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19・徹夜明けテンションのふたり+1?



「「「「トール‼︎ おはよう‼︎」」」」」


イザベルは 朝からトールの店を 訪ねていた。


昨日 自宅への帰り道の馬車の中で

自分のトールへの気持ちをロメオにぶちまけたイザベルは

帰ってからもずっと考え続けていた。


一晩中考えたが 結局 どうすればいいのか答えは出なかった。


普段から思い切りのいい性格の彼女だったが、

徹夜明けで悩み抜いた状態は

さらにその思考と行動に拍車をかけていた。


考えても分からないなら……

いっそトールの前に自分を置いてみたらどうだろう、


普通の世間話を始めるのだろうか?

自分の気持ちを告白するのだろうか?

ひょっとしたら シャルロットの事を罵しる自分が 現れるかもしれない…


いくらなんでも最後のは ちょっと…

とは思ったけど…………けど…

さすがのあの温和なトールでも怒るかな…と思った

呆れられて、嫌われたら スッキリするんだろうか?


それともトールの前で泣き出したら

シャルロットのように抱きしめてくれるんだろうか?

でもそれは 本当の私なんだろうか?

そもそも私が本当である必要って…誰か 求めてるの?


思考が袋小路に迷い込んだままのイザベルは

朝早くからトールの店の前に立っていた。






その同じ夜、トールもまた悩んでいた。


シャルロットを今の自分では守り切れないだろう。

だったら 意地を張らずに 誰かに頼めばいい。


『僕が僕の力で守ってやる』


…うん、ハイハイ、そう出来たら いい気持ちだろうね?

きっとシャルロットも今まで以上に僕に依存してくれるよね


僕の中の『自己承認欲求くん』なんて

きっと大満足して踊り出してくれるかもね?


深夜の思考はどんどん自虐的に加速して行く……


だけどシャルロットはそんなモノのための道具じゃないんだよ

目的が 自己満足じゃないなら 誰かを頼れよ、


トールは もうこの問題に正面から向き合うのが辛くなって来ていた。

そのせいで 無意識のうちに逃避の妄想に入り込んでいたのかもしれない。



『服屋なんか辞めて寿司屋でも開いたらチート転生者の7~8人位なら集まるか?』


トールが 逃げ込んだのは

さっきふと思い付いた冗談半分のアイデアの中だった。




~~~~~~~~~~~



純和風の明るい木目の一枚板のカウンターの店内に

割烹着姿で金髪のハーフエルフが お茶を出している。


「いらっしゃいませ!イザベル様!いつもありがとうございます!」


「ありがとう、シャルロット だいぶ慣れたみたいね 」


赤い髪が 印象的な活発そうな美少女が 笑いながらお茶を受け取って

今日のお薦めを カウンターの中の僕に聞いている……


最近、トロやサーモンから もう一歩踏み込み始めた彼女のために

僕は シマアジ、ハマチ辺りを取り寄せていた。


しばらくすると暖簾をくぐって予約の客が入って来る。


「トール大将、今日はオレのパーティメンバーも連れて来たよ‼︎」


転生チートのハーレム御一行様は テーブル席へご案内。


シャルロットが お茶を運ぶと メンバーのひとり 美人エルフが顔をしかめる。


「エレン?言ったでしょ?ダメだよ」


純血主義のエルフメンバーが

シャルロットに反射的に拒否感を示したのを

転生チーレム君がたしなめる。


「ごめん、ジン、頭では 納得してるんだけど つい身体がね……

ごめんなさいね、シャルロット…

私、あなたがハーフエルフだからってもう偏見なんか無いのよ?」


「いいえ、こうして私なんかが 居るお店に

来て頂けるだけでありがたくおもってます。

皆さんは、私を 守って頂いた恩人です、

きょうはごゆっくりなさってくださいね?」


「うん!異世界で寿司屋に入れるなんて思わなかった!

トール大将、今日は、おまかせで頼むよ!」


「あいよ!今日は 店の奢りだから 好きなだけ食べてって!

『帰省能力』で最高のネタを揃えておいたからね!」



~~~~~~~~~~~~~~~~



僕には 魔王やドラゴンをやっつけるなんて到底 無理だけど……

がんばれば こんな未来だったら 手に入れられるかも知れない。


美人のハーレムとか魔族とかなんてチート主人公にお任せして……





空が白み始める頃には

銀座出店の出資をイザベルと相談している辺りまで妄想は進んでいた。





「「「「トール‼︎ おはよう‼︎」」」」」


朦朧とした意識のトールは

昨夜、侵入者が来た事などすっかり忘れてしまったかのように

なんの 躊躇もなくドアを開けた。


そこには 緊張した表情のイザベルが 立っていた。


「あ?イザベル?………えと……

僕の申し込みは 受けてもらえる事になったんだっけ?」


「え? …………申し込もうと思ってたのは私じゃなかったっけ?」


しばらく徹夜明け同士のふたりの会話は 噛み合う事はなかった…


見かねたシャルロットが ふたりにお茶を出してくれたところで

やっとイザベルの方は 正気を取り戻したようだったが

トールは 「こんなお茶が 銀座の客に出せるか?」とぼやいていた。


イザベルは トールがなにを言っているのかは 理解出来なかったけど

少なくとも 日を改めた方が いい事だけは 分かった。


シャルロットは 始めてトールからきびしいことを言われた事が

逆になんだかちょっと嬉しかった。




今朝のその場所に まともな思考の持ち主は ひとりもいない様だった。




トールの妄想で出てくるチーレム主人公とそのメンバーのエルフは トールの妄想の産物です。

彼らの名前もトールが いかにもそれっぽいと思った名前をあてはめただけです。


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