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第十四話 悲報(聖炎鳥の翼視点)

 シズたちが簡易転移板を使って奈落に戻った後。

 ダンジョンから帰還したフレイたちは、ジョーノウチに戻って来ていた。


 ポーションは、体力は回復できても精神的な疲れまでは回復できない。

 フレイたちは全員が疲れ切った表情をしていた。


「とりあえずギルドに戻るぞ。何個かアイテムを換金したら、今日はもう休むべきだ」



 冒険者ギルドに向かうフレイたち。

 その道中、情報共有のために彼らに話しかけた冒険者によって、フレイたちはフェンリル事件について知ることになる。



「俺らがいない間にいきなりA+ランクの魔物が出現だと!?」


「普通そんなことあるか?」


「かなりキナ臭い内容ですね。最近は強い魔物の発生頻度が多くなっているみたいですし、ギルドの言うように警戒はしておいたほうがよさそうですね」


 だが、スカーレットが反応したのはそこではなく。


「たまたま居合わせた冒険者が倒したってどういうことよ? 女二人のパーティーだったみたいだけど、私たちよりも目立つなんて許せないわ!」


 いきり立つスカーレットをなだめながら、フレイたちは聞いた話を頭の中で反芻する。


(フェンリルを倒したのは、ピンクの髪でオッドアイの美少女と金髪の美少女か……。ピンク髪でオッドアイ……いや、まさかな)


 ピンク色の髪に赤と水色のオッドアイという特徴的な容姿を聞いて、一瞬シズの姿が頭をよぎったフレイたち。

 だが、すぐに考えを打ち消した。


 シズが生きているわけがない。

 A+ランクの魔物を倒せるほど強くない。

 そう思って。


 だが、彼らはすぐに真相を知ることとなった。



「よく来たな! お前たちに朗報だ!」


 ギルドに着いたフレイたちは、なぜかすぐにギルマスの部屋に案内された。


 自分たちに朗報があるという嬉しそうなギルマスの言葉を聞いて、見当もつかずに疑問を抱くフレイたち。

 だが、すぐに絶句することになった。



 「シズが生きていた」とギルマスから伝えられて。



「大事な仲間が生きていてよかったな! しかもどんな鍛え方をしたのかはわからないが、すごく強くなっていたぞ! 彼女の連れのランク認定試験をした時に一緒に彼女とも模擬戦をしたが、二戦とも負けちまったよ」


 その言葉を聞いて、フレイたちはさらに言葉を失ってしまった。

 元Sランク冒険者のギルマスがシズに負けた。

 しかもギルマスの話だと、シズの連れもギルマス以上の実力者だという。


「すごい仲間を持ったな!」


 ギルマスが自分のことのように嬉しそうに、フレイたちに向かってそう言った。


「なんで……。だって……あいつはあの時……」


 スカーレットの口からつい聞かれてはマズイ言葉が漏れ出てしまう。

 フレイが一瞬だけ鋭い眼光をしてスカーレットに視線を送る。


「っ! ……あの子が生きてて、よかったわ……」


 フレイの視線に気づいたスカーレットは、すぐに取り繕った。


 だが、それでも違和感は隠しきれなかったようで。

 ギルマスの表情がほんの少しだけ変わった。


「そ、それより、フェンリル事件について教えてください。俺たちがいない間に何があったのか知りたいんです」


 フレイが若干どもりながら話題を変えた。


「ん? ああ、いいぞ。詳細は――」



 フレイたちは、フェンリル事件やそれを解決したシズたちがSランク冒険者を目指していること。

 昇級するために、クラーケンを倒しにフローラシティへ行くことなどを伝えられた。


「――というわけだ」


「……ありがとうございます。俺たちは疲れてるんでこれで帰らせてもらいます」


 フレイはそう言うと、仲間を引き連れてギルマスの部屋を後にした。


 一人、部屋に残されたギルマス。


「シズ……。いったい何があったんだ?」


 誰にも聞こえないくらい小さな声で、彼はそう呟いた。




「どういうことよ!? なんであいつが生きてるわけ!? しかもギルマスよりも強くなったとか冗談でしょ!?」


 ギルドを後にしたフレイたち。

 スカーレットが、他の人に聞かれないように静かな声で叫んでいた。


「奈落の底でどうやって生き延びたっていうんだよ……」


「そのことを考えていても仕方ありません。それよりも、今はシズがSランク冒険者を目指しているということのほうが重要です」


「ああ。俺たちがSランクに昇級するためにも、推薦は絶対必須だ」


 Sランク冒険者。

 それはF~Aランクに収まらなかった強者だけがなれるランク。

 故にSランクへ昇級するための推薦をもらうのであれば、それ相応の成果を出さなければならない。

 普通のAランク冒険者では出せないような成果を。


「私たちを差し置いて推薦をもらうなんて生意気だわ!」



 普通のAランク冒険者では出せないような成果は限られてくる。

 戦闘特化の聖炎鳥の翼であれば、ダンジョン踏破やAランク以上の強力な魔物を倒すくらいしか成果を上げる方法はない。


「推薦をしてもらうためにも、近くの街でいい依頼が出ていないか探すぞ。シズに先を越されるわけにはいかないからな。ディアブル大迷宮は後回しだ。あれはいつでもダンジョンボスのもとに行けるからな」



 彼らがシズと再会するのは、もう少し先。

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タイトル「実家を追放されてから早三年。気がついたら私は最強の吸血鬼になっていた。あと、気がついたら百合ハーレムができてた」

青文字をクリックすると作品に飛べるので、ぜひ読んでみてください! 面白いですよ!
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