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06・顧客 イザベル



シャルロットは 暮らしていた屋敷のあった街名と

親の家名については 話さなかった。


彼女が 話さなかったことを あえて僕が聞く必要もない。


だが 当然 シャルロットのことを捜しているはずだ。

勿論 『彼女の身を案じて』では無く…

その家に連なる者にハーフエルフなど居ないとゆう事になっているのだろうから。


それに少女の徒歩での移動ならその暮らして居た屋敷もそう遠い筈もない。

シャルロットがうちの店で働いていれば 見つかるのは時間の問題だろう。


「ねえ シャルロット、ここで働いているのが 屋敷のひとに知れたら

きっと連れ戻しに来るよね?」


彼女は そうなったときどうするつもりなんだろう?

というか 今まで見つからなかったほうが 不自然じゃないだろうか?

彼女が 語ったように お店を回っていたら すぐ足がつく筈なのに。


「屋敷の人達は 厄介払いが 出来たと思って連れ戻しになんか来ないと思いますけど……」


シャルロットは そう言ったけど…そんな筈はない。

ハーフエルフひとりを隠すために屋敷と使用人を長年維持させてきたのだ。

貴族か 裕福な商人でなけりゃ無理だろう。


そしてそう言った人種が 身内にハーフエルフが居るという事実を

放っておくとは考えられない。


(……こんなことシャルロットに言えないよな……)


「トール様?辛そうなお顔…です…大丈夫ですか?」


はは…守ってあげなきゃいけない女の子に心配されてるよ、


最期の手段は 昔 お世話になったハーフエルフの集落に匿ってもらうことも出来るだろう、

元々あそこは シャルロットと同じ境遇の人たちの隠れ里の様な所だ。


「ごめん、ちょっと考え事をしてて…」


そう言いかけたときに店のドアが開いた。


「トール‼︎ 私のジャケット 出来てる⁈」

ウチの顧客のひとり 貴族の令嬢イザベルだった。


「イザベル様⁉︎ ジャケットの仕立て上がりは明日の夕方以降ってお伝えした筈ですよ‼︎」


なんの対策も決まってない今、シャルロットを見られるのは不味い‼︎

慌てて 入口に駆け寄ったが、すでにイザベルは 店内に入り込んで居た。


「トール? 『樣』付けは 辞めて頂戴って 散々いってるでしょ?

あれ? お客さん?じゃないわよね………ハーフエルフ?」


見つかってしまった!

だが シャルロットの髪はもう乾いてエルフ耳は隠れている…

どうして分かった?


僕が 動揺していると後ろから声が聞こえた。

シャルロットしかいない。


「店主樣、見ず知らずのハーフエルフを憐れんで

食事まで恵んでくださり本当にありがとうございました。

それでは わたくしは これで 失礼させていただきます。

…ご恩は 一生…わすれません…」


そう言うとシャルロットは僕の横をすり抜けてドアに向かった。


(僕の 店の迷惑になると……思ったんだろうな……)


僕は シャルロットの腕を 後ろからつかんだ、

ちょうどイザベルが立っているその前だった。


「シャルロット!今日からキミは うちで働くって約束しただろう⁈

これは 店主の僕とハーフエルフの君が 話し合って決めたことだ!

今さら変更できないよ‼︎」


シャルロットに言いながら

最後はすぐ前に立って居たイザベルに宣言するように言った。


違うな、

シャルロットでもイザベルでも無く 僕自身に言ったんだ……


こそこそ計画を立ててシャルロットを匿ってどうなる?

軟禁場所が 屋敷から僕の店に変わるだけじゃないか?


真正面から向き合う以外に『対策』なんて無かったんだ。


「……トールさま……ごめん なさい……」


僕に腕を掴まれたままのシャルロットはこちらを振り向かずに言った……




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