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第十五話 襲撃事件

 ダンジョンを踏破し、餃子パーリーをした翌日。

 朝から肉汁洪水餃子を食べた私たちは、フローラシティに向けて街道を走っていた。


「このペースだと明日の昼頃には着くと思う」


「りょーかい!」


 乗合馬車でフローラシティに向かってもよかったけど、私たちであれば普通に走ったほうが速い。

 それにいい運動になるし。



「カンガルー」


「ルービックキューブ!」


「ブラジル」


「ルビー!」


「ビル」


「……降参です。もう無理。る攻めキツイ」


「なんで負けたか明日までに考えといてください」


「むー。次は私が勝つから!」


 しりとりをしながら進んでいたら、街道の前方のほうに何かが転がっているのが見えた。

 人くらいの大きさの何かが二つ……って、人じゃん!


「イリスちゃん」


「オッケー。【鑑定】! ……どうやらダメみたい」


「そう……」


 二人の人間のもとに向かう。


 死因はすぐにわかった。

 二人とも鋭利な爪か何かで喉笛を掻き切られている。

 噛まれた傷もあることから、ここで魔物と交戦になって死んだのだろう。


 恰好を見るに、この二人は冒険者っぽい。

 おそらく護衛依頼か何かで馬車を守るために魔物と戦って、ここで死んでしまったのだろう。

 死んでから時間が経った様子はない。

 近くには血痕が何個か残されている。


「ということは、近くにまだ馬車がいるはず。そして、魔物に襲われている可能性が高い」


「ここに来るまで馬車とはすれ違わなかったから、フローラシティ方面に逃げたんだろうね」



 街道を本気で走る私たち。

 すぐに魔物の死体が街道に転がっているのを見つけた。


「虎の魔物か……」


「これはレッドタイガーというCランクの魔物だよ。ここには二匹分死体が転がってるけど、本来は群れたりしないタイプのはず……。その辺はよく分からないけど、たぶんこの様子だとまだ魔物はいるはずだよ」


「わかった。急ごう」


 尚も進み続けると、風に混じって血の匂いや戦闘音が聞こえてきた。


 事件現場に着いた私たちが見たのは、馬車が十数匹のレッドタイガーに囲まれている光景だった。


「馬車は……馬がケガしてるから動かすのは無理だろうね」


 だからだろう。

 馬車の周りに冒険者たちが立って、虎を寄せ付けまいと威嚇している。


 だけど、じり貧だった。

 みんな傷を負い、とてもCランクの魔物を相手できるような状態ではない。


 嗜虐心たっぷりの表情を浮かべた虎たち。

 彼らがじっくりといたぶってるからこそ、冒険者たちはまだ生きているようだった。


 今回ばかりは虎たちの性格に助けられた。


「グオオ!」


 一匹の虎が、爪に炎をまとって冒険者に襲いかかろうとする。


「させない! ダークショット!」


 私は闇の弾丸を作り、それを撃った。


 弾丸は吸い込まれるように飛んでいき、虎の頭部を穿った。


「ォ……」


 虎がどさりと倒れる。


 殺されかけた恐怖でしりもちをついた新人っぽい冒険者や他の冒険者たちは、虎が急に倒れたのを見て驚いていた。

 が、一番驚いているのは虎たちだ。

 圧倒的に自分たちが優位な状況にいたはずなのに、いきなり仲間の一匹が死んだのだから。


「ナイス、シズちゃん! 稲妻(イナズマ)フィスト!」


 拳に電気をまとったイリスちゃんが、先制で一匹の虎を殴り飛ばす。


 虎は近くにいた別の虎を巻き込んで、一緒に吹き飛んでいった。


「あとは任せて!」


 私は冒険者たちのリーダーっぽい男性にそれだけ伝えると、イリスちゃんと一緒に虎狩りを始めた。

 そして、一分もしないうちにすべての虎を狩ることができた。



「た、助かった……のか?」


 冒険者たちは、まだ状況をうまく呑み込めていないようだった。


 ジョーノウチで買っておいたポーションを冒険者たちに配ったところで、彼らはやっと落ち着きを取り戻した。

 ちなみに馬はイリスちゃんがポーションで治療済み。


「君たちがいなかったら、俺たちは間違いなく全員殺されていただろう。礼を言う。君たちのおかげで助かった」


 そう言って頭を下げるのは、冒険者たちのリーダー。

 彼に続いて、他の冒険者たちや馬車に隠れていた商人も口々にお礼を言ってきた。


 それを受け取った後、彼らに何があったのか聞いた。



「俺たちは護衛依頼を受けてこの馬車を守っていたんだ。それが君たちの倒した虎の群れに襲われてな。二人が殺され、俺たちは虎の攻撃から馬車を守りながら逃げたが、馬がやられたことでとうとう追い詰められたというわけだ」


 事件の全容はわかった。

 だが、原因はわからない。


 ……そもそも街道の付近にCランクの魔物がたくさんいることがおかしいのだ。

 街道は強い魔物が生息していない比較的安全な場所を通っている。

 魔物も好き好んで人間を襲うような残虐な奴はほとんどいない。


 本来群れない魔物が群れを作って、集団で人間をいたぶる。

 昨日のフェンリルといい、キナ臭い何かを感じるよ。



「ッ!?」


 冒険者のリーダーが、恐怖に染まった表情で街道横の森のほうを見た。


「ボスのお出ましかな?」


 森の中から禍々しい気配があふれ出てくる。

 そちらのほうを見ていると、新たに数匹の虎が出てきた。

 レッドタイガーの上位種が。


 だけど、違う。

 禍々しい気配の主はこの虎たちではない。


『やれやれ。小娘二人に負けるなど弱いにもほどがある』



 虎たちを従えて森の中から出てきたのは、体に稲妻をまとう巨大な狐だった。



 「虎の威を借る狐」ってことわざがあるけど、完全に立場逆転してるじゃん。

 「虎に威を貸す狐」じゃん。

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タイトル「実家を追放されてから早三年。気がついたら私は最強の吸血鬼になっていた。あと、気がついたら百合ハーレムができてた」

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[良い点] 「虎に威を貸す狐」の発想が面白い。
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