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第十七話 フローラシティで

「よく来たの。ワシがフローラシティのギルマス、ブルーノじゃ。よろしくの」



 私たちの向かいに座っている髭のおじいちゃんが、フローラシティのギルマスだ。

 私たちも軽く自己紹介する。


 フローラシティのギルドに着いた私たちは、すぐにギルマスの部屋に通されて今に至るというわけだ。


「ケインから聞いたが、お前さんたちはすさまじく強いのだそうな」


 ケインというのは、顎しゃくれタウンことジョーノウチ(実際はそんなことない。しゃくれてる人は住民の一割ほどだから)のギルマスのことだ。

 ランク認定試験で戦った元Sランクの人だよ。


「聞いたところによると、Aランクダンジョン……それもSランクダンジョンにかなり近いのを踏破し、フェンリルじゃったか……。街を脅かそうとしたA+ランクの魔物の討伐。そして、ランク認定試験では二人ともケインに勝ったそうじゃの。ほっほっほ。Sランクの素質がある冒険者が現れてくれて嬉しいわい。ここ十年近くはSランク冒険者が誕生することはなかったからのぅ」


「まあ、そうですね。あと、昨日のことなんですけど、街道に出てきたA+ランクの雷九尾を討伐しました。本人の話だと、フェンリルの知り合いみたいでした。目的も人間を殺すことだったみたいです」


「なんと!? そんなことがあったとはのぅ……」


「死体はあとで出すとして、事件については雷九尾の手下に襲われた冒険者たちから話が伝わると思います。その冒険者たちですが、遅くとも今日の夕方ごろまでにはこの街に着くと思いますよ」


「了解じゃ。では、話を戻そうかの。クラーケンについてじゃが……」


 ギルマスのブルーノおじいちゃんから聞いた話をまとめるとこうだ。


 クラーケンが現れたのは十日ほど前。

 本来この付近の海域にクラーケンや、クラーケンに進化する可能性のある系統の魔物は棲んでいない。

 言い伝えによると、この付近の海域にはリヴァイアサンが棲んでおり、生態系を守っているからだと言われている。本当かはわからないけど。


 出現したクラーケンは、体長が優に二十メートルを超える巨大サイズ。

 すでに数隻の船が沈没させられたことによって、現在この街が発展した理由でもある貿易が途絶えてしまっているそう。

 漁業のほうは、フローラシティのすぐ近くの近海でしか行えていないそうだ。


「お前さんたちにはクラーケンを倒してもらいたいんじゃ。必然的に海の上で戦うことになるわけじゃが、船はすでにこちらで用意してある。ケインがお前さんたちを絶賛するもんじゃからな。これは期待できると思って、すでに船と船員の手配は済ませてあるぞい」


 ジョーノウチのギルマスから連絡が行ったのは一昨日くらいなのに、準備が速いね。


「そしてお前さんたちをこの目で見てから、期待は確信に変わった。お前さんたちならクラーケンにも勝てるじゃろうて」


 私たちはクラーケンを倒してSランクに推薦してもらうためにここに来た。

 断るという選択肢は最初から存在しない。


「私たちに任せてください。必ずクラーケンを倒して見せます」


「私たちにかかれば瞬殺だよ。瞬殺」


「ほっほっほ。頼もしいのぅ。クラーケンの討伐じゃが、船を出すのは明日の朝になる。じゃが、船乗りたちへの挨拶は今日中に済ませておきたい。船乗りたちにとっては、クラーケン討伐が失敗したらまず死ぬことになるじゃろう。じゃから、一緒に死地に向かう冒険者の強さは知っておきたくて当然じゃ。すぐにでも向かおうと思うが、大丈夫かの?」


 魚介類の買い物とかやりたいことはあるけど、すぐにしないといけないというわけではない。


「大丈夫ですよ」


 だから、これからギルマスと一緒に船乗りたちの元へ向かうことにした。




「あれが明日お前さんたちが乗る船じゃ」


 港にやって来た私たち。

 ブルーノおじいちゃんが指さす先には、立派な船が泊まっていた。


「大きいなぁ」


「あれならクラーケンと戦うのに申し分ないね。今から楽しみになって来たよ」


 船を見た私たちは、ブルーノおじいちゃんに案内されて船乗りたちと顔合わせとなった。



「シズって言います。明日はクラーケン討伐でお世話になります」


「イリスだよ。クラーケンなんてチャチャッと倒すから、明日はよろしくね」


 軽く自己紹介してみたが、船乗りたちはみんな微妙な顔をしていた。


 ……当たり前か。

 ギルマスから強い冒険者だから船を出してくれと頼まれて顔を合わせたら、その冒険者っていうのが小娘二人だけだったのだから。

 命を預けていいと判断されるほうが、逆におかしい。


 そんなことを考えていたら――



「失礼だと承知で言うが、お前たちは本当に強いのか? 俺はBランク冒険者以上の実力があると自負しているが、お前たちが俺より強いとも思えない。そんな奴に命を預けることはできない。だから、自分たちが強いというのであれば、俺と決闘して実力を証明してみろ」



 船長っぽい風貌をした髭だらけのおじさんが、そう言ってきた。

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タイトル「実家を追放されてから早三年。気がついたら私は最強の吸血鬼になっていた。あと、気がついたら百合ハーレムができてた」

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