者”を目指す以上尻込みするつもりはない。
それはイリスちゃんも同じようで。
「行きます!」
「もちろん行くに決まってるでしょ!」
私たちの考えは同じだった。
「やはりの。おぬしらならそう言うと思っておったわい。では、アルクスのギルドにおぬしたちのことを連絡しておくからの」
「お願いします」
というわけで、私たちの今後の予定が決まった。
ブルーノおじいちゃんに挨拶した私たちは、アルクスの街に出発するべくギルドを後にするのだった。
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