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「志望校はまあ上岡の今まで成績から考えれば、十分に行けると思います。そこそこ難しいところですが、お父さんはあんまり心配しないでください」

 担任教師は、私がようやく提出した進路希望調査表を参照しながら、父親に向けて話していた。

 真剣な顔で頷くお父さんは、先生との面談という状況に緊張しているようだった。

「お父さんはお仕事も忙しいと思いますが、心配しすぎずに、家ではリラックスできるようにさせてあげられるといいだろうと」

「はい。わかりました」

「えー、じゃあそんなところですね。面談はここまでにしましょう」

 面談のまとめを終えて、担任が終わりを宣言すると、三人ともソファから立ち上がった。

「ありがとうございました。先生」

「いえいえ、お忙しいところ来ていただいてすみません。上岡は勉強頑張るんだぞ」

 私は、ひとまず「はい」と返事をして、父親とともに礼をする。

 それから、三者面談を終えた私たちは職員室を後にした。

 すぐのところにある職員用昇降口で、靴を履き替えながら、お父さんは私に話しかける。

「どうする? まっすぐ帰る?」

 ちょうどそれを話そうと思っていた私はこれ幸いと口を開いた。

「あ、私寄るところあるから先に車で帰ってて」

「歩いて帰るの? 大丈夫?」

 心配性の父親にあきれながら、私は返答する。

「病み上がりとかじゃないんだから……。じゃあ、行くね」



 昨日というか今朝、ひとまず今まで起きていたことが一件落着して、ナイアルラに世界平和を盾に杏子と舞を頼むと、久しぶりに清々しい気持ちで家に帰った。

 それから、昼寝はしていたとはいえ徹夜同然だった私は学校を休んで眠り、放課後の時間に、三者面談ということで父親と学校に来ていた。

 面談では、ずっと心に引っかかっていた進路のことを話した。先生も、明言はしなかったがいじめについては認識していたようだったので、憂いのないようにこの辺りでは進学者の少ない進学校を勧めてくれた。

 問題そのものについては、私は大丈夫だと譲らなかったので、向こうもなにも言ってこなかった。

 それについては、自分で解決するか、そうでなくても誰かの力を借りたくはなかったのだ。

 こうして、直近のほとんどの問題については解決か、方針が決まることとなって、私は肩の荷が下りたような気分だった。

 もちろん、解決していない問題もある。

 そこに、私は向かっているのだから。



 『喜多川』と刻まれた表札の掛けられた一軒家。

 表札には、名字の他に四つの名前も併記されていて、私は、そのうちの一つを見つめた。

 『杏子』。

 一人で無意味に頷き、インターホンのボタンを押す。


 喧嘩をして、後悔して、私は彼女を失ってはいけないと知った。

 見つけてくれて、手を握って、私は世界を守れると錯覚するくらいに嬉しかった。

 巻き込んでしまって、変えてしまって、私が彼女を見たくなくなるほど自分が嫌になった。

 それくらい彼女は私の中で大きくて、私を支えてくれていた。

 彼女と仲直りしなくちゃいけない。

 私の親友と、仲直りがしたい。


 私は、狂ってしまいそうになるほど、杏子が大好きだった。



 インターホンが繋がる音がして、すぐに名乗るとパタパタという足音が家の中から聞こえる。

 ガチャリと鍵を開ける音がした。


 もしも、杏子が私を受け入れてくれるのならば――――刃を握っていないこの手で、彼女を抱きしめたい。


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