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39・ツアィスとの提携交渉



「ツ、ツアィスさん!そんな事より 具体的には 何をしたくって

わざわざ 釣り上げられたんですか? 」


そう、それが本題でしょ?


「そうですね、先ず、このように 私の方から正体を晒しましたし、

トールさんとその周辺には敵対しないと誓います。

ですので 先日の夜のことは水に流して戴いて

トールさん側でも私どもには敵対しないでいただきたいと思いまして…」


なるほど、先日の不法侵入のまま 放っておいたら

僕の方が 嗅ぎつけて叩き潰しにくる恐れが あるってことか。


「ふう~ん、ところでツアィスさん、

双方の戦闘力が 拮抗してる時の話を 今ここでして なんの意味があるの?」


相手はとてつもなく僕の能力を過大評価してくれている、

ここは それに乗っかっとくトコだ。


ああ、ツアィスさんが僕の学生時代の先生だったら

僕もっと優秀な生徒になれたのに!

僕って 褒められて 伸びるタイプなんです!ツアィス先生!


「……容赦無いですね、

では 今後トールさんからの調査依頼に関しては

此方の不都合が 無い限り無償でお引き受け致します…

もちろん無償だからと言って 手を抜いたりしませんよ、後が怖いですからね。」


すんなり譲歩?それ経営者的にどうなんだろ?

ってことは もうチョイいけるよね?


「あー、それと 僕と僕の周辺に関する情報は 売買禁止だね、

もし 僕らに関する情報を買いに来た客がいたら すぐ連絡してね?

コッチでその調査報告書作ってあげるからさ。

あ、安心して。ツアィスさんの商売上の信用を潰す様なことはしないからね?」


僕の追加条件を聞いてツアィスさんは 渋い顔になっていた。


「その条件は……飲まざるを得無いんでしょうね…

ただ 私にもリーダーとしてこれを組織に持ち帰るというのは……

先ほど言いましたように 実績の浅い2代目として……」


チョット可哀想にさえなってきたよ。

此方としても 僕を過大評価してくれてるツアィスさんが

このまま 組織のリーダーとして安定してくれてた方が都合が良いわけで…


「今度は泣き落とし?どんだけ引き出し持ってるんですか?

まあ、ツアィスさんの立場も分かりますし……う〜ん、

じゃあ、お土産を差し上げましょう、

ツアィスさんとその組織が法律の範囲で活動する限りにおいては

僕が支援するって交渉を取り付けたって 言っていいですから。」


「あ、ありがとうございます!

トールさんのあの聖女様レベルの聖属性魔力と

次期聖女様や 貴族のイザベル様との御交友は

本日同行した組織の人間も 確認しておりますから

それなら五分以上の交渉だと言えます。」


「うん、なら良かった、あとサービスでもうひとつ。

組織の発言力のある人間にだけは 話してもいいよ、

面白いものを見せてあげるから」


そう言って僕は クララさんがしがみついたままの右手を

肘から先だけを動かして ツアィスさんの方に向けた。


「「「バーニングブレイド」」」


呟く様に、だけど意志を込めて右掌に力を集める。

ぶっつけ本番だが出来る確信があった。


右腕には クララさんが、左手にはイザベルが 密着してくれている、

以前 混成魔法を発動した時と同じ条件が揃っていた。


僕の右手から青白い炎でできた剣が伸びる。


「屋内なんで このくらいしか見せられないけど…

聖属性だけだって 思っててもらうと

手を噛まれちゃうかも知れないしね?」


炎の剣先をツアィスさんのほうにユックリ向ける。


「こ、これって聖属性以外にも⁈、火属性まで⁈

ダブラーですか⁇

え?これは ただの炎じゃない?…で すね…?炎の……聖剣⁉︎」


『混成魔法』はその存在自体が伝説クラスの話だとは

この間アグネスから聞かされていたが

ツアィスの驚愕の表情は それを裏付けるものだった。


「分かる?こないだ『禁呪を使ってでも』って言ったでしょ?」


「……ええ、……『小さな幸せを奪うやつは禁呪を使ってでも叩き潰す』…でしたね……」


いや、だから『小さな幸せ』のトコは黙っとけよ⁈

恥ずかしいだろっ⁉︎

わざわざ僕が そこ抜かして言ってんだからさあ?

やっぱり命のやり取りしかないの?


「「「そう‼︎ そう‼︎ コレに比べたら 禁呪なんてポイポ〜〜イでしょ?」」」」

「こ〜んな支援者、懐柔しちゃったんだって 帰って自慢しちゃいなよ‼︎ YOU ! 」



つい早口でまくし立ててしまったけど

これで 僕らを 裏切ったり、嵌めたりってことはしないだろう。


ハッタリの最終兵器をこんな序盤に使っていいものかとも迷ったけど

情報は 確実なものでなければ どんな戦力があっても勝てない。


裏情報業界トップシェア組織のツアィスは 完全に落としておく必要があった。


「なんなら、『トールは 俺が育てた』とかくらい言っちゃってもいいけど?」


けど ツアィスさん頭抱えちゃってる?

え?コレって組織に帰って自慢出来ないの? 2代目スッゲー‼︎ とかなんない⁉︎


「……もう、ウチはトールさんの下部組織で結構です……」




え⁉︎ チョット刺激が強すぎた⁉︎


その後 シャルロットの入れてくれたココアを飲みながら

ツアィス先生を持ち上げて さっきの条件で対等の協力関係って事で 納得してもらった。


まあ、心理的には こちらの絶対優位なんだろうけど、

あんまり無理をさせると 窮鼠ナンチャラってことになる。

まあ、仲良くやっていこう。


それと先日、結局一件だけしか回れなかったシルトの街での『偽情報流布作戦』も

本職のツアィスさんにお願いしておいた。


【シャルロットは僕の遠い故国からやってきたイトコのハーフエルフ】って設定の件、

流石に こういうのは本業らしく『お安いご用です、 任せてください!』って言ってくれた。

今日、初めて 組織のトップらしい顔だった。



ツアィスさん、ココアとお菓子

(日本だとコンビニでも買える急な訪問とかに手土産にする焼菓子の詰合せ)が

えらく気に入ったらしく これで表の商売に乗り出すんなら 出資込みで協力してくれるって

申し出てくれた。


異世界のデザートって砂糖が希少品ってことで

これ見よがしに砂糖を使った 甘過ぎの高級品が主流の段階で

不満はあっても いわゆるステータスってことで

皆 そう云う物として諦めているらしい。

それでも一般庶民からしたら垂涎のまとなんだけど。


最後のハッタリ切り札の混成魔法まで使っちゃったけど

中々有意義な交渉が出来たと思う。


問題は なし崩し的に色々勝手に話を進めてしまった事を

クララさん、アグネス、イザベル、シャルロットが納得してくれているのか?


特に 次期聖女様のクララさん、立場的に問題があったかもしれないし……

ツアィスさんを見送った僕は それが 不安で 彼女達の方に振り向くのが怖かった。






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