9.男子トイレにて
ヤンキー女子の高橋 初香にはぶん殴られ、幼なじみの咲良には軽蔑するような目で見られ、あの場の雰囲気に耐えられなくなった俺は現在、男子トイレの個室に篭っていた。
「な、なんで……高橋 初香は俺の事が好きなはずなのに……! どうじでぇぇぇ!!」
俺はトイレの個室の中で悲しみに暮れ、心の声を叫んでいた。
すると、何やら声が聞こえてくる。
「……くん……ゆきくん……」
な、なんだ? 俺の名前を呼ばれているような……。
悲しくなりすぎて、幻聴が聞こえてきたのかもしれない。
「……みゆきくん?」
「えっ? 咲良?」
「うん、そうだよ」
咲良の声であった。何やら幻聴ではなかったようだ。
そ、それより……
「え? あなた今何処にいるの? ここ男子トイレなんですけど!」
「知ってるよ? でも今美雪くんしかいないし」
「いやそう言う問題じゃないでしょ!」
昔から思っていた事だが、咲良は所々抜けている所がある。天然と言うのだろうか?
しかし、誰も居ないからって男子トイレに入ってくるのは天然の一言では済ませられないだろう。
もはや変態と言われても仕方の無い事だ。
「てゆーか、あなた何でここにいるの!?」
「だって、『高橋 初香は俺の事が好きなはずなのにぃぃぃ!』って叫ぶ声が聞こえたから。美雪くんだと思って来たらそうだった。
来てみたらここの個室からブツブツ独り言が聞こえたし……ふふっ……あぁ、ごめん、何でもないよ」
……ん? なんか笑われてる様な……。
いや、それはこの際置いておこう。
「え……聞こえてたの……。あんなの皆に聞かれたら、俺益々虐められるじゃん……俺の華やかな高校生活終了のお知らせでござる。
てか、ブツブツ独り言言ってた自覚もないんだけど……」
「そこは大丈夫だと思うよ。あの叫び声は、なんか気持ち悪い変な声だったし、誰も美雪くんだとは気付かないと思う……ふふっ……あぁ、ごめん、何でもないよ、気にしないでね」
いやコイツ完全に俺の事笑ってるだろ!
「いやそれは嬉しいけど悲しいな、オイ。
それで、俺に何の用?」
「美雪くん、さっき初香ちゃんに告白したでしょ? それで振られたから、落ち込んで無いかなと思って慰めに来た」
「いや告白してないんですけどォ!」
「あ、そうなんだ。てっきり告白したのかと思った。でも、なんで初香ちゃんが美雪くんの事を好きだと思ったの?」
「だ、だって、高橋 初香はツンデレだろ?
ツンデレは好きな相手にしかツンツンしないって咲良の家にある少女漫画を読んで覚えたし……」
「そんなはずないじゃない。初香ちゃんはツンデレじゃないよ、ただ美雪くんの事を嫌ってるだけだと思う。それに、少女漫画を恋愛の全てだと思うのは良くないと思う」
……え? ってことは、高橋 初香は俺の事が好きじゃない……のか?
寧ろ嫌っている……と?
……それでは俺があの時言ったのは、まるで告白じゃないかァ!!
「……あぁ……あぁ……俺はこの先どうすれば……」
俺は頭を抱え、項垂れるように言った。
「んー、あの事は綺麗さっぱり忘れれば良いんじゃないかな? 初香ちゃんはモテるからよく告白されてるし、美雪くんの告白なんて一々気にしないと思う」
「うぅ……咲良さん辛辣すぎませんか……」
「え? あ、ごめんね。つい。
私、少女漫画が好きだから、恋愛の事になるとついつい熱くなっちゃって」
「あなた、彼氏いた事ないじゃん」
「べ、別に良いでしょ! 落ち込んでないなら、もう、私行くからね」
「はいはーい、お気遣いありがとうございました」
そして咲良は男子トイレから去っていった。
まぁ、咲良の言う通りだな。別に告白したつもりじゃないし、忘れて前を向こう。うん、そうしよう!
こうして咲良の慰めもあり、高橋 初香に勝手に振られた(?)ショックから俺は立ち直った。
出来る限り頑張ります。
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