第十八話 フローラシティ産魚介類ですしざ〇まい
「俺が悪かった。すまん」
決闘を申し込んできた船長を倒したら、深々と頭を下げられた。
その様子を眺めていたブルーノおじいちゃんが、笑いながら話しかけてきた。
「ほっほっほ。言ったじゃろう。期待の冒険者じゃと。おぬしは見た目で判断しすぎじゃな」
この様子だと、船長が私たちに決闘を挑むことを予想していたみたい。
「……今回でそれがよくわかりました。相手のオーラを感じ取れるように精進します」
船長はブルーノおじいちゃんにそう言った後、
「明日は俺たちに任せてくれ。君たちをクラーケンのもとに連れていってやる。だから、絶対に勝てよ」
というわけで、クラーケン討伐のための船は無事に出向することになった。
明日の午前九時にここに集合ということで話をつけた私たちは、魚介類を買うために露店が立ち並んだ通りにやって来た。
「へいらっしゃい! とれたて新鮮の目玉魚だよ!」
どんな魚だよと思って露店の一つを見たら、頭部にでっかい一つ目がある不気味な魚が売られていた。
なにこれおいしくなさそう。
「まいどあり!」
「……買っちゃったよ。なんで買ったの私?」
「もしかしたらおいしいかもよ?」
クラーケンの影響で漁獲量が減ってるといっても、フローラシティのすぐ近くならクラーケンに襲われることなく漁業ができる。
まだそこそこ活気がある露店通りで、私たちは気に入った魚をいくつか購入していった。
その後は屋台で買い食いをしてから、服屋へ向かった。
ロッコツ貝っていう、貝殻の表面に肋骨のような模様が入っている二枚貝を焼いたのがすごくおいしかったよ。
どこかの国から輸入してるみたいで、なんと醤油をかけて焼いていた。
醤油の香ばしい匂いを放つ身がプリプリで、とってもジューシーな味わいだったよ。
「これシズちゃんに似合いそう」
「わ、かわいいね。イリスちゃんにはこれとかどうかな」
食べ歩きの次に寄ったのは服屋。
気に入った帽子を買った。
私は女優帽(もしくは、つば広帽子)と呼ばれるタイプのもの。
カラーはホワイト。
つばの上には水色のラインが入り、側面にはこの街の近くで採取されたきれいな花の飾りがついている。
イリスちゃんは、私のと同じ花飾りのついた麦わら帽子。
「えへへ。おそろいだね」
「ね」
会計を済ませて店を出た私たちは、さっそく買ったばかりの帽子をかぶった。
「似合ってるよ。超かわいい」
「ありがと。イリスちゃんも麦わら帽子似合ってるよ」
最後に特産品のグッズとかを土産物屋で買った私たちは、フローラシティでもかなり高い旅館に宿泊予約を入れてから奈落に戻って来た。
簡易転移板を使う前にフローラシティの近くでセーブしておいたから、戻る時も問題ない。
「じゃ、私はいつものように新兵器開発してくるね」
「うん。私はいつも通り料理作るよ」
研究室に向かうイリスちゃんを見送ってから、私は料理にとりかかった。
今日作るのは、みんな大好きジャパニーズSUSHIだ!
