表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/38

第十三話 ダンジョン踏破祝いの餃子パーリナイ

「海の街か。海水浴場はあるよね?」


 イリスちゃんがそう聞いてきた。


「もちろんあるよ。フローラシティは観光地でも有名だから」


「じゃあさ、クラーケン倒したら暫くフローラシティでまったり過ごそうよ。魚介類食べたり、海水浴行ったり」


「いいね。賛成」


 フェンリルの件のゴタゴタでギルドカードの更新をするのを忘れていたことに気づいて一度ギルドに戻った後、私たちはジョーノウチのすぐ近くの森にやってきた。


 人目に付かないところまで移動してから、簡易転移板という魔法具(マジックアイテム)を使う。

 視界が光に包まれ、次の瞬間には見慣れた部屋の中にいた。


「結局戻ってくることになっちゃったね」


「必要なものを整理する必要なかったかも」



 ここは奈落の底。つまりイリスちゃんと一緒に暮らしてたあの研究所だ。


 イリスちゃんが持っていた、簡易転移板という魔法具(マジックアイテム)

 これは変態転生者が作ったアイテムで、ここ(イリスちゃん家)と最後にセーブしたポイント間を自由に行き来できるという効果がある。

 ちなみにイリスちゃんはこの魔道具を使うことで、迷子になってもここに帰って来れたみたい。


 ダンジョン内ではなぜかセーブができなかったこの簡易転移板だけど、なんと地上に出るとセーブできるようになっていた。

 つまり、ここ(イリスちゃん家)と最後にセーブしたポイント(今回はジョーノウチのすぐ近くの森)の間を自由に転移できるようになったのだ!


「いつでもここに来れるようになって良かったよ。なんだかんだ私はずっとここで生活していたから、ここにいるのが一番落ち着くし」


「三か月ちょっとしかここに住んでないけど、居心地がいいから私も帰って来れてうれしいよ。それにここなら日本製の調理器具で調味料たくさん使って料理しても誰にも見られないし、フカフカのベッドやお風呂まであるからね」


