10話 スキル合成と水浴び
「さて、どうしたものか……」
一人、森の中を歩く俺は、悩ましげな声をこぼす。
昨日の一件で、この島には高ランクの魔物が存在することが判明した。
そうそう簡単に出くわさないと思うし、キラーベアーのステータスとスキルを盗んだから、遭遇してもやってのけないことはないと思う。
しかし、絶望的なまでにレベルの高い魔物もいるかもしれない。
どうすることもできず、ただただ狩られるだけの立場に回るかもしれない。
そんな事態を避けるために、強くなることを決意した。
ちなみに、今の俺のステータスはこのような感じだ。
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名前:ノクト・スカイフィールド
種族:人間
職業:盗賊
レベル:5
HP :37/37
MP :0/0
攻撃力:175
防御力:142
魔力 :5
速度 :102
運 :55
<スキル>
『疾風・レベル1』『毒生成・レベル2』『封印・レベル1』
『分配・レベル1』『潜水・レベル1』『豪腕・レベル1』
『打撃耐性・レベル1』
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キラーベアーのステータスを盗んだおかげで、レベルに合わず能力は高い。
しかし、まだまだだ。
未だ遭遇していない未知の魔物に備えて、力をつけておかなければ。
そう考えた俺は一人で森へ移動して、レベルアップを図っていた。
ちなみに、ステラは拠点の整備だ。
手当たり次第に魔物のステータスを盗み、強くなろうとしたのだけど……
「……ダメだな。ステータスを盗むことができるのは、一種類の魔物につき一回だけらしい」
ウルフのステータスを盗もうとしたが、二回目からはなにも成果がない。
一度だけ、という制限があると考えた方がいいだろう。
「他にも制限があるかもしれないな。色々と試しておくか」
『盗賊の極意』を使用して使用して使用して、それを飽きるくらいに繰り返す。
その結果、以下のことが判明した。
・ステータスを盗むことができるのは、一種類の魔物につき一度だけ。
・スキルの使用回数制限はなし(ただし、数千回とか極端な回数は使用していないため、断定することは避けておいた方がいいだろう)。
・時折、失敗することがある。確率としては10%くらい。
「こんなところだな」
ひとまず、基本の性能を知ることはできた、と言ってもいいだろう。
「強くなるための方法としては……未知の魔物を探して、ステータスを盗むことが手っ取り早いか。しかし、危険は侵せないな……どうしようもないほどの高ランクの魔物と遭遇したら、その時点で終わりだ。というか、そういう時に備えているのに、自ら危険に首をツッコムなんて愚行すぎる」
そうなると、別の方法を探さないといけない。
色々なスキルを獲得する、という方法はどうだろうか?
「ただ、手に入れたスキルは全てレベル1なんだよな……これ、うまく成長させられないだろうか?」
考えることしばし。
「……試してみるか」
ふと思いついたことがあり、俺は森の探索を再開した。
目的は、ウルフだ。
30分ほど歩いたところで、一匹のウルフを見つけることができた。
群れからはぐれたらしく、キョロキョロと周囲を見ている。
「ちょうどいい」
俺はニヤリと笑い、『盗賊の極意』を使用してスキルを盗んだ。
ウルフが持つスキルは、『疾風』のみ。
しかし、俺はすでに『疾風』を所持している。
ただ、こういうパターンは以前にあった。
その時になにが起きたかというと……
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名前:ノクト・スカイフィールド
種族:人間
職業:盗賊
レベル:5
HP :37/37
MP :0/0
攻撃力:175
防御力:142
魔力 :5
速度 :102
運 :55
<スキル>
『疾風・レベル2』『毒生成・レベル2』『封印・レベル1』
『分配・レベル1』『潜水・レベル1』『豪腕・レベル1』
『打撃耐性・レベル1』
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「やっぱりだ」
スキルが合成されたらしく、レベルが上昇していた。
新しい事実。
スキルならば、同じ種類の魔物から何度でも盗むことができる。
そして、盗んだスキルは自動的に合成されて、レベルアップする。
「これならば……」
強くなることができる!
俺は多少の興奮を胸に、ウルフの群れを探した。
そして、手当り次第にスキルを盗んでいく。
レベル3以降はすぐに上昇するわけではなくて、無数のスキルを合成する必要があった。
なので、盗んで盗んで盗みまくる。
食べることを忘れて、太陽が頭上を通り過ぎるまで繰り返して……
「よしっ」
ようやく『疾風』がレベル10になった。
最大レベルだ。
「ん?」
ステータスを確認したところで、見知らぬスキルが増えていることに気がついた。
「『旋風』……? なんだ、これは?」
こんなスキル、盗んだ覚えがない。
ということは……
『疾風』を最大レベルまで上昇させたから、派生して習得したのだろうか?
そう考えるのが自然だな。
さて、その効果は?
<旋風>
『疾風』の上位スキル。
複数の物を加速させることができる。
レベルに応じて速度、持続時間が変化する。
「なるほど。『疾風』の効果を複数に利用できるところはありがたいな」
良い感じにレベルアップすることができた。
もっとも、まだまだなので、引き続き強くなるための方法を模索していかないといけないが。
「とりあえず……そろそろ戻るか」
ステラには昼に戻ると言っていたのだけど、約束の時間をオーバーしてしまった。
心配をかけているかもしれない。
俺は足早にその場を後にした。
――――――――――
何度も行き来することで、少しずつ島の地形が把握できてきた。
20分ほど歩いたところで森を抜ける。
そのまま岬の小屋へ。
「……すごいな」
昨日は最低限の掃除しかしておらず、小屋の中はけっこう汚れていたのだけど……
今はかなり綺麗になっていた。
穴などはどうしようもないが、床板などは新品同様に輝いている。
「これ、ステラのスキルなのか? いや、そんなものはなかったはずだから……単に、掃除が得意なのだろうか?」
掃除だけではなくて、家事などの能力に優れているのなら……
俺が外で狩りや探索を行い、ステラが拠点を発展させていく、という方法がとれるかもしれないな。
「しかし、ステラはどこだ?」
姿が見当たらない。
気になり、周囲の探索を行う。
小屋の周辺に姿はない。
森の近くにも見当たらない。
ならば、海岸の方だろうか?
ぐるりと回り込むようにして、岬の下の海岸へ。
すると、鼻歌が聞こえてきた。
これは……ステラか?
気になり、足を進めてみると……
「「えっ」」
裸で水浴びをしているステラと目が合った。




