1.この気持ちは、何だろう
ラブコメです、よろしくお願いします。
感想等、気軽に下さい。
―八延高校―
この日の天気は快晴であり、日差しが暖かかった。
「おーい、凄森! 早く焼きそばパン買ってこいよ〜」
「あ、俺はメロンパンね! 百円渡すから、足りない分は凄森が出しといて!」
「……りょーかい」
机に伏せ、寝たフリをしていた俺は、クラスのイケてる陽キャ達にお使いを頼まれたので、椅子から重い腰を上げた。
席を離れ、食堂に向かうため俺は教室を出る。
クラスの至る所から視線を感じ、『クスクス』と、俺を嘲笑う声が聞こえる。
……いつもの事だ。俺はそんなモノ、気にしない。
初めのうちは気になっていたが、俺も慣れたモノだ。
陽キャのお使いに行く事で、俺が強く当たられないならそれ以上に楽な事は無い。
……うん、これはお使い。決して、パシリではない。
廊下を歩いていても、大体後ろ指を指される。
別に、俺は悪い事をした訳でもない。
ただ、昔から虐めの対象になりやすいのだ。
虐めは大体どの学校にも存在する。ただ、この学校ではその対象が俺だというだけだ。
――ドンッ
気付いたら、俺は頭を強く床にぶつけていた。
……転んでしまったのだろうか?
全く、俺はドジだな。
そう思っていると、何やらクスクスと笑いを我慢するかの様な声が聞こえてきた。
「こいつ、俺が足掛けたのに気付かないで転んでやんの! ヒャッハッハ!」
一人の男の言葉と共に、笑い声が沸き上がる。
……俺は、足を掛けられて転んだようだ。
自分で転んだ訳では無いからドジでは無いと自分で勝手に決断を下し、ホッと胸を撫でた。
「ご、ごめんね。足に掛かっちゃったみたいで」
悪いのは俺では無いとは思うが、俺は足を掛けてきた男に謝罪した。
ただただ、面倒事はごめんなのだ。
「お、おう……?」
足を掛けてきた男はタジタジになっていた。
それもそうだろう、自分が悪い事をしたのに逆に謝られたら、その対応は不思議ではない。
少し頭が痛むが、今の優先事項は陽キャ達のパンを買うことだ。
痛みに構わず、俺は食堂を目指した。
そして無事パンを買い終えた俺は、教室に戻った。
「……買ってきたよ」
「おぉー、凄森サンキューな!」
「まじ助かるわー!」
パンを渡すと、陽キャ達は嬉しそうにそれを受け取った。
実の所、俺のクラスの陽キャたちは、あまり俺に対して強く当たらないのだ。
お使いを頼まれる事が多いから、それで済ませてやってるって思われても不思議ではないが、
それでもやはり陽キャ達は、何気に俺に優しい気がしていた。
恐らく、彼らは根は良いのだろうと思う。
どちらかと言うと、陽キャでも陰キャでも無い、どちらでもない人達から蔑まれる事が多いのだ。
――キーン、コーン、カーン、コーン
授業終了の鐘が鳴る。
七時間目の授業が終わり、後は家に帰るだけ。
部活も何もしていない陰キャの俺は、毎日家に直帰していた。
グダグダと学校に放課後残っていると、絡まれる事が多いからだ。
それは面倒だからと言う理由で、俺はいつもすぐ学校を後にする。
なので、俺が帰る時間は、同じ学校の生徒など見かけないのだ。
最速は俺なのだから。
だけど、この日は違った。
帰り道で信号待ちをしていると、ウチの学校の制服を来た女の子が歩いているのを見かけた。
学年一のヒロイン、山下 涼であった。
彼女は今日、早退していたのだ。
彼女はとても汗をかいていて、苦しそうに歩いていた。
それもそのはず。彼女は、お婆さんを背負って歩いていたのだから。
そのお婆さんは、足でも怪我をしたのか、くるぶし辺りにハンカチを巻いていた。
彼女は、学年一のヒロインと言われるに違わず可愛らしい容姿を備えている。
また、俺は容姿以外にも彼女の魅力的な点を知っていた。
学校でいつも寝たフリをしている暇な俺は、彼女の行動を観察することが多かった。
まぁ、これは気持ち悪いと言われても仕方がない。
その観察を通して、俺は彼女の性格を知ったつもりでいた。
誰か怪我などをしたら、真っ先に手当をしようとする。
誰か困っている人がいたら、率先して自分が助けようとする。
そう。彼女は困っている人が居たら放っておけない人間なのだ。
面倒事が嫌いな俺とは正反対である。
そんな、俺が持っていない物を持っている彼女に、俺は少し気を惹かれていた。
ただ、恋をしたことが無い、人を好きになった事がない俺には、それが恋心かも分からなかった。
そしてこの日、彼女の必死に人を助けようという姿を見て、俺の胸は波を打った。
まるで荒れ狂う海のように。
そう、この日、俺は確信した。
俺は、山下 涼の事が好きだ。
出来る限り頑張ります。
ブックマークや評価をして頂けると嬉しいですし、励みになります。