 イリスちゃんの【アイテムボックス】や私の【収納】に仕舞っていた家具やらなんやらを再び設置してから、夜ご飯の準備に取り掛かった。

 今日は奈落の攻略にSランクドラゴンや人喰いシャンシャ……人喰いパンダ、フェンリルと戦ったり、ギルマスとの模擬試合とかいろいろあったからね。

 もうおなかペコペコだよ。


 というか、思い返せばすんごく濃ゆい一日だったね。



 先に【通販】で炊飯器とコシヒカリを買って、米を炊いておく。

 炊飯器は結構高かったけど、フェンリルの件でお金がたくさん入ってきたからあまり気にならなかったよ。

 以前の私なら絶対「出費があああ……」って頭を押さえてたんだけどね。

 お金があると心に余裕ができるみたいだ。


 ちなみにこの炊飯器、どういうわけか地球産の製品なのに雷の魔石が内蔵されている。

 おかげで、コンセントなど存在しないこの世界でも問題なく使えるよ。



 米を研いでから炊飯器にセットして、炊飯開始。


 ここで米の洗い方の豆知識を一つ。

 米は三、四回水を入れて洗うわけだけど、一番最初は軽く研いでからすぐにぬか水を捨てたほうがいいよ。

 米がぬか水を吸水しちゃうからさ。

 で、二回目以降はしっかり研ぐって感じ。


「シズちゃん、今日は何作るの?」


「ダンジョン踏破祝いで餃子パーリーだよ。パリパリの羽根つき餃子作ってあげるからね」


「超おいしそうじゃん。楽しみにしてるよ」



 かなり疲れたしお腹ペコペコだから、今日の夜ご飯はガッツリいきたい。

 というわけで、まずは下準備から。


 キャベツ(白菜でも可)と長ネギはみじん切りに。

 ニラは五ミリ幅くらいにカット。

 生姜はみじん切りかすりおろしか好きなほうを選ぶ。


 材料のカットが終わったら、次は調味料をそれぞれ用意しておく。

 塩、しょうゆ、コショウがあればオッケー。


 ボウルに豚ひき肉を入れたら、塩を入れる。

 塩は豚肉の重量の1%ほど入れると良いよ。

 理由は、人間が最もおいしいと感じる塩分濃度が一パーセント前後だから。

 これはみそ汁などの他の料理でもいえることだよ。

 今回は1%入れたけど、塩分摂取量を控えることも考えたら0.8%くらいがおすすめだよ。

 0.8%もあれば充分おいしいからね。


 次に塩を混ぜた豚肉にしょうゆを投入。

 それからコショウを少しだけかける。

 下味はこれで終了だよ。


「あんまり調味料は使わないんだね」


「これだけで充分おいしいからね。ホント醤油って最強だと思う」


 生姜と長ネギをボウルに投入したら、さっと混ぜる。

 粘りが出るまでしっかりと混ぜる必要はないよ。

 理由を説明しようとすると、「塩によって肉のたんぱく質が分解されて網目状になって~油が~」って感じで科学的な難しい話になってくるから割愛。

 軽く混ぜるだけで肉同士のくっつきは充分問題ないレベルになるから、混ぜるのに時間をかける必要はない。


「これで餡は完成っと」


 で、この後がポイント。



 軽く混ぜた餡に水を入れる。



 水入れるの!? って思うじゃん? もちろん私も最初は思ったよ。

 だけど、こうすることで肉汁たっぷりな餃子が出来上がるんだよ。

 一回作ってからは、もう餡に水を入れなければ生きていけない体になっちゃいました。

 いや、ホントにこれ考えた人天才だって。



 餡に入れる水の量は、肉の重量の約半分くらいかな? ひき肉の固さにもよるけど、だいたいそれくらい。

 それを四回くらいに分けて入れていく。


 水を入れたら軽く混ぜてを繰り返すこと四回、餡がかなり柔らかくなった。

 最初に作った時に、「餡がこんなに柔らかくて大丈夫なの?」って思っちゃうくらいには。


 そこへニラとキャベツを投入し、ごま油をかける。

 みそもそうだけど、香り成分って「揮発(きはつ)性」っていって熱に弱いから、料理の工程では最後のほうに入れたほうが絶対にいいよ。

 みそ汁とか最初にみそを入れちゃうと、みその香りが一切ないしょっぱいだけのただの汁が出来上がっちゃうからね。


 そして、軽く混ぜる。

 これで餡は完成。


 次は包む作業だ。

 餃子の皮を掌に乗せ、(ふち)の半周に水を塗る。

 皮の真ん中に餡を乗せ、外側のほうまで平べったく伸ばす。

 平べったく伸ばすことで、包んだときに皮の中に余分な空気が入りにくくなるよ。


 包み方はお好きにどうぞ。

 私はひだの数は八個ほどで包んでるよ。

 底面積を稼げるから、焼き目のパリッとした感じをしっかり出せるんだもん。


「これであとは焼くだけ」


「手際いいね」


「前世で高校生だった時は、一人暮らしで毎日自炊してたから」


「よっ! 主婦の鑑!」


「前世は男だったから主婦ではないんだけどね」


「今はどっからどう見ても主婦だよ」


「それは否定できない」


 フライパンを準備したら、油を投入して強火で着火!

 油の量はフライパンの面積の半分くらいだけど、「脂質たくさん摂れないんです」って方は少なめでも大丈夫。ただし、フライパンの面積の半分くらい入れたほうが圧倒的においしいよ。


