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第二十話 横槍ラッシュ

『シャシャシャシャシャ。タコ野郎が死んだか』


 ヤンキーっぽい声が辺りに響き渡った。


「誰?」


 声がしたほうを振り向くと、すぐに正体が分かった。


 ……蛇だ。

 大木かというほど胴体が太い巨大な蛇が、水面から頭を伸ばしていた。


「シーサーペントだ……。どうしてこんなところに……ここらの海域にはいないはず……」


 甲板で大砲を撃っていた船員の一人が、絶望した声でそう呟いた。


「あれはシーサーペント。S-ランク110Lvだよ」


「クラーケンより強いじゃん」


 なんでそんな奴がここにいるの?

 クラーケンもそうだけど、本来この海域にはいないはずなのに。


『油断していたとはいえタコ野郎を倒すとはな。強さは認めてやんよ。しかしなァ、それはいけねェぜ。お前たちは俺様の毒で苦しんで死ぬことになるんだからよォ』


 なんか、勝手に私たちが死ぬことになってるんだけど。

 人の話聞かなそうなタイプだなぁ。


『俺様の毒は特殊毒でな。解毒できねェ上に最上級の苦しみをもたらす。しかしダメージはめちゃくちゃ低い。三日三晩死ぬほど苦しんで死ぬことになるぜェ。あのタコ野郎に殺されたほうがマシだったと後悔させてやんよ!』


 シーサーペントが鎌首をもたげて息を大きく吸う。


『ブレス行くぜェ!』


 シーサーペントの口が大きく膨れ上がり、毒々しい色をしたブレスが吐き出された。


『全員毒で苦しんで死ねェ!』


 当たり前だけど、特殊毒のブレスみたい。


「当たるわけにはいかないよ。ダークウォール! と、ダークロード!」


 私たちの目の前に闇で壁を作り出す。


『突き破ってやんよォ! ゼェェァアァアアアアアアァァァアアア!!!』


 ブレスの勢いが強くなるが、私の闇を突破するには至らない。


 シーサーペントがブレスに必死になっている間に、ブレスの中に闇の足場を作る。

 シーサーペントに気づかれないように細く、薄く、長く!


「ナイス、シズちゃん。ちょっと行ってくるね」


 イリスちゃんが、か細い闇の足場の上を突き進む。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()


『ウォォォォオオオオオオォォァアアアア!!! ……ォ? ウォオオ!? テメェ! なぜ俺様のブレスの中から出てきた!? なぜ無事なんだァ!?』


 シーサーペントがイリスちゃんの存在に気づくが、もう遅い。


「私、ゴーレムなんで。ただの毒だろうが特殊毒だろうが、私に毒は効かないよ!」


『グベェァ……』


 シーサーペントは驚愕の表情に染まったまま、イリスちゃんに顔面を殴りぬかれた。


 シーサーペントが大きくのけ反る。


「雷撃砲!」


 特大サイズの砲撃が撃たれ、ドォォォンッ! という炸裂音が響いた。


『馬鹿な……! 馬鹿なァ! この俺様がニンゲンごときに押されているだと!? そんなことは許されねェ!』


 シーサーペントが自身の頭部を鞭のように振るう。


 弾き飛ばされたイリスちゃんが、船まで吹き飛んできた。


「ただいま」


「お帰り。手ごたえはどんな感じ?」


「うーん……。そこそこダメージは与えたかなって感じ。いかんせんレベルが高いうえに巨体で耐久力が高いからね。自然回復力もかなり高いみたいだから、普通に倒すのは少し大変かな」


