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歩道

作者: さかしま

都会の賑やかな歩道を歩いていると、雨がパラパラと降り始めた。歩道を行き交う人達は、雨に気づいた者から、順番に傘をさしていった。

街を明るく照らし出すネオンライトは、雨に打たれて、街灯からは、雫がこぼれていた。

傘を持っていなかった私は、雨に打たれながら、子供の頃を思い出していた。今日と同じように、雨が降っている夜だった。

家族で遊園地に行った帰り、私は車の後部座席に座り、その日、買ってもらったクマのぬいぐるみを抱きしめていた。

前の座席では、両親が何かを言い争っていた。退屈をしていた私は、足をぶらぶらさせながら、窓から何となく外の景色を眺めていた。窓についた水滴が、外の風景を少し、滲ませていた。

歩道を行き交う人達は、傘をさし、足早に目的地に向かって歩いていた。一人の女の人と目が合った。女の人は、傘をさしておらず、車の中の私と目が合うと、雨に打たれながらも、にっこりと私に向かって微笑んだ。びっくりした私は、外から見えないように身を隠した。信号が青に変わり、車が走り出した。

車のクラクションが鳴り響き、私の意識は、現在へと引き戻された。車道の方に目を向けると、信号待ちをしている車の中の少女と目が合った。おかっぱ頭のまあるい目。不安そうな目......。

昔の私と同じように。私は、少女に向かって微笑んだ。

少女は驚き、身を屈めて、扉の陰に身を隠した。信号が青に変わり、少女を乗せた車がゆっくりと動き始めた。車のクラクションが大きく鳴らされる。

私は、不思議な気持ちになった。あの少女は、あの時の私だろうか?クマのぬいぐるみを抱いて、退屈していた、あの頃の私。

雨が強くなり始めた。私は、歩を早めた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 雨降りな感じがよく伝わってきました。
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