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その時は…
「…帰ろう、ユリ」
セト君はにこっと笑うと僕の手を引き走り出す。
(…涙?)
雨とは違う熱い雫が走る方向から飛んでくる。
(傷つけてしまった…)
後悔が胸を襲う…
(でも…それでも…ヴァンが好きなんだ…)
「もしも…駄目だった時は遠慮なく俺を選んでね?」
涙声でセト君はこっちを見ずにそう言うと宿の入り口で立ち止まる。
「…その時は…うん…」
もしもヴァンに拒絶された時は…そんな僕でもいいのなら、ズルイかもしれないけど…その時は
「セト君の物になるよ…」
「ありがとうにゃ…」
もうセト君は泣いていなかった。
僕の手を引き宿に入ると皆が心配して待っていた。
「ただいま…」
「お帰り、2人共。雨に濡れたでしょう?お風呂、沸いてるから行っておいで」
「うん」
その後はセト君と一緒にお風呂に入り、皆でご飯を食べ、皆で眠った。
(ヴァン…)
ぎゅっとセト君に手を握られながらも僕はヴァンの夢を見る。
二人だけで世界中を回る楽しい楽しい夢だった…




