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第二十三話 海水浴とタコパ

「海水浴じゃー!」


「おー!」


 クラーケンとついでにいろいろ倒してから早三日。

 私たちは海水浴場にやって来た。


 私たちがクラーケンを倒したことがギルドを通じて大々的に伝えられたことで、街の活気はこの街に来た時の倍以上に盛り上がっていた。

 露店通りとかものすごく賑わってたよ。

 通行量も段違いに多くなっていたしね。


 海の先を見れば、漁船がたくさん沖に向かって行っているのが見える。

 クラーケンのせいで減っていた漁獲量はすぐにでも回復するだろう。

 貿易のほうもすぐに再開するはずだよ。



「さっそく水着に着替えようぜ」


「うん」


 イリスちゃんに連れられて女性用の更衣室へ。

 そこで水着に着替えてから、私たちは砂浜に飛び出した。


 もちろん【通販】で日焼け止めを買って塗るのも忘れない。


「わっ。砂が結構熱い」


「私はゴーレムなんで平気でぇす。いいでしょ?」


「ちょっとだけ羨ましい。ってか、イリスちゃんの皮膚感覚機能だと、砂の熱さってどのくらいなの?」


「温かい以上熱い未満って感じ」


「そっか。熱や冷たさは感じるけど、それ以上はいかないって感じなんだね」


「そうそう。そんな感じ」



 泳ぐときは先に準備体操をするのが常識。

 というわけでイリスちゃんと一緒に準備体操していると、ちらりとこっちを見た巨乳のお姉さんに鼻で笑われた。


「なんで? 私たち何もしてないよね?」


 なんで鼻で笑われたのかイリスちゃんには心当たりがあるようで。


「私たちの体が貧相だからでしょ」


「あー。優越感に浸ってるってことね」


 私はワンピースタイプの露出が少ない水着を。

 イリスちゃんはビキニを着ている。

 けど、二人とも貧乳だからおっぱいの辺りがさみしいのだ。


「おっぱいの大きさで人の価値は決まらないからね。巨乳がすべてじゃないんだよ」


「イリスちゃん……。いいこと言ったみたいな雰囲気出してるけど、この前性癖の話してた時に貧乳最高、貧乳以外は認めないみたいなこと言ってたよね?」


「やっぱりね、私は貧乳以外には価値がないと思いますよ。ええ」


「手の平くるりんぱしすぎだよ」


「そんなことよりも泳ごうぜ!」


「わかったからそんなに腕引っ張らないで」



 準備運動を終えた私たちは、「ヒャッホー!」と叫びながら海に飛び込んだ。


 ザブーンと水しぶきが立ち、冷たい海水が全身を包み込む。

 太陽の日差しを浴びていた私たちには、心地よい冷たさだった。


「ぺっぺっ、しょっぱ!」


 海面から顔を出したら、イリスちゃんが海水のしょっぱさに驚いているところだった。


「そっか。イリスちゃんは海は初めてなんだよね?」


「うん。【ネットサーフィン】のおかげで知識はあるけど、実際に体験するのは初めてだよ。それは他のことも同じだけれど。シズちゃんが作ってくれるいろんな料理食べたり、こうして一緒に冒険したりね。本当にシズちゃんに出会えてよかったよ。じゃなきゃ、私は今でも奈落の底でさみしい思いをしてただろうからさ」


 イリスちゃんの屈託のない笑顔がまぶしすぎたから、私は顔を背けながら返す。


「ん。私も今の生活がすごく楽しいよ。充実してるし、イリスちゃん私の料理をいっつもおいしいおいしいって言ってくれるし」


「そういうのは正面から言ってほしいな~」


 イリスちゃんが意地悪な声でそう言いながら正面に回りこんできたから、私はさらに顔を背けた。


「私もイリスちゃんに出会えてよかった」


「ん? 何? 全然聞こえなーい。もう一回言って」


「もー。全部聞こえたでしょ。イリスちゃんの意地悪」


「耳の先まで真っ赤っ赤だよ。照れてるシズちゃんの顔見たいな~」


「ダーメ」


「ちぇっ」


 私は顔を見られたくなかったから、海に潜った。



 のんびり泳いだりクロールで競争したりしてたっぷり海を堪能した私たちは、砂浜の人気がないほうに移動してきた。


「シズちゃん、今日の昼ご飯は何?」


「たこ焼きだよ」


「お~! 私たこ焼き食べるの初めてだから楽しみ!」


「クラーケンの足を入れて焼くから楽しみにしててね」


 テーブルを【収納】から取り出して設置。あとイスも。

 昨日【通販】で買っておいたたこ焼き器をスイッチオン!

 たこ焼き器が充分に熱くなったら、サラダ油を敷いてからあらかじめ作っておいたたこ焼きの生地を投入!


