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02・ハーフエルフの少女



この異世界では 人間、エルフ、獣人族 これらが意思疎通可能な文化をもつ三大種族である。


人間とエルフとの間では 異種族とはいえ

ごく稀にではあるが 子供ができる事もある。


「ああ、そうなんですか、ハーフエルフさんですか?

めずらしいですね?

この辺りにはいらっしゃっらないのかと思ってました。」




実は 僕はこの異世界に来たばかりの時に一時期

ハーフエルフさん達ばかりの村にお世話になった事がある。


というか 始めて強制転移した場所が

辺鄙な山奥のハーフエルフの隠れ里のような場所だった。


だけど 店を開いたこの辺りでは

ハーフエルフは

いままで見かけたことは無かった。


というよりもほとんどが人間だけの街だった。



ハーフエルフは出生自体が少ないので

色々と特殊な事情もあるのかもしれない。


僕もハーフエルフの集落で一時期暮らした経験があるとはいえ

人間主体の街で暮らすハーフエルフに会ったのは初めてのことだった。


「それで お話ししておかなきゃいけない事っていうのは

どんな事なんでしょう?」



「…………え?………」


この子の抱える問題の核心を聞こうとして言葉をかけたのだが

ナニ言ってるんだコイツ 的な表情で返されてしまった。

言い方?がどこかおかしかっただろうか?


「いえ、ですから さっき

『お話ししておかなきゃならないコトがあるんです』って

言ってましたよね?

それをうかがっているんですけど……」


「………………………」


今度は 『……え?……』さえのリアクションも無かった。


「………ですから………

わたし……ハーフエルフなんです………」


うん、ソレさっき聞いた。

大事な事だから2回言ったの?

今は、その先の問題を 聞いてるトコですよね?


「その、ハーフエルフさん特有のアレルギーとか

体質的に 出来ない事とかが あるって事ですか?」


以前お世話になったハーフエルフの村では

貧しくはあったが、みんな人間同様の生活をしていたはず……


ひょっとして環境が 変わると

花粉症的な感じの不都合でも発症したりするのだろうか?



「い、いえ!……そういう事ではなくて…

その、わたしが、ハーフエルフだって事自体が問題だって言ってるんです!

わたしなんかが お店に…いたら、その………」



ああ、そうか………


この子の言ってることは『偏見』のことか。


この異世界のエルフは 選民思想を持った 純血主義で

異種族との混血を認めていない。


人間サイドのほうでは それほどでもないが

エルフ側の長い間の頑固な慣習に影響され

ハーフエルフを疎んじる社会となっている。


この辺りでは ハーフエルフに会う機会も無かったので

失念していた。


僕、個人としてお世話になった恩もあるし現代日本の創作物の影響で

『ハーフエルフ‼︎ ウソ、カッコいい‼︎』

くらいに思ってるので頭からすっかり抜け落ちていたのだ。


この異世界の現実では、働くにしても生活するにしてもかなりの苦労を強いられているのだろう。


「そうですか…アナタの言ってる意味が理解出来ました。」


なんだ、どんな問題かと思ったらそんなコトか

イヤ、『そんなコト』は無責任だな……


この子にとったらそれこそ人生の障害とも言える事なんだろうから……


だけど 僕にとっては

この異世界の人間のような偏見はないし

それどこらかハーフエルフの方々には 以前お世話になった恩義もある。


この子がお世話になった村人と同じハーフエルフだっていうなら

『なんとか力になってあげたい』とさえ思う。


この時点でちゃんと面接もしてないのに

僕の中では この子の採用は決まっていたと思う。


「それでは、仕事のお話をする前に

一度、お風呂に入って新しい服に着替えていただけませんか?

まず、それが 面接の条件です!」


お節介だと思われるかもしれないが、

僕はハーフエルフの方々には 本当に世話になった。

いまでもその方達には 少しずつ恩返しじみたこともさせてもらっている。


この子が ハーフエルフだと言うなら

なにかしら力になってあげたい。

これは残念ながら立派な心がけでなどではなく

単なる自己満足でしかないのもわかっている。


「そうですよね………

ご迷惑をお掛けしました…………

面接していただけるような着替えもありませんので

これで失礼させていただきます…

本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした……」


その子は そう言って席を立ち

入って来たドアに向かおうとしている。


「え⁉︎ なんで⁉︎ チョ、チョット待って‼︎」


(あ!いまの言い方だとそうなるのか?ちがう、ちがう!)


帰りかけたその子に追いつき正前に回り込んで両手をにぎり

同じ目線の高さになる様にひざを曲げて顔を覗き込んだ。


「ゴメン、ゴメン、言い方が悪かったね。

僕が言いたかったのは

『ウチのお風呂に入って こちらの用意した服に着替えてください。

お仕事の話は それから相談しましょう。』

わかりましたか?」


まだ理解してもらえてないような顔で僕の顔を見つめている。

綺麗なターコイズの瞳だった。

エルフゆかりの金髪は だいぶ汚れてくすんでいるけど

よくみるとハーフエルフらしく綺麗な顔立ちをしていた……


「あの、きみ………ひょっとして……女の子?」


少年だとばかり思っていたけど

こうしてよくよく顔を見てみれば

ちょっとボーイッシュな女の子?みたいな感じ……いやいや!

というより美少女…………だけど……?





「……はい、……」


少し間をおいて返事をもらった。



「……そう……です……か………」



これじゃあ……僕の第一印象 ……きっと良くないですよね?




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