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01・お手伝いしていただける方を探しています



求人の貼り紙をしてから 1週間経つが 問合せのひとりも来ない……


[こちら 外国の衣装専門の洋服屋です。

お手伝いしていただける方を募集しています。

経験、年齢、種族、不問 詳細は面談にて ]


貼り紙に書いた応募要項は思いっきりハードルが低い筈で

子供でも働いてるようなこのテンプレ中世風異世界なら

何人かは 問い合わせくらいしてくれると思っていた。


それが ゼロ ……


もちろんその理由に心当たりはある。

と言うか まず間違いなく給与面だろう。



最近、やっと異世界で始めた服屋の商売も順調になって

さすがに僕ひとりでは 難しくなってきていた。


元の世界の日本では29歳のオッサン手前だった僕も

こちらの異世界にいる間は なぜかひとまわりくらい若返っている。


こっちでは 17歳ってコトにしてるけど……


従業員を雇う って年には見えないよなあ~。


でも 高校生の頃みたいに体力は充分なんで助かってはいるんだけど


それでも誰か 簡単な作業を手伝ってもらえる人が 欲しい。


ただ 今のところお給金が出せるまでになってないのだ。

だから衣食住に関しては保証するけど

しばらくは お給金はゼロ。


このオープンした店舗兼住居の改装費なんかが

思った以上にかさんでしまったのだ。

まあ、こちらの世界では かなりの富裕層の家にしかない

お風呂なんかつけちゃったからね

もちろんちっちゃなもんですよ


だって現代日本人にはお風呂なきゃ無理でしょ?


それに古道具屋見に行ったら陶器製?の猫脚の可愛いサイズのバスタブやら

いい感じにくすんだ真鍮っぽい蛇口なんかが

思いっきりお手軽なお値段(日本の西洋骨董屋で買うと思えばだけど)で

並んでるですよ!


「す、すみません、表の貼り紙を見て…その…」


脳内で誰にともなく言い訳をしていると入口から声が聞こえた。


そちらを振り向くとドアを半開きにして

恐る恐るのぞかせた顔が見えた。


(((( やった!待ちに待った求人の応募者が きてくれた⁉︎ )))


ドキドキしながら入口に駆け寄って 勢いよくドアを開けた。


「いらっしゃい!応募の方ですか?」


初めての応募者にちょっと浮かれて

ドアを開けた僕の気持ちも

そのひとの格好を 見るなりちょっと醒めてしまった。


その……失礼だとは思うけど

仕方ないと思う。


だって……


かなりぼろい格好………

しかも 全体に薄汚れて しかも多少臭いも……?


僕の店は この異世界基準では 変わった服を扱う店だ。

いわゆる中世ヨーロッパ風異世界で現代の服をアレンジして売っているわけで……


現代日本で見ればベーシックなジャンルなのだが

こちらではかなり尖鋭的なスタイルにうけとめられている。


僕の顧客の多くは そんな道楽にお金を割く事ができる裕福な趣味人が多い。


手伝ってくれるひとには 洗練された格好を

とまでは言わないけど

(そもそも僕の店の服自体、はたしてこの異世界基準で洗練されていると言えるのか?)


言いはしないが………


最低限、清潔感は 必要なのだ。

まあ、これはどの商売でも同じではあるけどね…


とはいえせっかく来てくれたのに門前払いという訳にはいかないだろう。



「とりあえず 中にどうぞ?」


礼儀として話だけはしないと と思い 店内に招き入れた。


背格好と声を聞く感じだと中学生くらい?の男の子という感じだ。

この異世界では10歳程度で普通に働いているので

年齢的には 問題ないんだろう。


「あ、あの 私なんかが 入って大丈夫なんでしょうか?」


自分が 不相応な身なりをしているという自覚はある様だった。

それならまだ考慮の余地は あるかもしれない。

そう思って椅子を勧めた。


「とにかく座ってください、うちの仕事のお手伝いの応募の件でいらしてくださったんですよね?」


いままで ひとりの応募も無かったんだし

ひょっとしたら何かのセールスや勧誘かも知れない、

一応確認してみる。


「は、はい、 ……私なんかが 働かせていただけるのでしたらですけど……」


随分 へりくだった言い方だが、

それなりにボロい格好をしている負い目からなのだろうか?


この子本人が、それが 求職において非常識という自覚があるのなら

経済的にとか やむを得ない事情なら

働いてもらってもいいかもしれない。


それこそ 着てもらう服は 売るほどあるワケだから…

もちろん採用が決まったら タダでいいんだけどね。


「とにかく お話を伺いましょう、いまお茶を入れて来ますから…」


「そ、そんな!お茶なんていただけません!」


店の奥にある炊事場に向かおうとした僕を

その子は、服の裾を掴んで引き止めた。


「ああ、すみません、御召し物を触ってしまって!申し訳ありません!」


この子いくら何でもへりくだりすぎだろう?

いくら身なりが アレとは言え


「そんなに気にしなくても構いませんよ?

うちは 服を扱う店ですけど 着ている物で見下すような 事はありませんから

その格好も なにかご事情がおありなんでしょう?」


その子は、僕の言葉に 一瞬戸惑った表情を浮かべたが

覚悟を決めたような顔で言った。


「まず……お話ししておかなきゃならないコトがあるんです……」


うつむきかげんだったが真剣な口調だった。


だけど そう言ったあと うつむいたまま

その子は黙ってしまった。


なんかよっぽど厄介な事情を抱えてるんだろうか?

一介の街の服屋ごときでは対応出来る事も

たかが知れてる。

異世界から来たと言っても僕は、勇者とかじゃないし……


「あ、その…とりあえずどんな事でしょう?

こちらで対応出来る事は、少ないかもしれませんが

まずは お話しを伺ってみませんと……」


僕の言葉にうながされたのか

ゆっくりと顔をあげてその子は 言った。


「………じつは……わたし、ハーフエルフなんです………」





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