8.コイツ、俺の事が好きなんじゃね?
雨がしきりに降る中、咲良と体育館裏で昼ご飯を食べていた俺たちの元に、クラスメートのヤンキー女子、高橋 初香がやってきた。
彼女は、虐めのつもりか何なのかは分からないが、いつも俺をからかってくる。
そして何故ここに来たのかは分からないが、今回も毎度の如く俺をからかってきた。
俺は、女子には大体虐めどころか興味すら持たれず、名前もほとんど呼ばれたことが無い。
だがしかし、このヤンキーの高橋 初香はいつも俺にちょっかいをかけてくるのだ。
ここで俺は閃いた。
コイツ、俺の事が好きなんじゃね?
と。
これは、よく一部の年頃の男子学生が勘違いをする事という事で巷では有名だ。
女子に少し優しくされた時や、少し指が触れた時など、
「もしかして、俺の事が好きなんじゃね?」と、勘違いをするのだ。
だが、今回の俺のは違う。きっと、高橋 初香は俺の事が好きに違いない。うん、きっとそうだ!
よくよく考えてみると、コイツはいつも俺の事をバカにしてくるが、それは俺に構って欲しいからなのかもしれない。
少女漫画好きの咲良の家には少女漫画が沢山あるのだが、それをたまに読んでいた俺には恋愛の知識が僅かながらあるのだ。
そう、この高橋 初香はおそらく、
“ツンデレ”だ。
ツンデレキャラは、好きな相手にしかツンツンしなかったはず。
少女漫画でツンデレキャラを少なからず見た俺がそう思うのだから、きっとそうなのだ。
……そうと決まれば話は早い。やはり彼女は俺の事が好きだ。
「おい、凄森。何さっきから一人でニヤニヤしてんだよ、気持ちわりーな」
彼女にそう指摘されて、自分の頬が緩んでいた事に初めて気付いた。
いけないいけない。もう少し、クールに接せねば。
俺には、山下 涼という、れっきとした好きな人がいるのだ。ここはしっかりとお断りしないと。
これだからモテる男は困る。
「と、ところで初香ちゃん」
「あー? 何が初香ちゃんだコラ? 舐めてんのかコラ?」
片眉を釣り上げ、不機嫌そうな顔で彼女は答えた。
おっとっと、それはもう俺には通じませんよ。君がツンデレで俺の事が好きだと言うのは、頭の中で証明済みなのだから。
いつまでもツンツンしていないで、たまにはデレを見せてくれたっていいのに。
「う、初香ちゃんは、何でいつも俺の事をからかってくるの?」
「はー、なんだいきなり? 特に理由もねーよ」
「それってやっぱり……俺に構ってほしいんじゃないかな?」
白い歯をキラリと見せ、高橋 初香の目を見つめながら言った。
「お、おまっ……マジぶち殺されてーのか!!」
そう言う彼女の周りには、なんだか殺気の様なモノが漂っているように見えた。
いや、気のせいだろう。
「ふっふっふ、そんな事言ったって、俺には分かるんだ。君は気付いていないだけで、本当は俺に夢中のはず――」
「……死ねや腐れ陰キャ!!」
「ぐはぁ!」
高橋 初香に思い切りグーで頬を殴られ、俺の顔はそっぽを向いた。
そして高橋 初香は去って行き、なんだかその背中からはとてつもない怒りを感じた。
な、何故だ? 彼女はツンデレのはず。そして俺の事が好きなはずなのに。
高橋 初香に殴られた頬を片手で抑えながら、状況を飲み込めずにいた俺を、咲良が軽蔑するような目で見ていた。
「……え、えっ? な、なんでそんな目で見るの、咲良さん?」
「美雪くん……バカなの? 初香ちゃんにもっと虐められたいの?」
「女子に虐められるのは……案外悪くはないかも」
「………………」
その後しばらく沈黙が続いたが、この場の雰囲気に耐えられなくなった俺は、咲良より一足先にこの場を後にした。
出来る限り頑張ります。
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