 火をつけたら、すぐに餃子を並べる。

 普通は円状にたくさん並べることが多いけど、それはお勧めできない。

 鍋の真ん中のほうに十~十四個ほど並べたほうがいいよ。


 焼くときに一番大事なのは温度管理。

 冷たい餃子をたくさん並べちゃったら、焼き時間が延びるしムラができるからね。

 それと同じ理由で、餃子を並べた後に投入するのは水ではなく熱湯のほうがいいよ。


 フライパンの底から五ミリ程度まで熱湯を注いだら、フタをして蒸し焼きにする。

 強めの中火くらいの火力で、三分半~四分ほど蒸し焼きにする。


「時計を見ずに、ぴったり時間を当てるゲームをしようよ」


「いいよ。あれ結構難しいよね」


「シズちゃんが私の手を握ってくれたら正確に測れるんだけどなぁ~」


「あ〇みちゃんかな?」



 三分半~四分経ったらフタをとる。


「熱っ!」


「大丈夫?」


「大丈夫大丈夫。油がちょっと飛んできただけだから」


 フタをとった直後は油が跳びはねやすいから気をつけようね。


 で、フタを取ったら餃子の上にごま油を回しかける。

 ごま油をかけたら、フライパンの底の水分が飛ぶくらいまで焼いていく。

 餃子の渕に焼き色が見えてきたら、火を切って皿に取り出す。


 これで完成!


「おー、しっかりした焼き色の羽がついてるじゃん」


「おいしそうでしょ?」


「超おいしそう! 早く食べたい!」


 注いだ米と餃子と、生野菜を混ぜただけの簡単なサラダをテーブルに運ぶ。



「ダンジョン踏破とAランク冒険者になったのを記念して、乾杯!」


「かんぱーい!」


 オレンジジュースを注いだグラスを軽くぶつけて乾杯し、それを一気に飲み干す。


 のどを通る冷たさと、程よい酸味が心地いい。

 え? オレンジジュース飲むの子供っぽい? でもそれってあなたの感想ですよね。



 箸で餃子を掴み、それをタレにつけてから口へ運ぶ。


 ごま油の香ばしい匂いがほのかに香り、鼻孔をくすぐる。

 噛んだ瞬間パリッっという小気味いい音が鳴り、熱々の肉汁がこれでもかというくらいたくさん口の中に流れ込んできた。


「熱っ! おいし!」


 ハフハフ言いながら、しっかり噛んで味わってから飲み込む。


 下味によってしっかりと味がついた肉のうまみ。

 キャベツの食感。

 ニラの香りと味。

 すべてが絶妙に調和したそれは、それはもう最高においしかった。



「シズちゃん、肉汁がすごい! 肉汁ダムが決壊して肉汁大氾濫が起こってるよ! 私の口の中で!」


 餃子を食べたイリスちゃんが、キラキラした目で矢継ぎ早に叫ぶ。

 例えが独特だけど、すごく喜んでくれているのは伝わったよ。


「餃子はまだまだあるからね。もっと食べていいよ」


「お言葉に甘えるね」


 幸せそうな表情でもぐもぐ餃子を食べるイリスちゃん。

 絵画かな? ってくらい可愛くてずっと見ていられるけど、私も餃子を食べないと。

 熱々だからこそ至高なんだもんね。



 炊き立てのコシヒカリと一緒に餃子を食べてるんだけど、ご飯が進むこと進むこと。

 もうね、最高の組み合わせですよ。

 前世日本人で良かった。米のおいしさを知っててよかった。


 米もおいしい。餃子もおいしい。

 おいしいとおいしいが合わさって、超スーパーすごいおいしいですよ、ホントに。


 餃子はあっという間になくなっちゃったけど、大満足。

 それに出来立て状態の餃子を倉庫の中に仕舞っているから、明日も食べられるしね。


 最後はサラダにシーザードレッシングをかけてさっぱりいただく。


「ごちそうさまでした」


「ごちそうさま。今日もシズちゃんの料理最高だったよ。もうホント、永遠にシズちゃんの手料理食べていたいくらいおいしかったよ」


「えへへ、ありがと」


 肉汁たっぷり羽根つき餃子パーティーは、こうして大成功で終わった。

 やっぱりこの肉汁洪水餃子は最高だよ。

餃子大好きって方はブクマと☆5評価をお願いします!

我はシューマイ派だが? って方は評価をお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作を投稿しました!

タイトル「実家を追放されてから早三年。気がついたら私は最強の吸血鬼になっていた。あと、気がついたら百合ハーレムができてた」

青文字をクリックすると作品に飛べるので、ぜひ読んでみてください! 面白いですよ!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