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閑話



●1 マリーナの本音



 はい、なんでしょう?

 えぇ、お兄様の活躍が嬉しくないのか? ですか。

 勿論嬉しいに決まってます。

 お兄様の御蔭で今のファウターシュ男爵領もありますし、誇りにだって思います。

 そもそも家族の活躍が、家族が称えられる事が、嬉しくない訳が無いじゃないですか。


 ……でもそれでも、もし活躍されなかったとしても、私達にとってお兄様が誇りで、大事な存在である事に変わりはないんです。

 私だってお兄様の行動を制止するのが、楽しい訳がありません。

 けれども今のままでも充分なんです。

 多くの使用人を雇えずとも、皆で協力してやってきました。

 私は料理だって自信があります。

 危ない事をしなくても、良いじゃないですか。


 それでも、仮にお兄様が自分の欲の為に戦って何かを勝ち取りたいと仰るのなら、私は反対しないでしょう。

 欲で動く人は、ある程度欲が満たされれば、次は得た物を失わぬ様に守りに入ります。

 際限なく欲する方も居ますが、お兄様はそこまで愚かではありませんし。

 だからそれなら別に構わないのです。


 しかしお兄様が剣を取るのは、その多くが誰かの為でした。

 私の為、コラッドの為、ファウターシュ男爵領の為、友の為、トーラス帝国の為。

 そこにお兄様自身の欲は、見られません。

 だから際限なくお兄様は誰かの為に動こうとしますし、動けてしまうだけの才気があります。

 えぇ、だって私達の自慢のお兄様ですもの。

 やろうとして、やれてしまうのです。


 ですがその才気のままに走り過ぎれば、何時かはお兄様とて足を取られてしまうでしょう。

 もしかするとそれは、命に関わる事態に繋がるかも知れません。

 それ故に私は、少しでもお兄様の重しになって、その走りを緩めたいと思うのです。



●2 コラッドの気持ち



 兄様が凄い事は、ファウターシュ男爵領ならどの村の皆も知ってます。

 多分それを一番わかってないのは、他ならぬ兄様自身だと思う。

 だってどの村にも、兄様が剣で真っ二つにした岩が飾ってあるから。

 兄様の事を聞けば、皆が笑顔で語ってくれます。

 どれ程頼りになるかとか、心優しいかとか、どんな馬鹿な事をしただとか。


 だから兄様の事は、兄様が思う以上に僕は知ってます。

 そして思います。

 羨ましいなって。


 兄様は言います。

 姉様も否定はしません。

 僕の方が領主に向いてるって。

 でも僕は、そうだとしても、兄様みたいに何があっても何とか出来る自信はないのです。


 姉様は兄様をとても心配しています。

 でも僕には、兄様に心配が必要だとは、どうしても思えないのです。

 兄様の事は大好きです。

 なのに心配出来ないなんて、羨ましいと思うなんて、僕は浅ましい人間なのでしょうか。


 お願いします。

 兄様、どうか無事にお戻りください。

 そしてどうか、僕のこの気持ちを聞き、叱って下さい。

 そうでないと、僕は、どうしていいのか、わかりません。


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