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第十六話 雷九尾

『やれやれ。小娘二人に負けるなど弱いにもほどがある』


 虎たちを従えて森の中から出てきたのは、体に稲妻をまとう巨大な狐だった。



 「虎の威を借る狐」ってことわざがあるけど、完全に立場逆転してるじゃん。

 「虎に威を貸す狐」じゃん。



『多少は戦力になるかと思って配下に加えてやったが、この程度なら配下にしてやる必要はなかったな。私一人で充分だ』


 稲妻をまとった巨狐は、虎たちの死体をゴミを見るような目で見ながらそう言った。


「あがが……」


 ちらりと横を見れば、さっきお礼を言ってきたリーダーが腰を抜かしていた。

 他の冒険者や馬車の持ち主である商人、馬車を引く馬も同じような反応をしている。



「イリスちゃん、あれは?」


「A+ランク100Lvの雷九尾だよ」


 昨日に続いて、まーた人喰いパンダレベルの魔物だよ。

 なんでこんなんがホイホイ出てくんの?

 やっぱり何かがおかしいでしょ。


『雑魚を倒して図に乗る愚かなニンゲンよ』


「図に乗ってないんですが」


『雑魚とはいえ私の配下を殺したのだ。貴様らは私が直々に相手をしてやる。光栄に思うがいい』


「わーい。こーえーだー」


『私を馬鹿にするか。いいだろう。後悔させてやる』


 後悔も何も、負ける気がしないのですが。

 私たちが助けた冒険者たちにとっては、禍々しい気配を振りまいてるA+ランク最大レベルは恐怖でしかないだろう。


「自信たっぷりなところ悪いけど、私たちにとっては君は中ボス以下でしかないんだよ」


『なんだと!?』


「私たちは君より強い魔物を知っている。そして君は、昨日倒した人喰いパンダやフェンリルと大して変わらない強さしかない。攻撃してくるなら倒すしかなくなるけど、どうする?」


『ほう……。昨日フェンリルの奴が殺されたのには驚いたが、まさか倒したのがお前たちだったとはな』


「知り合いなの?」


『ふん。あんな犬っころは知り合いでも何でもない。ただの目障りな奴だ』


「で、どうするの?」


『犬っころに勝ったくらいで粋がるな。私が貴様らを殺し、あの世に送ってやる。向こうであのやたら息が臭い犬っころに伝えてやるといい。私のほうが強いことを、な』


 私言ったじゃん、フェンリルさん。

 口臭は気にしないと人に嫌われるよって。

 雷九尾さんに嫌われてるじゃん。



『焼け焦げるがいい!』


 巨狐がしゃべり終わるのと同時に、稲妻が私たちめがけて飛んできた。


「遅い」


 私は半歩横にずれてそれを躱す。


「うぎゃー」


 私は躱したけど、イリスちゃんは一歩も動くことなく稲妻を喰らっていた。


『フハハ! まずは一人! 次はお前の番だ! お前もあの女みたいに焼き焦がしてやる!』


 巨狐が高らかに笑う。


 なんであんなわざとらしい演技に引っかかってるの?

 悲鳴とかめっちゃ棒読みで感情こもってなかったじゃん。


『四肢をもいで電気漬けにするのもいいな! じわじわ強くしていって、どこまで耐えれるかも見もの――』


 ぺちゃくちゃ喋っていた巨狐の頭の上に、イリスちゃんがスタッと飛び乗った。


『貴様! なぜ生きている!?』


「雷属性には耐性があるもので」


 イリスちゃんが不敵な笑みを浮かべた。



『次こそは私の電撃で仕留めてやる!』


 巨狐が大量の電気を身にまとう。


 さらに威力アップ!


 イリスちゃんが電気に包まれる!


 だが、


「だから、雷属性は効かないんだって。威力を上げても大して変わらないよ。ちょっとビリッとするけど」


 イリスちゃんの前では、巨狐がどんなに頑張ろうと静電気程度の威力であることには変わらなかった。


『ぬううぅぅぅぉおのれぇぇぇぇぇ!!!』


「敗因はたった一つ。私たちに挑んだことだよ」


 イリスちゃんの手刀によって、巨狐の頭が飛んだ。



「はい。終わったよ」


「恐ろしく速い手刀だったね。私じゃなきゃ見逃していたよ」


 実際、この場にいる私以外の人たちでは視界に捉えることすらできなかっただろう。


 ちなみに巨狐が連れていた虎たちは、私が瞬殺しておいた。

 おそらく巨狐が連れてきたんだろうけど、この辺に生息していない魔物だからね。

 倒すしかないよ。

 高ランクで危険だし。


「大丈夫?」


 恐怖で怯えていた冒険者たちに呼びかけてみたけど、全く反応が返ってこない。

 結局、彼らが正気を取り戻すのに一時間ほどかかった。




 彼らにしつこすぎるくらい感謝された私たちは、巨狐の死体を仕舞ってからフローラシティへ向けて再び進みだす。

 そして、翌日の昼前。


 私たちは山を登って見晴らしのいい切り立った崖の上から、フローラシティを眺めていた。


 遠目からでもわかる石造りのきれいな建物。

 整った街並み。

 その先に広がる青い海。


 本来であれば海を進むたくさんの船がみられるのだろうが、クラーケン出現の影響か大きな船は一艘(いっそう)も見当たらなかった。


「きれいな景色だね」


「そうだね」


 きれいな景色を見ながら昼ご飯を食べた私たち。

 その後フローラシティに着いた私たちは、真っ先にギルドに向かった。

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タイトル「実家を追放されてから早三年。気がついたら私は最強の吸血鬼になっていた。あと、気がついたら百合ハーレムができてた」

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