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第十九話 クラーケン討伐

 翌日。

 いよいよクラーケン討伐の時がやって来た。


 船に乗って、大海原の上を進んでいく。



 海賊ごっこしてたら、フローラシティが水平線ギリギリに見えるくらい沖までやって来た。

 だけど、どういうわけかクラーケンは全然現れない。

 船はさらに沖へ進む。


「これ、貿易船なんかが全く海に出てない間に、クラーケンどっか行ったんじゃ……」


「可能性はあるね」


 そんなことを話していると、甲板にやってきた船長が話に混ざってきた。


「いや、おそらくそれはないと思う。これまでのクラーケンの目撃情報だと、一度海域に現れたら当分はその付近に居ついていたそうだからな。おそらく海の下のほうにでもいるのだろう」


 船長がそう言い終わったとたん、海の波が荒くなりだした。


「お出ましのようだぞ。それじゃあ、頼んだからな!」


「任せて!」


 船長は乗組員たちに指示を出すために戻っていった。


 私たちは波が荒くなっていく海をのぞき込む。


「そろそろくるかな」


「来そうだね」


 海に巨大な影が出来上がったのと同時に、巨大な足が何本も海上から突き出てきた。

 数秒遅れて、頭部も海上に姿を現す。



『ノコノコ俺の縄張りにやってくるとは愚かだな、ニンゲン』



 そう言って私たちを見下してきたのは、ブルーノおじいちゃんに聞いた通りの超巨大なタコだった。


 そうだ。こいつ倒したらたこ焼きにしよう。

 そうしよう。


「にしても、君もしゃべるんだね」


『俺を前にその態度か。自信があるのはいいことだ。だが、今回に限っては、それは“自信”ではなく“無謀”なんだがな』


 クラーケンが笑いながらタコ足を動かす。

 今にも船ごと握りつぶしてやるとでも言わんばかりの態度だった。


「おー。S-ランク101Lv。ギガントクラーケンだって」


「クラーケンにも上位種ってあったんだね」


『ほう。俺の強さが分かるか。なら、貴様らでは俺に勝てんということがよく分かったであろう?』


「うん。よくわかったよ。私たちならアンタに勝てるってことがね」


 イリスちゃんがそう言ってニヤリと笑った。

 今日のイリスちゃん、なんかいつにもましてカッコいいんだけど。

 いつもは私のパンツを頭にかぶっていたりと残念美人なのに。

 ちょっとキュンってきちゃった。



『貴様ッ!? 調子に乗るのはそこまでにしておけ! さもなくば……』


「さもなくば?」


『貴様らは後悔することになるぞ。この俺にケンカを売ったことをな。泣いて命乞いすれば、苦しまずに死ねたものを。まずは全身の骨が折れる程度に握りつぶして、そこから海水に沈めて窒息死する寸前をキープしてやろう。貴様ら下等生物は海中で呼吸ができないからなァ』


「君も陸上では呼吸できないでしょ。肺がないんだから。自分のことを棚に上げるのはよくないと思うよ」


『黙れェ!』


「やだ」


『もういい! 貴様らにはこの世に生を受けたことを後悔するほどの絶望的な死に方をさせてやる! 無慚(むざん)フルコースをとくと味わうといい!』


「そっちこそ、タコ料理フルコースにしてあげるよ。たこ焼き、タコの酢の物、タコの刺身とか」


「ハイ! ハイ! 私はタコ足のバター醤油焼き食べたいでっす!」


「わかったよ。おいしいの作るからね」


「わーい楽しみ!」


『もう勝った気でいるなど愚かにもほどがあるぞ!』


 私たちの態度に業を煮やしたクラーケンが、タコ足の一つを私たちめがけて振り下ろしてきた。


 避けるのは簡単だけど、避けたら船が真っ二つになる。

 だから、正面から止める!


「イリスちゃん!」


「うん」



「「連携奥儀――黒雷昇撃(こくらいしょうげき)!!」」



 闇をまとった私の拳と、電気をまとったイリスちゃんの拳。


 それが、振り下ろされたタコ足を下から穿った。


「あ、ヤベ!」


 千切れ飛んだタコ足は、イリスちゃんが素早く【アイテムボックス】に回収。

 八メートル以上はあるタコ足ゲットだぜ。

 たこ焼き何千人前作れるんだろ?


「ルォ……ォォォォォォオオオオオオォォォオオオオオオオオオォォオオオオ!!!」


 クラーケンが、【念話】を使わずに絶叫をあげた。

 まさか私たちの攻撃で足が千切れるなどとは思ってもいなかったようだ。


「さっきまでの威勢はどうしたの? かかってきなよ。私たちを殺すんでしょ?」


『グゥゥ……! 貴様らが俺よりも強いだと!? ありえぬ! そんなことは絶対にあり得ぬ!』



 私は遠距離攻撃手段がない。

 いや、【超級闇魔法】が使えるようになったから正確にはある。

 けど、威力が足りない。

 闇魔法は攻撃特化ではないから。


 それはイリスちゃんも同じ。

 【精霊魔法】は強力だけど、ドラゴニックアームでも使わないとSランク台の魔物になると決定打に欠ける。

 結局は物理で殴ってとどめを刺さないといけない。


『こうなったら船ごと潰して……』


 クラーケンは足場のない海上にいる。

 倒すためには近づかないといけない。


 だったら――



「空中に足場を作る! ダークネスブリッジ!」



 私の掌からあふれた闇が、甲板に集まって形を整えていく。


 闇が橋を形作りながら、クラーケンの頭部へと伸びていく。


『ッ!?』


 闇の橋の上を走って迫る私たちを見たクラーケンが、驚愕の表情で染まった。



「私の闇は物理干渉できるんだよ!」



『ならば、橋ごと海に崩落させてやる!』


 クラーケンの残りの七本の足が、すべて海上に姿を現した。


 どの足も、橋を渡る私たちをロックオンしている。


 いつでも潰せる船よりも、私たちを確実に倒すことを最優先にしたようだ。

 私たちとしても、船が狙われないのはありがたい。

 これで船を気にせず戦える!


『死ね!』


 クラーケンの足が一斉に振り下ろされた。


「雷撃砲! 焼却砲!」


 イリスちゃんが砲撃を浴びせて、タコ足を三本ほど止める。


 迫って来た残り四本のタコ足は回避!


 闇の橋が崩れるが気にしない。


 そのタコ足を蹴って跳躍!


 クラーケンの頭に飛び乗った。


『しまっ――』


「歯を食いしばったほうがいいよ」


 私とイリスちゃんが拳を構え――



「「連携奥儀――黒雷天撃(こくらいてんげき)!!」」



 タコの頭部に振り下ろした。



『グゥォ……。まさか俺が……負けるとは…………』


 クラーケンの全身から力が抜ける。

 その巨大な頭部が海面に打ち付けられて、大きな水しぶきを上げた。


「「討伐完了!! イェ~イ」」


 私たちはハイタッチをしながら、クラーケンの頭部を蹴って跳躍。

 いったん船の上に戻った。



 ザパァァァァァンッ!


 その瞬間、クラーケンとは反対側の海から水しぶきが上がる音がして――



『シャシャシャシャシャ。タコ野郎が死んだか』



 ヤンキーっぽい声が辺りに響き渡った。

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タイトル「実家を追放されてから早三年。気がついたら私は最強の吸血鬼になっていた。あと、気がついたら百合ハーレムができてた」

青文字をクリックすると作品に飛べるので、ぜひ読んでみてください! 面白いですよ!
― 新着の感想 ―
[一言] タコのから揚げも美味しい!
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