今まで寿司が嫌いって人に会ったことないよ、私は。
ちなみに私は、サーモンとマグロは圧倒的にサーモン派。でもツナが出てくるとマグロ派に寝返るかもしれないくらいには、ツナも大好き。
ツナマヨっておいしいよね。
そうそう。コンビニのおにぎりの話になるけど、私はツナマヨは「具たっぷり」と書かれているやつしか信用してない。
米の中にひとつまみ以下のほんのちょびっとのツナと申し訳程度のツナ缶の汁しか入ってなかったせいで、「具たっぷり」と書かれているやつ以外は信用できなくなったよね。
ツナ缶の底にたまってる汁で嵩増しされただけでツナはほとんど入ってないのに、セ〇ンの具たっぷりツナマヨおにぎりより値段高いってホント詐欺だと思う。米の量はほぼ同じくせに。むしろちょっと少ないくらいなのに。
……自分語りしすぎたね。閑話休題。
今日の夜ご飯は寿司。寿司に大事なのは酢飯。
というわけで、酢飯から作っていく。
まずはすし酢から。
調味料の分量は、米一合に対して酢20ml、砂糖10g、塩5g。
酢は個人的に米酢がオヌヌメだよ。米と相性がいいからね。
これらをしっかりと混ぜたらすし酢の出来上がり。
硬めに炊いた米を、できるだけ面積の広いすし桶の中央に移す。
すし桶がなかったらバットでもいいよ。
ただし、ボウルはダメ、ゼッタイ。
すし酢が底にたまっちゃうからね。
すし酢をしゃもじに伝わらせながら、米に回しかける。
回しかけたら、切るように混ぜていく。
潰すと粘り気が出ちゃうから、米を潰さないように気を付けてね。
米がべたつくのを防ぐために、団扇で扇ぎながら混ぜるのを忘れないようにね。
「ふぅ。これで酢飯は完成っと」
酢飯が完成したから、次は魚をカットしていく。
【通販】で買ったものから、フローラシティで買った魚までさまざまだ。
シャリを握ってネタを乗せての繰り返し。
ちなみにワサビは入れていない。
いつまで経っても私ワサビ食べられるようになる気配がないんだよね。
ワサビ食べてる人の気持ちが全く理解できないよ。ワサビを否定するわけじゃないけどね。
ツナ、コーン、イクラ、ウニなどの軍艦から、炙り系も作っていく。
炙りチーズサーモンおいしいよね。
すし屋行ったら、私あれ三皿くらい食べるよ。
「よーし、これで完成かな? イリスちゃん呼んでこよ……あ、イリスちゃん! ちょうど今握り終わったところだよ!」
ちょうどいいタイミングでイリスちゃんが戻って来た。
「ナイスタイミングだね。私のほうも新兵器が完成したところだよ」
「新兵器! 気になる! どんなの?」
「フッ。使う時のお楽しみ。もしかしたら明日使うかもね。クラーケンとは海上戦になるからさ」
「そう言われたらもっと気になるんだけど」
軽く雑談した私たちは、フローラシティに戻って予約していた旅館に移動した。
フローラシティの一等地にある高級旅館の最上階。
結構な料金したけど、フェンリル討伐でお金が貯まったから一泊であれば問題ない。
雷九尾の分もあるし、明日以降にはクラーケンの分も入ってくる予定だし。
「お~、豪華だね」
「ベッドがフカフカだよ!」
イリスちゃんが一直線にベッドに突っ込む。
「ベッドにダイブするの好きだね、イリスちゃん」
「フッカフカのベッドに飛び込むの楽しいじゃん?」
「わかる。私もホテルとか行ったら、ついダイブしちゃうもん」
「フカフカのベッドって魔力があるよね」
高級旅館だけあって、内装から家具まで豪華なこと豪華なこと。
汚れなどは一つもなく、隅々まで手入れが行きわたっている。
「着いたばっかだけど、もう夜ご飯にしよっか」
「そだね。もうお腹ペコペコだよ。シズちゃんの手料理早く食べたい」
イリスちゃんに急かされながら、ベランダに設置されたテーブルの上にすしを盛った皿を並べていく。
すし醤油とイリスちゃん用のワサビも準備したら、
「「いただきます!!」」
それぞれ好きなのを取って、醤油につけて食べていく。
「最初はアナゴにしよっと」
「ふぅぅぅぅぐたくぅぅん~」
「ちょ、いきなり変声機能で声真似するのやめてもろて。笑い死んじゃうよ! ア〇ゴさんは退社してもろて」
深呼吸して落ち着いたら、気を取り直してアナゴを口の中へ。
これは醤油ではなく甘ダレでいただく。
噛んだ瞬間、口の中でほろほろと崩れる柔らかい身。
