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花畑にて
「どのみち王都に着いたらニュースで取り上げられるはずですにゃ」
超小型掲示板をいじりながらセト君は言う。
「…兄の現在地も分かるんだけどにゃ…これ使うと俺の居場所まで分かるにゃ…でも使うにゃ」
何か操作をするとピロリンと音がした。
「…サンクレッドホテルにゃね。昨日から動いてないにゃ」
「ホテル…」
嫌な想像が頭を埋め尽くす。
「ユリ…」
皆が僕に哀れむような視線を向ける。
「僕、外の空気を吸ってくる!」
居辛い空気に僕は宿を飛び出した。
走って、走って…気が付けばお城の近くの花畑に来ていた。
「ユリ!」
セト君が追いかけて来て僕の名を呼ぶ。
「あまり遠くに行くと迷子になるにゃ」
「迷子か……もうなってる…」
僕の心は嵐の中で迷子だ。
「帰るにゃ。皆心配するにゃ」
「…帰りたくない…」
だって、皆の中にヴァンはいない…帰って来てもヴァンはもう前のヴァンじゃないんだ…
「ユリ…」
花畑にしゃがみ込むとセト君もしゃがみ込む。
(挿絵:花見酒様)
「俺じゃ…駄目かにゃ?」
「…ヴァンじゃなきゃやだ…」
その辺の花を千切って僕は冠を編む。
「それにセト君は王様にならなきゃ」
作った冠をセト君の頭に載せる。
(挿絵:花見酒様)
…昔、もっと下手な冠をヴァンに作ってあげたっけ。懐かしいな…




