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2.努力知らず

 学校帰りの交差点での信号待ちにて俺は、学年一のヒロイン、山下(やました) (りょう)を見かけた。

 足を痛めているお婆さんを背負って、歩いている。

 彼女本人も苦しそうだが、それでも人を助けようと頑張っていた。


 その時、俺は確信したのだ。


 俺は、山下 涼のことが好きだ。


 こんな気持ちは初めてだ。


 とにかく胸が苦しく、彼女から目が離せない。

 彼女は俺の存在に気付いてる筈も無いのに、何だかこの場から逃げ出したくなる。


 俺はただ、信号の前で自転車に跨り、お婆さんを背負い歩いている彼女を見つめていた。


 彼女が交差点を渡り終えた瞬間、俺はハッと我に返り、自分の腕時計で時間を確認した。


 なんせ、彼女に目を引かれている間の時間が、体感的には三十分ほどだったのだ。


 しかし、腕時計を確認すると、おそらく二分も経っていない。


 俺は頭が可笑しくなってしまったのだろうか?

 そう疑問に思っていた矢先、彼女が俺の方を振り向いた。


「ま、マズイっ!」


 俺の方を向いたと言っても、俺の事を見ている訳では無いだろうに、俺は自分が見られていると思った。

 そして何だか恥ずかしくなり、思いっきり自転車のペダルを漕いでその場から離れた。


「ハァ……ハァ……ハァ……」


 自転車のペダルを思いっきり漕いだ事で息を切らしていた俺は、家の近くのコンビニまで来ていた。


「あっ、そう言えば……」


 ここで、ある事を思い出す。

 買い出しが必要だった事を思い出し、丁度コンビニの前にもいた事だし、ここで買い物をしようと考えた。


 購入した物は、スポーツドリンク、ゼリー、バナナ。後は漫画の週刊誌。


 購入した物が入った袋を自転車のカゴに乗せ、ガタガタと揺らしながら家を目指して再び自転車のペダルを漕ぐ。


 そして家に着くや否や、学校の荷物を置き、コンビニで購入した物だけを持ってすぐ家を出た。


 俺はアイツに用事があったのだ。


 ――ピンポーン


 ソイツの家のチャイムを鳴らす。

 すると、インターホンから声がなる。


「……はい、坂口ですが……?」


「あぁ、俺だ」


「美雪くん……?」


「うん。ちょっと入れてくれ」


「分かった……」


 そして玄関の扉が開く。


「どうしたの、美雪くん?」


 眼鏡を掛けたボサボサ頭の女の子が出てきた。


 その女の子の名前は坂口(さかぐち) 咲良(さくら)。生まれた時からの俺の幼なじみで、高校もクラスも同じ。

 咲良も陰キャで、見た目も俺と同じ様に地味。何処からどこまでも、俺と似ているのだ。


「どうしたも何も、お前今日学校休んだろ。風邪引いたって聞いたから、見舞いに来た」


「そうなんだ、ありがとう」


 そして俺は咲良の家にお邪魔した。



「具合は、どうだ?」


「うん、もう平気だよ」


「そうか。

 あ、そうそう。スポーツドリンクとか色々買ってきたぞ。あと漫画の週刊誌」


「わぁ、ありがとう、美雪くん」


 彼女はそれを受け取ると、スポーツドリンクを一口飲み、漫画を読み始めた。


 ――長い沈黙が続く。ただただ、彼女の楽しそうな笑い声が部屋に響く。


「じゃ、俺行くわ」


「うん、またね美雪くん」


 そしてその家を去り、綺麗なオレンジ色の夕陽を見上げて、俺は一丁前に物思いにふけた。


 あぁ、この世は残酷だ。所詮、顔が全てなのだ。

 顔を変えるなど、整形する他道はない。

 どれだけ努力しようが、足掻こうが、所詮不細工な俺の顔面は変わらないのだ。


「……いや、俺努力してなくね?」


 そう、俺は気付いた。見た目を改善したいとか、その為に努力をしようとか、した事が無いのだ。

 面倒事が嫌いな俺にとって、努力とは程遠い無縁の存在の一つなのだから。

 第一、俺が努力した所で何も変わりはしない。

 俺がイメチェンをしたって、皆にからかわれて、笑われるだけだ。

 山下 涼が振り向いてくれる事など、有り得ないのだ。


「はぁ……やはりこの世は残酷だねぇ」


 やれやれと、軽度の厨二病を抱えている俺はカッコつけて首を横に軽く振り、ため息を付いて家に帰った。

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