さっぱりしながらも旨みを感じるアナゴの風味。それを甘ダレの濃すぎない程よい甘さが引き立ててくれる。
ウナギのほうも似たような感じだった。
「やっぱりアナゴとウナギは甘ダレに限るね」
「それは同意。アナゴとウナギは甘ダレしか勝たん」
「甘ダレしか勝たん勝たん」
次は私の大好きなサーモンシリーズ。
ただのサーモンはサーモン本来の味が楽しめ、オニオンサーモンは玉ねぎのピリッとした辛さがアクセントになってサーモンの味に深みを出している。
本命の炙りサーモンチーズは、チーズの濃厚な味がサーモンとの絶妙なハーモニーを奏でていた。
遅れてやってくるバジルの風味が味に変化をもたらしてくれる。
まさにオーケストラだよ。
「やっぱサーモンこそ至高だよね。サーモンしか勝たん勝たん」
「一分前くらいに甘ダレしか勝たんって言ってたのはどこ行ったよ? 手の平くるりんぱすぎるでしょ」
「記憶にございません。イリスちゃんもサーモン真理教に入りなよ。すっごくいいよ」
「洗脳されそう」
サーモンをめいいっぱい堪能したら、次は軍艦。
噛むとプチッと弾けて口の中に程よい酸味と甘さが広がるイクラ軍艦から、臭みが全くない濃厚な味わいのウニまで。
ツナマヨは当たり前だけどとてもおいしく、コーンはまあコーンだよねって感じでおいしかった。
……ごめんね。食レポヘタクソで。
誰かコーン軍艦の食レポの仕方知ってる人がいたら教えてください。
甘い、くらいしか感想が出てこなかったんだけど。
「きれいな景色を見ながら食べるご飯っていいね」
イリスちゃんが見てるほうに、私も顔を向ける。
ここはフローラシティ一番の高級旅館だけあって、景色のほうも最高級。
フローラシティの整った外観から、海の先まで一望できる。
そして、今は夕方。
夕日が地平線に沈む寸前で、暁に染まった空と海が美しい。
「こういうのってさ、ロマンチックでいいよね」
「うん。シズちゃんのおいしい料理が、より一層おいしく感じられるよ」
【通販】で買った魚を作ったすしは堪能したから、次はフローラシティ産の魚介類で作ったすしだ。
最初は大太刀魚という、太刀魚をでっかくしたような魚から。
透き通った白色の身は、さっぱりしてるけどその中にしっかりと旨みが感じられた。
すし醤油がその味をさらに引き立ててくれる。
「見た目は気持ち悪い目玉魚だけど、味はすごくおいしいよ」
「へ~、そうなんだ」
イリスちゃんがそう絶賛するもんだから、ちょっと私も目玉魚を食べてみようかな。
私はシャリの上に乗った目玉魚の刺身を見る。
……これがあのでっかい一つ目の不気味な魚だと思うと、全然おいしそうに見えないんだけど。
とか考えつつ、思い切って口に入れた。
「ん、おいしい」
「でしょ~。私も最初はおいしそうに思えなかったけど、思い切って食べてみたら超おいしくてね。もう目玉魚大好き! 目玉魚信者になったよ、私は」
「私も信者になっちゃった」
「サーモン真理教はどったの?」
「洗脳解けた」
「やっぱ洗脳してんじゃん。入らなくてよかった~」
あの見た目からは想像もできないような濃厚な旨みが口の中に広がる。
肉と魚の中間のような不思議な味だけど、それが結構病みつきになる。
これはこれでかなりありだと思うよ。
「「ごちそうさまでした」」
他にもたくさんの種類のすしを作ってたけど、どれもおいしかった。
これはこの街を出る前にたくさん魚介類を買い込むこと決定だね。
すしざ〇まいした私たちは、旅館の大浴場でお湯に浸かってからフカフカの布団で眠りについた。
しっかり疲れを癒して翌日。
クラーケン討伐の日がやって来た。
「今日も頑張ろうね」
「クラーケンをたこ焼きにしてやろうぜ」
「だね」
ちなみに朝ご飯はなんでか知らんけど、目玉魚の活け造りにしちゃいました。
「目玉魚信者になったけど、でっかい一つ目がこっち向いてるのやっぱり嫌なんだけど……。食欲消えちゃう……」ってイリスちゃんに言われた。
ホントに私もそう思う。
なんで活け造りにしたんだ、私。
イン〇タ映えはするけども!
あ、味は相変わらずすごくおいしかったよ。
マグロ派の人は評価をお願いします!
サーモン派の人はブクマと評価をお願いします!
どちらも好き! って方は、ブクマと☆5評価お願いします!
ランキング一桁台に入るためにも、ぜひとも協力お願いします!