 イリスちゃんがニヤリと笑う。

 これは何かあるなと思った私は、イリスちゃんに秘策を聞いてみた。


「普通に倒さなかったらどんな感じ?」


「よくぞ聞いてくれました。実はシズちゃんが昨日料理を作ってる間に新兵器を一つ開発したんだよ。それを命中させたら理論上は一発けーおーだよ」


「KOの言い方がかわいい」


「ありがとね。ただ、撃つまで少し時間がかかるから、シーサーペントの頭部を固定してほしい。できる?」


「できる! 私に任せて!」



 そこまで話した時、


『グウウウウォォォォォオオオオオアアアアアアア!!? なんだァ!? 何が起きたァ!?』


 突然シーサーペントの絶叫が聞こえてきた。

 そちらのほうを見れば、シーサーペントの近くの海面が真っ赤に染まっていた。


「何が起きたの?」


 さっきからいろいろなことが連続で起こりすぎて、乗組員たちはみんな口を開いて固まっている。

 私も口を開きたいよ。



『ッ! 貴様の仕業か、メガロドン! 俺の体を食い破りやがったのは貴様だな!』


 シーサーペントの近くの海面に、でっかいサメの背びれが現れた。


 ……気のせいかな? 背びれだけで三メートルくらいある気がするんだけど……。

 本体どんだけデカいの?


『おほほほほ。目障りだった貴方がニンゲンごときにいいようにされてるなんて見物ですわ』


 海中から声が聞こえてきた。

 メガロドンは♀みたいだ。

 どうでもいいけど。


『貴様! なぜ俺様に攻撃してくる!?』


『言ったでしょう? 貴方が目障りなのだと。海の王者は(わたくし)一人で充分ですのよ。貴方も、貴方に怪我を負わせた下等なニンゲンも(わたくし)が消すので、貴方は安心してあの世に行けばいいですわ』


『き、貴様ァ!』



 なんかシーサーペントとメガロドンが勝手に争いだした。

 その間にイリスちゃんが大砲を甲板に設置する。


「それが新兵器?」


「そだよ。魔弾砲って言って、奈落のボスのあのドラゴンの素材を使って作ったんだよ。特大サイズの魔石に内包されている魔力を砲弾として撃ち出すというシンプルな兵器だけど、威力は普通の大砲なんかと比べ物にならないからね」


 イリスちゃんが魔弾砲を操作すると、とてつもない濃度の魔力が込められていくのが分かった。

 特大サイズの魔石が使われているだけあるね。

 大気がビリビリ震えているよ。


「チャージ完了! あとは撃つだけだけど……シーサーペントを固定する必要はなさそうだね」


「そうだね。こっちのことはそっちのけでメガロドンと言い争っているみたいだし」


 シーサーペントのほうを見れば、自分の周囲をぐるぐる旋回するメガロドンを警戒するので必死だった。

 時折ブレス攻撃をしている。


 私たちのことなど、思考からとっくに抜け落ちているようだ。

 さっきのイリスちゃんの攻撃がそこまで効かなかったのもあるだろう。

 今回はそれがいいほうに働いたみたいだね。


「照準の固定は完了! 発射!」


 シーサーペントがブレス攻撃で頭部の位置を固定した瞬間、イリスちゃんが魔弾砲を撃った。


 とんでもない密度と量の魔力の塊。


 轟音を伴ってシーサーペントに迫る。



『死にやがれェェェ! メガロ――』


 シーサーペントの頭部が()ぜた。

 容量が限界を超えた風船のように。


 頭部が消し飛んだシーサーペントが、大きな音と水しぶきを立てて海面に落下した。



「……威力、高すぎるね」


「うん……」


「……封印しよっか。動力源はドラゴンの魔石だから、この超火力兵器は誰でも使える。下手したら、国とかが戦争で使うために欲するかもしれないし」


「欲するかもしれないというか、絶対に欲するレベルだよ……。地上で撃ったらもっとヤバいことになるでしょ。これ特級呪〇だよ。特級呪〇」


 威力が頭のネジ飛んでるということで、特級呪〇認定された魔弾砲は封印された。

 少なくとも、人目につくところで封印を解くことはないだろう。

 もしかしたら、もうこの兵器が日の目を見ることはないかもしれない。南無。


「これで後はメガロドンだけだね」


「あいつもニンゲンは下等だとか言ってたから、どうやっても攻撃してくるよね」


 その瞬間、これまでにないほどの特大の水しぶきが上がった。




 私たちが見たのは、太さが二十メートルを優に超える超巨大な龍みたいなのがごっつい巨大なサメを食い殺した瞬間だった。



「り、リヴァイアサン……」



 乗組員の誰かが、ぽつりと呟いた。

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タイトル「実家を追放されてから早三年。気がついたら私は最強の吸血鬼になっていた。あと、気がついたら百合ハーレムができてた」

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