 ちなみにたこ焼きの生地の作り方の手順はこんな感じだよ。


 まず薄力粉にベーキングパウダーと顆粒和風だしの素を加えて泡だて器で混ぜる。

 そこに冷水を数回に分けて注ぎ入れ、粉を完全に溶かす。

 粉が完全に溶けたら、溶き卵を加えて混ぜる。


 これで生地は完成。



 たこ焼き器に生地を入れると、ジュッという音がした。


「たこ焼き器の温度はちょうど良しっと」


 生地を溢れるくらい入れたら、具材を投入していく。

 小さく切り分けたクラーケンの足やトマトの果肉部分とチーズを合わせたもの、ウィンナー、コーンなど具材は様々だ。

 私は入れないけど、キムチやキャベツも合うそうだよ。

 変わり種だと、チョコレートを入れる人もいるらしい。


 そうこうしているうちに生地が少し固まって来たから、ひっくり返す準備をする。

 たこ焼きピン(竹串よりこっちのほうが使いやすいよ)で、はみ出している生地の間にすじを入れて切り離す。


「よっと。ほっ」


 生地がひっくり返せるくらい固まってきたら、たこ焼きピンを溝の淵に差し込んでひっくり返していく。

 火力調整しつつ、溝からはみ出た部分を溝の中に押し込んでいく。


 あとはたこ焼きを適度に回転させて形を整えつつ、焼き色を付けていく。


「すごくいい匂いだね」


 香ばしい香りを堪能するイリスちゃんの横で、私は皿にたこ焼きを取っていく。

 タコ焼きにソース、マヨネーズ、青のり、かつお節などをお好みでトッピングしたら完成だ。


 最後につまようじを刺してから、


「はい。たこ焼き。熱々だから気をつけて食べてね」


 私からたこ焼きの乗った皿を受け取ったイリスちゃんは、つまようじをひょいっと掴んでからたこ焼きを口の中に放り込んだ。

 一口で。


「あっづ!?」


「だ、大丈夫!? だから気を付けてって……」


「嘘ぴょーん」


「え? ……あ、そうか。イリスちゃんの感覚機能って人間のと違うんだったね」


 温かさは感じても、熱さまでは感じないんだっけか。

 よく考えたらイリスちゃんが火傷するわけないね。


 イリスちゃんが無邪気な笑みを浮かべながらたこ焼きをモグモグする。

 雷九尾の時の棒読み悲鳴とは、ロシアとバチカン市国ほどの差がある神演技だったせいで、簡単に引っかかっちゃったよ。ちょっと悔しい。


 イリスちゃんを眺めながらそんなことを考えていると、たこ焼きを飲み込んだイリスちゃんが口を開いた。


「すごく大阪を感じたよ」


「感想が独特だね」


 かなり意味不明な感想だったけど、おいしかったというのは伝わって来た。

 好評なようで何より。


「じゃ、私もいただきまーす」


 たこ焼きをしっかりフーフーしてから、口の中に放り込む。


「熱っ! ハフハフモグモグ……」


 外はパリッと、中は柔らかいたこ焼き。

 熱さと戦いながらも、味をかみしめていく。

 肝心のクラーケンの足は、柔らかいけど程よい噛み応えがあっておいしかった。

 タコって味がさっぱりしてることが多いけど、クラーケンの身は普通のタコよりも旨みが強かったよ。


 ソースやマヨネーズなどの味に負けず、それらに引き立てられてよりおいしさを増したたこ焼きは、まさに絶品と呼べるものだった。


「どう? 大阪感じた?」


「うん。私も大阪を感じたよ」


 他のタコ焼きも口の中に放り込んでいく。


 トロトロに溶けたチーズの旨みとトマトの酸味や旨みが調和して芳醇な味わいになっているトマトチーズ(かなり熱いから気を付けてね)。

 噛むと濃い旨みが口の中に広がるウィンナー。

 噛み応えがあってほんのりと感じられる甘さが、他の具材とは違った食感や味わいをもたらすコーン。


 どれも絶品だった。

 潮風に当たってきれいな景色を眺めながら食べているのも、食事をおいしく感じさせてくれる理由の一つだろう。


「シズちゃん、おかわり!」


「わかったよ。ちょっと待ってね」


 たこ焼き二軍のメンバーたちをタコ焼き機に投入する。


「右の二列には何も入れてないけど、なんで?」


 タコ焼き器の右の二列は、意図的にたこ焼きの生地を入れなかった。

 何をするためか?


「ふっふっふ! それは、クラーケンの足でバター醤油焼きを作るためだよ!」


「それ、絶対おいしい。断言できる。絶対においしい。だから早く作って。ほら、早く早く」


「急かさないの。すぐに作ってあげるから」


 たこ焼き機にバターを投入。熱して溶かす。

 たこ焼きのほうも同時並行で作っていく。


 たこ焼き用よりも大きめに切り分けておいたクラーケンの足を、溶けたバターの上に投入。

 全体にバターを絡めながら焼いていき、ある程度火が通ったところで醤油を垂らす。


 ジュゥゥっといういい音と共に、香ばしいなんとも言えない匂いが辺りに漂って私たちの鼻孔をくすぐる。


「そろそろ完成かな」


 たこ焼き二軍を皿に取り出した後、しっかりと火の通ったクラーケンの足も皿に取り出した。


「はい。イリスちゃんの分」


「ありがとね。じゃ、いただくよ」



 おいしいおいしいと頬に手を当てながら何度もそういうイリスちゃんの横で、私はクラーケンの足に顔を近づける。

 溶けたバターの芳醇な香りと醤油の香ばしい匂い。

 おいしくないわけがない。


「はむっ」


 口の中に放り込むと、バターの味と風味が一気に口の中に広がった。

 遅れて醤油の風味がやってくる。

 身を噛みしめれば、バターと醤油に引き立てられたクラーケンの旨みがドッと口の中にあふれかえった。


 ただのバター醤油でこうも絶品になるとか、クラーケンってすごい。

 倒してよかった。ホントに。



「ありがと、シズちゃん。大満足だよ」


「私もイリスちゃんに喜んでもらえてうれしいよ」


 たこ焼きにクラーケンのバター醤油焼きにロッコツ貝のバター醤油焼きとめいいっぱい料理を楽しんだ私たちは、午後も楽しく過ごすのだった。

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タイトル「実家を追放されてから早三年。気がついたら私は最強の吸血鬼になっていた。あと、気がついたら百合ハーレムができてた」

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